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核科学者が暗殺されたイラン 異彩を放つ傑作料理

中東を丸かじり
自宅で作ったゴルメサブジ

中東の一角を占めるイランは、イスラム教シーア派を国教とし、主要な民族がペルシャ人という点で、アラブ諸国とはかなり違った印象を受ける。イラン料理も、中東料理の中では異彩を放っている。イランは、トランプ米政権下で「悪役」だ。米大統領選でイラン融和路線を掲げるバイデン前副大統領が勝利を確実にしたことにより、イランの国際政治における立場は大きく変化することになりそうだ。

体制と国民の意識に乖離も

トランプ大統領は、イランに対して強力な経済制裁を科して封じ込め政策を行ったのに対し、国際協調を重視するバイデン氏は、トランプ大統領が一方的に離脱した2015年のイラン核合意に復帰する方針を示している。西アジアの中心として地政学的に重要な位置にあるイランは、歴史的に大国の干渉を受け、今も欧米に対する警戒感は強い。

イランと交渉したオバマ前政権から一転、徹底した親イスラエル姿勢を取ったトランプ氏によってイランは敵視された。背景には、イランとイスラエルの対立がある。親米体制だったイランは、1979年のイスラム革命によって反米・反イスラエルを旗印に掲げることになった。国民を糾合する理念として、反米・反イスラエルが為政者にとって好都合だった面もある。

ところが、イランには世俗的な国民も多く、訪れてみると、反米・反イスラエルで凝り固まった人たちばかりではないことを知る。米国好きの若者たちも目立ち、イランの宗教指導体制を嫌って欧米に移住する選択肢は、閉塞感漂うイランの生活から逃れる有力な選択肢だ。

イランの取材でそんな場面に出くわした。イラン取材では、当局が指定する通訳兼ガイドが取材に同行する。外国人記者の監視役も兼ねているようだが、あてがわれた若い女性は流暢な英語を操り、宗教体制への批判を隠さず、呆気にとられたことがある。夫と共にカナダに移住し、大学で博士号を取得、今は教職に付いている。装いなど生活面での制限が多いイランよりも開放的なカナダでの生活を謳歌している。

反体制デモに参加するイラン人女性

イランは歴史的に大国に蹂躙されてきたことから、軍備にも余念がない。最高指導者ハメネイ師は「核兵器の製造も保有も使用もしない」と明言しているものの、核兵器開発疑惑がつきまとっている。イランの核開発を国際合意によって制限し、平和的に解決しようとしたのがイラン核合意である。ところが、イスラエルなどは、核合意は期限が切れる2025年以降の核開発を制限していないなど欠陥だらけだと批判。バイデン氏が合意に復帰することにも反対の立場だ。

核技術者暗殺にイスラエル暗躍?

こんな中、イランの首都テヘラン近郊で11月27日、著名な核科学者モフセン・ファクリザデ氏が暗殺される事件が発生した。ファクリザデ氏はイランの核開発に深く関与してきたといわれ、イスラエルのネタニヤフ首相は18年、同氏は核兵器開発の中心的な人物だと名指しした。暗殺事件をめぐり、イランはイスラエルが首謀したとして報復を宣言している。

国際情勢がある方向に動き出そうとすると、それを阻止しようとする企てが露見することも多い。ファクリザデ氏暗殺には、イランの核開発に打撃を与えるとともに、タイミング的に判断して、米政権が簡単にはイラン核合意に復帰できないよう情勢を混乱させる狙いもありそうだ。

香草と果物を多用

国際政治の荒波に揉まれてきたイランの歴史を物語るように、イラン料理も周辺地域の影響を受けたり、与えたりしてきた。中東では版図を広げたオスマン帝国の影響が各国の料理に及んでいる。これに対し、イランは紀元後226年に登場したササン朝の時代に料理が発達し、オスマン帝国の支配を経験した地域とは異なる料理の数々が存在する。イラン料理の特徴は、香草や果物がデザートと副菜以外のメインにもふんだんに使われる点であろう。

自宅の菜園で収穫した香草

そんな一品がイランの国民食とも言えるゴルメサブジ。香草と果物を使った料理で、イラン国民に愛されている。ゴルメは煮込み、サブジは野菜を意味する。料理の見た目は地味だが、なかなかに滋味のある味わい。唐辛子などの辛味もなく、苦味と酸味、そして肉の旨みが絶妙な調和を見せている。

香草には、パセリやコリアンダー、フェネグリーク、ミント、リーキなどが使われる。イランや海外の中東食材店には、乾燥ゴルメサブジ・ミックスが売られており、手軽に楽しめる。日本では、大量の香草を入手するのは、なかなか難しい。幸い、自宅の菜園には、パセリやミント、コリアンダーなどの香草が大きく育っている。この料理は、乾燥ライムを煮込んで独特の酸味を加えるのも特徴だ。薪ストーブのそばにレモンを置いておいて作った自家製の乾燥レモンで代用した。なければ、レモンをそのまま使ってもいい。

中東料理には、大量の香草を使うサラダの傑作がある。レバノンやパレスチナ、シリアなどで食べられているパセリと挽き割り小麦のサラダ、タッブーレである。ゴルメサブジは、大量の香草を肉や豆とともに煮込むもので、大量の香草を使った温かい料理の傑作だ。

【動画】ゴルメサブジの作り方