ユニ・チャームがサウジに進出したのは1993年。現在は現地法人(UGHI)が事業を担っている。子ども用紙おむつ、「Baby Joy」は進出当時からつくり続ける主力商品。サウジの人たちから「吸収しても膨らまないおむつがほしい」との要望が強かったことから、日本の製品には使っていない「圧縮吸収技術」を搭載したところ、人気が出てきた。育児を主に担う女性の社会進出が進んできたことで、これまで男性に頼むしかなかった買い物を女性自身でするようになり、よりきめ細かな品質や使い勝手が売れ行きを左右するようになってきた――。そんな事情も背景にありそうだ。
このほかに、生理ナプキン「SOFY」、高齢者用紙おむつの「Lifree」も販売しているが、どのパッケージにも日の丸のマークとともに「日本のテクノロジー」といううたい文句がアラビア語で記されている。
人気が定着していくなかで、現地法人が12年に開設したのが、女性だけが働く工場だ。サウジでは文化的、宗教的な理由により、女性が家族以外の男性と同じ室内にいることや話すことが制限されている。そのため、女性専用工場ができる前に働いていたのは基本的には男性のみ。現在は、女性が約80人働き、今後はさらに増える予定だという。高野邦彦・マーケティングディレクターは「女性社員たちは高いパフォーマンスを発揮しており、なくてはならない戦力」とコメント。女性が働く前と比べ、設備投資による自動化も相まって、一人あたりの生産性が2倍以上伸びたという。
男女の接触防ぐ「なるほど」の工夫
女性専用の工場は、男性も働く工場の一角にあるが、女性社員の勤務中は製造エリアに男性が立ち入らないようにし、書類や商品の受け渡しをするには、シャッターで仕切った専用の場所を設け、男性社員との接触が避けられるようになっている。女性たちは主に商品の梱包を担っているが、シャッターを下ろした状態で男性社員が商品を運び入れ、去ったことを確認すると、シャッターを開けて女性たちがその商品を受け取る。独自の仕組みは、女性の社会進出を後押ししようと、現地の人の意見を聞きながらつくりあげたという。また、シングルマザーの社員も少なくないため、16年には工場内に託児所を開設。働きながら、窓から子どもの様子をのぞくこともできるという。
最近まで女性は車の運転をできなかったため、バスを複数路線走らせて、女性社員の送り迎えをしているのも特徴だ。だが、今年6月の運転解禁を受けて、免許を取ろうとする女性社員も出てきており、また新しい状況が生まれつつある。現在教習中というラミア・アルブサイリさん(26)は「早く運転がしたくてたまらない。そうすれでは、自分で会社に来ることができる。運転ができれば自由に何でも自分でできる」と語る。女性専用工場で働きたいという希望者は多く、同社では今後、女性社員を増やしていく予定だという。