日本では最近、サバの缶詰がよく売れていると話題になったが、ポルトガルでもサバやイワシ、タラ、タコといった様々な魚介類の缶詰が、保存食や家庭料理に使う食材として昔から親しまれているという。
実際に首都リスボンで食品店を数軒のぞいたところ、狭い店内でも魚介類の缶詰ばかりが並ぶ棚が必ずあった。しかも、オリーブオイル漬けやパテ状になったものなど味付けや形状も様々。パッケージのデザインがおしゃれで、土産に買っていく観光客も少なくないという。
そんなリスボンに有名な「缶詰バー」があると聞き、行ってみた。2010年にバーとしてオープンした「ソル・エ・ペスカ」は、以前は釣具店だった場所を改装。店の半分が陳列棚になっていて、その中にざっと100種類の缶詰が並ぶ。そのうち98%がポルトガル産だという。メニューを見ると、ワインやビールなどの飲み物に加え、マグロ、イカ、ウニといった様々な缶詰を使ったつまみがある。缶詰を開けてバゲットと一緒に出されたり、簡単に調理したサラダとして出されたりするという。
ポルトガルでは、タコをリゾットやサラダなどに使ってよく食べる。今回はタコを選択。タコとパセリ、オリーブオイル、ビネガーなどを使ったサラダ風のつまみを注文した。ワインは微発泡性で薄い黄緑色の同国産「緑ワイン」を選んだ。
店のオーナーが料理本
タコはゆでてあり、しっかりした歯ごたえがあるものの硬すぎもしない。ビネガーが利いてさっぱりした味わいは、日本の「タコの酢の物」に近い。ワインは辛口。冷えていて口当たりがよく、日本やポルトガルの暑い夏にはぴったりだ。
3年前にサーフィンをするために英国から来たという店員カイ・ジャクソンさん(27)は「お客さんには、生の魚が食べられると思って来たのに、缶詰しかないと知って帰る人が結構いるんですよ」と苦笑する。店のオーナーは建築家で、缶詰を使った料理本を出している。その本は「缶詰のサケやイワシは、生や冷凍よりカルシウムを多く含んでいる」などと薦めている。ユーラシア大陸で日本とは反対側の西端にあるポルトガルだが、食と健康への好みは案外、近いものがあると感じた。