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もう変装しなくていい サッカー観戦の夢をつかんだイラン女性

世界報道写真展から――その瞬間、私は
Iran's Perspolis football club losses an opportunity in a counterattack during the final match of the AFC Championship League against Japan's Kashima Antlers in Tehran
フォローグ・アラエイ撮影(Forough Alaei)

単なるサッカーの国際試合ではなかった。昨年11月10日、テヘランであったサッカーのアジア一のクラブチームを決めるチャンピオンズリーグ決勝戦。アザディ(自由)と名づけられた競技場で、イラン人カメラマンのフォローグ・アラエイ(30)は、こみ上げる興奮と歓喜を抑えられないでいた。

「女性として今まで経験したことがないレベルの自由を感じた。感情が高まり、仕事に専念するのは難しかった」

イランでは1979年のイスラム革命以降、男性スポーツを女性が競技場で観戦することが禁じられてきた。それがサッカー人気が高まると、男装してまで観戦する女性が出てきて、その一部が一時拘束されることもあり、国内外から批判が上がっていた。この試合は、女性と男性を分けた特別席に一部の女性ファンを招くことをイランが認めた初めての公式試合だった。

「競技場では、多くの女性が涙を流して自由を実感していた。私もその一人だ。女性カメラマンとして、この不平等を世界に発信する責務があると思った」

ただ、あくまでも暫定措置で、「これが最初で最後になるかも」と複雑な気持ちを吐露するファンもいた。

アラエイの写真は海外メディアでも大きく取り上げられた。イラン国内では、一部から「女性の不平等を意図的に誇張している」などと抗議も来たが、賛同と支持が多かったという。アラエイは強調する。

「イランで女性でいることは簡単ではない。私たちがいかに自由を求めて闘っているか。それを写真におさめ、国際社会の関心を得た。変化につながることを期待して、これからも撮り続けたい」 (山本大輔)

■女性のスポーツ観戦禁止

イランはイスラム法学者が統治しており、男女が公共の場所で一緒になるのは好ましくないという考えが強い。女性に競技場での観戦を禁じるのは、痴漢行為などから守るためともされている。ただ最近は、主に重要な大会で女性専用席を設けるなどして、スポーツ観戦を限定的に認めるようになってきた。

サッカーでは、2018年6月にイラン代表の国際試合の競技場でのパブリックビューイング、10月にイラン代表の親善試合、11月には記事にあるクラブチームの公式戦で、一部の女性の競技場観戦が容認された。観戦解禁に賛同する男性も増えているが、支配層の保守強硬派には反対意見が根強いといわれている。

■世界報道写真展2019、8月6日から大阪で

大阪のハービスHALLで8月6~15日、受賞作を紹介する写真展を開きます。