IQ上位2%の団体、子どもから高齢者まで
知能指数(IQ:IntelligenceQuotient)は、しばしば天才と関連づけて語られる指標だ。
IQの上位2%の人だけが入会できる団体がある。1946年に英国で創設された国際組織「メンサ」。政治的に中立で、人種や宗教の違いを超えた集まりを作ることが設立の目的だった。
2007年、日本支部の「ジャパン・メンサ」が発足。会員数は昨夏頃3000人を超えた。子どもから高齢者まで年齢層は幅広く、弁護士や医師、農家、学生、会社員など職業も様々。例会やオフ会、食事会で交流を深めたり、趣味が共通の仲間で集まって遊んだりしているという。昨年12月には都内で10周年記念イベントが催された。
入会試験は各地で行われ、15歳以上は3回まで受けられる。15歳未満は病院などで受けた検査結果次第で入会できる。
ちょっと秘密めいた天才集団のようにも見えるが、クイズ作家で、ジャパン・メンサ副議長の近藤仁美(29)は、否定する。「IQテストの結果で、たまたま同じ集団に属している。私たちは、その程度の集まりに過ぎません」
さらに近藤自身は、IQの高さと「頭の良さ」を結びつけて考えることはしないという。「人にもよりますが、見た物を理解するのが早いなど、一般的に処理能力が高いと言われます。良いことである半面、『鼻につく』と思われることもあります」
知能検査で測れるもの、測れないもの
知能検査は1905年、フランスの心理学者ビネらによって開発されたのが始まり。その後、IQが考案された。知能検査の結果を標準偏差を用いて表示するやり方で、数値は同年齢集団の平均値を100として、その基準に対する相対評価で決まる。米国では人種差別に利用された歴史もある。
知能検査には「集団式」と「個別式」がある。集団式は大勢を同時に検査し、主に学校で用いられる。個別式は、病院や児童相談所などで用いられ、治療や知的障害、発達障害の程度の判定などに利用されている。
日本では戦後、教育現場を中心に知能検査が広まった。一時は全国の多くの学校で用いられたが、差別の助長につながるといった批判を受けて次第に減っていった。
検査大手の一般財団法人・応用教育研究所は、全国の小中高校で用いられる集団式の検査を作成。年1回、小学2年と4年、中学1年、高校1年での受験が多く、受験者は年130万~140万人に上る。実施は義務ではなく、それぞれの学校や教育委員会が独自に判断する。学力検査と並行して用いられることもある。
IQが高いと、「頭が良い」と言えるのだろうか。
精神科医で筑波大学大学院教授の斎藤環(56)は、「個人的にIQは頭の良さのほんの一側面だと思う。頭の回転の速さ、活動性みたいなものは測りやすいが、知的関心や物事を深く考えるといった傾向は測れない」と語る。
IQは検査結果の数値。何度も受けて「テスト慣れ」することで高めることも可能だ。
では、知能それ自体を高めることはできるのか。「学習効果で可能だと考えるのが自然です」と、斎藤。「学習すると脳の神経細胞同士を結ぶシナプスが増え、神経細胞のネットワークが緻密(ちみつ)になる。知識と知識の結びつきが多くなり、知能は向上する。人間の脳はコンピューターと違って、ソフトの作業がハード自体を変えていくのです」