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人が必ず突き当たる、『やる気が出ないとき』の対処法

オックスフォードの学び方

【この連載の前の記事】

  1. 創造力とは、どこから生まれてくるのか
  2. 創造力を育むために、絶対につくるべき時間とは


大学で教えていると、長い休暇の前後の時期や寒暖差の激しい時期になると、学生の勉強に対するモチベーションが明らかに低下していることに気づきます。「モチベーション」とはすなわち「やる気」のことです。

人間はつねに気持ちや感情に支配されやすい生き物です。モチベーションが高いときは、背伸びをしてでも大きな目標を設定し成功を収めることがありますが、逆にモチベーションが下がっているときは、いつもは簡単にできることさえも途中で諦めてしまいます。これは本人の能力の問題ではなく、モチベーションの問題です。

OXONに限らず博士論文を書き上げ、学位を取得する道のりは長く遠いものです。その期間中ずっと研究に対するモチベーションを保ち続けることはほぼ不可能です。

私の場合、人と距離を置き、一人で論文を書いていると自分の殻に閉じこもってしまいがちになり、気が付けば英国に留学していることも忘れるほどルーティーンな生活を送っていました。そうなれば研究に対するモチベーションは徐々に下がっていきます。

そんなある日のことです。OXONには「OXFAM」と呼ばれる古着などを扱うお店がいくつかあるのですが、ふと立ち寄ってみたところ、日本では見かけない英国風のセーターや靴などが沢山おいてありました。その中にOXONの教授や学生が普段よく被っている鳥打帽を見つけたのです。日本ではよほどのことがない限りは買ったり、被ったりすることのないデザインの帽子を購入し、その日から外出時に被ることにしました。

模倣効果とも言えるのでしょうか。自分が「何だかOXON人としての貫禄がついてきた」という気持ちになり、勉強したいという気持ちが高まってきました。普段の生活様式を少し変えてみるだけで、モチベーションが高まることがあるのですね。

私が実践しているモチベーションアップの習慣を紹介したいと思います。

それまでのやり方を変える

先にも述べましたが、人は、勉強であれ仕事であれ、自分が慣れ親しんだ習慣を続けていると退屈してしまい、情熱を失いがちです。そこで従来の「方法・手段・道具を変える」ことにより、モチベーションを向上させるのです。その際に大切なのは教える側が新しい方法や手段を、学ぶ側に提示してあげることです。

方法や手段の変化:料理本を読んでいると、作りたいという気持ちが湧いてくる
道具の変化:万歩計を買った人が、毎日散歩にでる

皆さん自身にもこのような経験はありませんか。辞書を新調する、新しいファッションに挑戦するなど、まずは形から入るのも、モチベーションアップにつながる立派な方法です。

「接近勾配の法則」を活用する

勉強や仕事で締切日が迫ってきたり、それができなければ極めて深刻な状況に陥ってしまいそうなときなど、やる気が上がることがありませんか。これは「接近勾配の法則」と呼ばれ、人のモチベーションは窮地に立たされたり、ゴールが近づいたりするたびにアップしていく傾向が調査結果として出されています。

たとえばマラソンでゴールが見えてきたらラストスパートをかける、プレゼンの日が近づいたときに資料作りがはかどったりすることなどです。

この法則をうまく活用して学ぶ側のモチベーションを高めるためには、「とにかく始めさせる」ことが効果的です。

①短期的スパンで小さな課題を具体的にいくつか設定する
「明日までにこの本のこの章だけをまとめてくるように」など、短期間で到達することが可能な小さな目標と、締切日をできるだけ具体的に設定することによって、最終的には長期的で総合的な目標に近づいていることを実感させ、本人のやる気が湧き出す環境に持って行く。

②優先順位を明確にする
たとえば、相手に特定の期間内でやらせたい課題や業務が10個あった場合、そのうちどの課題が最も重要であって、どの課題が比較的大切ではなく、あまり時間をかけなくてもよいのかを示唆する。ただ、あんまり指示しすぎると、本人が判断できないといったリスクが上がるので、指示と教わる側の判断能力のバランスを考えることが重要。

③「ピグマリオン効果」:褒めることの大切さ
上司・教師・親は、教えている相手に高い目標を要求する割には、その成果が出た場合であっても褒めることを忘れがちになる。相手の努力の結果がどれだけ小さいものであっても、それを見つけだし十分に褒める。

④モチベーション上昇サイクル
相手がやる気を持続させるためにどのような習慣を身に付けさせたらよいのでしょうか。言葉を換えて表現するならば、相手のモチベーションを上げるという行為は、とにかく「ぶつかっていく」ことを恐れずに、小さな達成とその賞讃を繰り返させながら、前に進ませることです。それを継続して繰り返し最終的により長期的で大きな目標を達成させたい場合には、以下のような循環したプロセスを認識することが大切です。

相手が勇気をもって始めることを応援する
 ↓
決して一人ではないという安心感をもたせ取り組ませる
 ↓
良い成果が得られた、逆に壁にぶつかったなら一旦立ち止まって整理、再検討する
 ↓
最初に戻って繰り返す

長期的なスパンで相手のモチベーションを高め、継続させ、目標を達成させる場合、このようなサイクルを、期限、目標をしっかり設定して、なるべく高速回転で進めていくのです。

創造力を育むためには何はともあれ、まずは実行してみることです。たいていの人は、なにかを始めるまでに不安や嫌気が邪魔してしまい、行動を起こせなくなっているのです。自分自身で行動することによって「モチベーションの上昇サイクル」が上手く回転しだし、ゴールに近づいていくのです。そしてたとえ失敗したとしても、「経験という財産」が付いてくると思えば次の行動につながる糧となりましょう。




本書は『人生100年時代の教養が身に付く オックスフォードの学び方』(岡田 昭人〔著〕、朝日新聞出版)のchapter3「非連続の発想を実現する『創造力』」の転載である。