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「バイリンガルニュース」マミに学ぶ、日本人にありがちな英語学習の落とし穴

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バイリンガルニュースを自宅から配信し続けるMami=吉野太一郎撮影

Mami(マミ)とMichael(マイケル)が日本語と英語ごちゃまぜの「バイリンガル会話形式」でトークを繰り広げるPodcast「バイリンガルニュース」は、日本で英語学習者を中心に「楽しく英語が学べる」と、根強い人気を保っている。日本生まれ日本育ちで「努力してバイリンガルになった」と話すMami(32)に、日本人が英語学習で見落としがちなことなどを聞いた。(吉野太一郎)

【前の記事を読む】 爆笑問題も絶賛した 「バイリンガルニュース」マミの意外な素顔

――「バイリンガルニュース」はなぜ注目を浴びたのでしょうか? 人気の秘訣は何だと思いますか?

始めた頃は「一体何人ぐらい聴いてくれているんだろう? うちのお母さんは聴いてくれるだろうけど」という感じでしたが、爆笑問題の太田光さんに偶然見つけて頂いて、開始2カ月後にラジオ番組で紹介して頂きました。たちまちiTunesのランキングで1位になったけど、最初はツイッターで話題になっているのを見て「何があったんだろう? 同じ名前のPodcastがあるのかな?」と思ったくらいです。

最初から「英語が分からない人に合わせよう」「リスナーは何に興味があるんだろう」とは全く考えないことにしているんですけど、「意外と英語を聴きたい人って多いんだ。内容が面白ければ上級者向けでも聴いてくれる人がこんなにいるんだ」と思いました。

――今回「顔を写さない」という条件で取材を受けて頂きました。「バイリンガルニュース」はなぜ第1回以来、匿名での配信を続けているのですか?

バイリンガルニュースを自宅から配信し続けるMami=吉野太一郎撮影

有名になりたいという欲求が特にないんです。「スッピンでコンビニに行けなくなる」とか、変なところで自意識過剰になりそうで(笑)。そもそもニュースについてざっくばらんに話すだけなので、「私たちの名前や顔なんて誰も気にしないだろう」と、最初は隠しているつもりもなかった。でもいきなりランキング1位になってしまったので、このままにしようと。

――Michaelさんって、どんな人?

1歳年下で、日本とアメリカのハーフです。もともと、同じ大学に通っていたんですけど、在学中は面識がなかったんです。仕事はIT関係の自営業をしています。

――英語のニュース解説というよりは、友達のおしゃべりという感じですね。

「説明してあげよう」という、上から目線は持たないようにしています。中学生のときに見ていたアメリカのドラマ「フレンズ」で、主要キャラクターの男性の妻に彼女ができて、逃げられてしまうという設定が普通に出てくるんです。これは同性愛で…などとわざわざ説明されるより、当然のこととしてしれっと出てくるほうが受け入れられやすいんじゃないかと思います。

それにやっぱり、聴いていて楽しくないと続かない。「バイリンガルニュース」を「楽しくて勉強にならない」とたまに言われますけど、私はむしろ逆なんじゃないかと。私自身、小学生のときにブリトニー・スピアーズに夢中になりましたけど、ブリトニーから教わった英語はいっぱいありますし。

――違う言葉を話したり聴いたりするのは、頭の中でラジオのチャンネルを切り替えるようなイメージです。Michaelさんが英語、Mamiさんが日本語で会話する「バイリンガル会話形式」は、チャンネルを何度も変えるような感じ。正直、難しくないですか?

実際にそんな会話のシチュエーションはないですし、私自身、英語を聞きながら日本語を話し続けるのは結構大変です。でも、全部英語だと、ほとんどの人がついていけなくなってしまう。

Michaelの話が聞き取れなくても、私の日本語である程度推測できる。「なんでMichaelが笑ってるんだろう」と思えば「聞き取ろう」というモチベーションになると思うんです。ところどころ、日本語が入ることで、あきらめずに聴いてもらえるようにしています。

――聴き続けていれば、英語が上達するでしょうか?

よく「聞き流すだけで喋れるようになる」という幻想を持っている人がいますけど、ボーッと聴いているだけではほぼ不可能です。「今日は1個でも単語を聞き出すぞ」といった、ちょっとした意識を持って聴いた方がいいですよね。

――では、どうすれば?

大学生の頃にマンツーマンの英会話教室でアルバイトしましたけど、高いお金を払って何年も通っているのに「どうして喋れないんだろう」と悩む人を何人も見ました。単語や文法がきちんと入っていない状態で、高いお金を払って週一回ネイティブと会話していても、なかなか上達はしない。頑張る方向性が違うというか、もったいない気がします。

それから「読む」「書く」「話す」「聞く」は、相関関係はあっても別の能力です。「話す」に関してはスポーツと同じで完全に実技なので、参考書をいくら読んでもできるようにはなりません。ただ、受験英語みたいな暗記のための暗記だと、達成感を得られずに嫌いになるのは当然ですよね。

――どんな思いで週1回の配信を5年以上も続けているのですか?

英語を学ぶこと自体が好き、とか、外国人の友達を作りたい、とか、英語へのモチベーションは人それぞれだと思います。

バイリンガルニュースを自宅から配信し続けるMami=吉野太一郎撮影

個人的に、英語が理解できることで得られる最大のメリットは情報量が膨大に増えること。Wikipediaを見ても、同じ項目で英語と日本語のページで中身が全然違うことがある。英語のページは世界中の人が編集に加わって、いろんな知見が注ぎ込まれているから。日本語のページだけない項目もたくさんありますし。

違う言語を分かると情報の量が違うんですよ。日本語しか分からないと、その差が存在していること自体になかなか気づけない。英語の勉強をしている若い子のリスナーにもよく聞かれるんですけど、そこに気づくと、きっとびっくりするんじゃないかと思います。

――宇宙物理学や言語学、生命科学の研究者など、かなり高度な専門家も時々、ゲストに来ていますね。

学校の勉強だけじゃなくて、大人になっても新しいことを学ぶって面白いこと。私は文系人間だけど、ゲストに来て頂ける物理学者や天文学者の話を聞いているのがとても楽しいんです。Michaelと私だけじゃ分からない、いろんな知見を広めていけたらいいなと思います。

(文中敬称略)