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副社長でも予約が取れない熟成肉のステーキ店 本場ニューヨークで100年の歴史

One Meal, One Story 一食一会 更新日: 公開日:

熟成のコツは「家族の秘密」

 日本でも最近、しばらく寝かせて熟成させた「熟成肉」が人気だ。ステーキの本場ニューヨークで、この熟成肉を使う人気店「ピーター・ルーガー」は創業100年以上の歴史を誇る。元知事や上院議員が会食したり、ミシュランの一つ星を獲得したりと、この街を代表する店の一つだ。おいしさの秘密を探りに行った。
 店はブルックリンのウィリアムズバーグにある。金曜の午後2時だが店は満席。取材に応じてくれたのはダニエル・タートル副社長(27)。俳優かと思うほどのイケメンだ。「お客さまは1日約1000人。私でもディナーの予約は難しいんですよ」
 1887年創業だが、1950年にオークションにかけられ、店の向かい側で銀製品店を営んでいて常連客だったタートル副社長の曽祖父が買い取った。店名は「ピーター・ルーガー」のまま。理由は「曽祖父が名前も気に入っていたようだ」とのこと。曽祖母が毎日、食肉市場に通っておいしい肉を見極める「目」を養い、熟成方法を編み出したという。
 現在も店の地下に肉を寝かせておく施設があり、温度と湿度、空気循環を「非常に科学的なプロセスで管理」している。どれぐらいの期間、肉を寝かせるのかと尋ねると「それはファミリーシークレット」とぴしゃり。肉の選別や管理はタートル副社長と従姉妹、おばと大おばの4人だけでしているという。

イケメンのダニエル・タートル副社長

味わうべきは「真菌のフレーバー」

 肉はアイオワとネブラスカ産で米農務省(USDA)の審査を通った肉のうち、「極上」だけをマンハッタンなどの食肉市場で仕入れている。「肉が大事なんです。東京でも室温などは再現できると思いますが、脂の多い松阪肉では熟成はうまくいかないのでは」と笑う。熟成肉で味わうべきところは「真菌のフレーバー」という。
 ミディアムレアのステーキ(この日のランチ2人前107.90ドル)を注文。運ばれた肉は1キロほどありそう。ニューヨークストリップとそれより少量のフィレが載った皿を傾けると、肉汁がたまる。その肉汁をソースのように肉にかける。フィレは特に柔らかく、しっかりとした肉の歯ごたえと濃厚な風味を感じながらも舌の上ではとろけるよう。食べきれなかった分は「お持ち帰り」ができる。ウェイターに頼むと、専用の袋に入れて渡してくれた。