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中国が向かう「書店4.0」とはどんな世界か

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天津濱海図書館。「書山」と呼ばれる豪華な設計はオランダの建築事務所が手がけた。だが、棚の本のほとんどは、壁に書かれた絵だった=2018年3月10日、天津市

■書店の数はいまが過去最高

中国の出版や書店の事情に詳しい程三国さん

程三国さん。中国図書商報(現中国出版メディア商報)、出版や読書にかんするウェブメディア百道網の創始者=2019年3月4日、北京市

中国政府が取り組んでいる「全民閲読(全国民読書)」運動はなにも書店を増やすだけではありません。読書を推進する主なルートは、学校、図書館、家庭、書店です。学校は、どこの国でも同じだと思いますが、受験勉強が大事でなかなか本ばかり読ませるわけにもいかない。図書館について言えば、国家級の大きなものはあるのですが、コミュニティーには少ない。増やそうとしていますが、基本的には政府の仕事になります。家庭は、それぞれの事情や意識の違いもあって長期的な取り組みになるでしょう。書店なら、政府の支援をテコにして、ビジネスで動く。だから、「全民閲読」の目立つ拠点になったのです。

同時に、中国政府は書店をただの商売とは考えていません。文化の拠点です。ネットを通じた販売が便利だからといって、市場原理でどんどんつぶれるわけにはいかない。地方政府を中心に減税や補助金などで支援しています。博物館を作るには何年もかかる。しかし、書店ならより少ない支援で早く形になる。政治の実績をつくれます。

ただ、大きな動力はビジネスです。中国では500~600のショッピングモールが毎年、開業しています。家主は書店をほしがるのです。文化的なイメージアップと人が集まるからです。だから家賃を減免したり、設備を援助したりしています。いま、中国はモノからコトへ消費の形が変わっています。この波が、カフェやイベントなどを併設した複合型書店にマッチしているのです。農村振興にもつながっています。南京の先鋒書店は農村部の古民家を改修して書店を作りました。名所になって人が来るようになりました。西安でも民宿を兼ねた書店があります。こうしたかたちで、都会のお客を農村部に呼び込むと同時に、書店が乏しかった地域にも増やしていこうとしています。

顔認証で解錠して入店する無人書店。24時間営業をうたう。ただ、住宅地から遠く離れた展示場内にあり、実験店舗のようだった。新技術も駆使して書店の未来を模索する=2019年3月3日、北京市

新聞や雑誌を売っていたスタンドを整理しているので、統計上の書店の数の増減と実態が合致していないのですが、中国の書店の数は政府の統計で16万店台。間違いなく、現在がもっとも多い。改革開放が本格化する前は、基本的に国営新華書店だけでした。1万もなかった。90年代前半から民営書店が生まれ、チェーン化するところも出てきました。しかし、2000年代後半から家賃の高騰とネットの影響で閉店も増えた。そこで、全民閲読運動のなかで政策を見直したのです。

米国ではネットの衝撃で書店の閉店が相次いだのち、コミュニティーで支える小規模の店は息を吹き返していると聞きます。日本にも視察に行きましたが、複合型書店の代表とされる蔦谷書店について、「あれは本屋じゃない」と伝統的な書店が好きな方は言っていました。興味深いです。書店のあり方については、それぞれ意見があるでしょうし、地域や国でも異なる。時代とともに変わっていく面もあると思います。

中国ではオーディオブックも広がりつつある。政府、企業、消費者とも新しい技術の活用意欲が旺盛だ=2019年3月7日、西安市・新華書店

中国は歴史的に「読書人」とは知識人を指します。リーダーには「武」だけでなく、品性や教養が求められてきました。(清代まで続いた官僚登用試験)科挙の試験も書物とともにありました。書店は文化と切り離せない存在です。中国の出版には政府の許可が必要ですが、認められない本は世界の出版物の1%にも満たないでしょう。それよりも、多くの人が本に触れられる環境を広げることで、精神的な生活も豊かになれると思います。

■書店4.0を目指す

「樊登書店」CEOの呉寧さん

住宅街を中心にフランチャイズ方式で急拡大している「樊登書店」のCEO呉寧さん=西安市

住宅地を中心に全国に約230店あります。フランチャイズ方式で2018年に一気に出店しました。さらに300~500は出したいと思っています。200~300平方メートルの面積の店が中心で、広くても1000平方メートル程度です。コミュニティーの特徴にあわせて住民の生活に必要とされる店を目指しています。カフェやイベントスペースもあります。

本棚はむやみに背の高いものは置きません。本が襲ってくるような圧力を感じさせたくない。ほら、あそこの彼女は午前中ずっとカフェで、何か仕事をしていますね。店のつくりはいろいろですが、落ち着ける環境が一番だと考えています。写真を撮りにくるような店ではありませんが、くつろげる雰囲気を大事にしています。

「樊登書店」は圧迫感を与えないように、高い本棚は置かないそうだ=西安市

たとえば、子どもが学校の帰りに宿題をする場となっている店もあります。両親が仕事から帰るまで一人で家にいるよりも、書店にいる方が安心でしょう。イベントスペースを使ってコーヒーや中国茶の入れ方やフラワーアレンジメント、音楽教室を開いている店もある。こうした教室や物販も、店ごとに住民の生活にあわせて変えています。

「樊登書店」のイベントスペース。コーヒーの入れ方やフラワーアレンジメント、音楽教室など多彩な講座を開いている=西安市

私は陝西省の建築関係の国有企業の幹部から転身しました。経験したことのない分野ですが、新しい理念や手法を構築できると考えています。書店1.0は本だけ売る。2.0はカフェがつく。3.0は雑貨などモノを売る。そして4.0はサービスが加わる。中国の書店はいま、4.0の時代です。外国にもタイのプーケットや米国の西海岸など4店舗を持っています。中国人が旅行や仕事でいる場所に必要な本を届けたいと思います。

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