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創造力を育むために、絶対につくるべき時間とは

オックスフォードの学び方 更新日: 公開日:

「世界大学ランキング」で3年連続トップの座に輝いたオックスフォード大学(以下、OXON)。世界最高学府の教育は、私たちが知る大学教育と何が違うのか。人生100年時代を豊かに生き抜くために必要な「創造力」を身につけるオックスフォード流の学び方を、同大学で日本人初の教育学博士号を取った岡田昭人氏(東京外国語大大学院教授)が紹介する。<第2回目/全6回>

【この連載の前の記事】

  1.  創造力とは、どこから生まれてくるのか


現代人はとても忙しいものです。仕事や家庭、人付き合いに追われ、常に頭と体を使っています。このような状態では、優れたアイデアや発想を生み出すための時間がほとんどとれません。
英国の生涯教育の研究者であるテレサ・ベルトンは、著名な数多くの科学者や芸術家、アスリートなどにインタビューし、その内の複数の人が子どもの頃から「ひとりの時間」「退屈な時間」が創造力を育むのに役立った、と回答していることをつきとめました。

幼いときから宿題、習い事、塾などたくさんのことをしなければならない日本の子どもたちは、創造力を育む機会を逃していると思います。そんな子どもが大人になって、孤独な状況に置かれると、何をしていいのか分からずパニックを起こしたり、全く何もしないでダラダラと過ごしてしまったりするかもしれません。
ベルトンの研究では、子どものときから自分で自由に使える時間を持たせることで、創造力の育成をはかるべきであると提案しているのです。つまり、自力で考える力を持たないと、創造力は生まれないということです。私はこの考え方が子どもに限らず大人にも当てはまることだと思っています。

創造力を鍛えるオックスフォードの散歩道

OXON時代のことですが、論文の執筆に行き詰まることが度々ありました。机の前に何時間も座り、いくら本を読んでもたった一行の文章も書けないこともざらでした。
このことを、マレーシアから留学していた数学教師の学友であるユーソフに話しました。すると彼は、「それなら散歩するといい。歩きながら考えるといいアイデアが浮かぶことがある」というのです。
「散歩するぐらいで良いアイデアが浮かぶわけないよ」と半信半疑ながらですが、結局散歩をはじめてみました。幸いオックスフォードには街の至る所に散歩に適した場所が沢山ありました。自然の草花が咲き野鳥が飛び交うポートメドー(牧草地)、中世情緒漂う街路地、綺麗に手入れされたカレッジガーデン、そこを歩く人々がまるで絵画の中にいるように錯覚するぐらいです。少し足をのばしたところにある、蜂蜜色の家並みが美しい古い街コッツウォルズも散歩に最適です。

するとどうでしょう! 意外や意外、机の前に座っているよりも明らかにリラックスすることができ、思考力がアップしたのです。

「考えるための散歩」

実際に、散歩やウォーキングが科学的に心身の健康に有効に働くことがさまざまな研究によって証明されています。ですので、皆さんも自分の生活の中で、時間がつくれるタイミングを探して、一日最低20~30分の散歩をする時間をとってみてください。
私は、散歩にはリラックスする散歩(目的は特にない)、目的のある散歩(ダイエットやペットの散歩など)、そして、考えるための散歩(何かを考えたいとき)の3つの種類があると思います。
「考えるための散歩」ですが、私は次のように心がけています。

①体の力を抜いてゆったりと歩く
ゆっくりと歩いてみて気づくのが、日頃自分が何かに焦っていて知らず知らずのうちに早足になっているということです。周りを気にせずにゆっくりと歩くことで、自分のペースを保つことができます。

②周りの景色を楽しむ
歩いている間に徐々に周りの景色に目を配るようにします。また、景色を見るだけでなく、時々川の水に触れてみる、草木の匂いを嗅いでみるなど、人の五感全体を使ってみてください。さまざまな風景に触れていると、一点に集中していた思考が次第にほぐれていき、心地よい気分になってきます。

③散歩中に自分で良いと思うものを30以上探してみる
散歩中に良いと思うものを意識して30以上探すとよい、という記事を読んだことがあります。「小さな花が頑張って咲いている」「子どもたちの元気な声が聞こえる」などです。こうすることによって、物事を良い方向からみる習慣が身に付き、結果的に良いアイデアが浮かぶことにつながるでしょう。

 

 

本書は『人生100年時代の教養が身に付く オックスフォードの学び方』(岡田 昭人〔著〕、朝日新聞出版)のchapter3「非連続の発想を実現する『創造力』」の転載である。