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ロナウジーニョも愛する肉塊 金持ちも、貧者もほおばる

One Meal, One Story 一食一会
Photo: Tamakawa Toru

褐色の肌に、ピンクの歯茎をあらわにした愛嬌ある笑顔。巧みな足技で世界のファンを魅了したサッカーの元ブラジル代表、ロナウジーニョ(37)が生まれ育った港町、ブラジル南部ポルトアレグレを訪れた。

この地方発祥のブラジル料理といえば、シュラスコだ。ロナウジーニョも里帰りしたら足を運ぶという「NB Steak」を訪ねると、高級店にもかかわらず順番待ちの列ができている。「ロナウジーニョは奥の個室でいつも家族パーティーを開くのよ」と、オーナーの娘パウラ・マギナミ(24)。


香ばしい匂いに誘われて席につくと、早速、店員が鉄串に刺した肉の塊を運んできた。ナイフでそぎ落とした先から、肉汁がしたたり落ちていく。ヒレ、リブ、あばら肉……。肉の回転ずし、はたまた、わんこそば? 次から次へと運ばれてくる。ブラジルは牛肉消費量が世界有数。日本人の私が勧められるままに食べていたら、胃袋はすぐパンパンだ。

他の肉は断り、地元の人お勧めのピッカーニャを待つ。牛の腰から尻の肉で、1頭からほんの少ししか取れない貴重な部位は、粗塩を振っただけなのにかむほどに味わいが増す。ああ、白飯がほしい。

トラック野郎の仕事メシ

ロナウジーニョはどんな肉が好きなの? この道10年のギャルソン、ヴィニシウス・フランセスキ(31)は親しみをこめて言う。「2時間じっくり焼いたあばら肉。彼はスーパースターなのに、店員みんなに親切にしてくれるんだ」

シュラスコは、この地方の牧童が串刺し肉を焼いて食べたのが始まり。その後、街道沿いのドライブインで長距離トラックの運転手の仕事メシとして、ブラジル全土に広まったともいわれる。

この国は、最も裕福な6人の資産が貧しい1億人とほぼ同額といわれる、すさまじい格差社会。シュラスコも路上で焼いている串1本数十円のものから、1人1万円以上の高級店まである。それでも、あらゆる階層の人々が味わえる料理だ。

町の一角にあるファベーラ(スラム街)で、半裸の子供たちがボールを追いかけていた。いつか高級店のシュラスコを腹いっぱい食べてやる。ファベーラ育ちのロナウジーニョもそんな思いで技を磨いたのかもしれない。