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爆笑問題も絶賛した 「バイリンガルニュース」マミの意外な素顔

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バイリンガルニュースを自宅から配信し続けるMami=吉野太一郎撮影

3月の木曜日の午後。東京都内にあるMamiの自宅のリビングで、Mamiが日本語で、アメリカにルーツがあるMichael(マイケル)が英語で、テーブルをはさんで向き合って喋っていた。マイクにつないだノートパソコンが2人の声を録音する。

Michael: It’s something that you want, you appreciate, you treasure it if you are in a good relationship. But it it turns bad, it's like, "oh my god, I've just been wasting all this time and energy".
Mami: そうだね。私は今の夫と会ったとき、すぐ別れると思ったじゃん?
Michael: Was that destiny thinking, or you weren't...
Mami: シンプルに「あ、これは長く続かなそう」と思った。
Michael: Do you look for that? It’s weird…
Mami: No, it's just like…しょっちゅう喧嘩してるとかだったらIt's obviousじゃん?でもそういうわけでもなく「あっ、気が合わない」 と思っちゃって。興味が違いすぎるから、これは絶対うまくいくわけないやつだ、と思って。
Michael: But people don’t really know.
Mami: そう、結婚しちゃったもんね、結局は。

話題は科学技術から心理学、天文学、考古学など幅広い。海外や日本のニュース、論文を組み合わせているが、「ニュース解説」というより、仲良し男女がおしゃべりしている感じに近い。約1時間半の収録が終わると、編集なしですぐ配信する。

Appleが昨年末に公表した日本のiTunes Storeのダウンロード数では、Podcastの第5位。Apple Japanによる年間の「ベストPodcast」にも2013年から毎年選ばれている。ラジオ局の人気番組の再配信や再構成ではなく、個人が配信するPodcastのランクインは異例の大健闘と言える。

「『純ジャパ』さぼってる場合じゃない」

Mamiは東京出身。母は独学で英語を学んで英会話教室の先生になった。会社勤めの父はビジネス英語を話す。ただ、両親から英語を学んだことはなく、5歳年下の弟は海外にまったく興味がないという。

バイリンガルニュースを自宅から配信し続けるMami=吉野太一郎撮影

きっかけは小学6年生のとき。CD店で見つけたブリトニー・スピアーズのCDをジャケ買いした。「めっちゃ可愛い! でも何言っているか分からない」。まだ日本ではブレーク前で情報が少なく、MTVで流れる字幕なしのインタビューや、ティーン向けの輸入雑誌に、訳も分からず夢中でかじりついた。

東京の私立女子校から「英語を喋れる環境に行きたい」と漠然とあこがれて志望したのが、上智大学比較文化学部(現・国際教養学部)。アメリカの大学に近いカリキュラムで、授業は英語。先輩や担任教師から「あそこは外国人が行くところでしょ」「絶対無理」と止められた。

そう言われると余計に燃えた。入試は英語の小論文や「アメリカ版センター試験」とも言われるSATがあり、英語で数学を解く必要もあったが、一発で合格した。「今思えば、若かったから謎の自信がありました。受験勉強は事実上、ここ一本に絞る必要があったけど、追い詰められたような不安もなかったですね」

入学して青ざめた。クラスには様々な肌の色の学生がいて、会話は「どこの国出身?」から始まる。英語はできて当たり前、文法や単語を教える講義はない。「帰国子女でもなく、留学経験もないのは私ぐらい。『入る大学を間違えたかも』と思った」。フランス人の教授が英語で講義する哲学人類学は、英語以前に中身がまったく理解できなかった。

バイリンガルニュースを自宅から配信し続けるMami=吉野太一郎撮影

それでも2、3週間すると、その外国人学生たちが口々に「授業、難しくない?」「何言ってるか全然分からない」と言い出した。「私は日本人だから分からないのかと思っていた。ちょっとくらい分からなくてもへこむ必要はないんだ」と思い直した。

「大学1年の頃の私は、今よりもたどたどしい英語だったけど、回りは誰もそれを気にする様子もなかった。母国語じゃないんだから間違っていいっていう開き直りは大事かなと思いますね。大学時代、英会話学校でもアルバイトしましたけど、発音や文法の間違いは、むしろ日本人同士の方が厳しい感じがする」

クラスは大半が少人数制で15人程度。講師も学生の名前を覚え、発言を求めてくる。「『純ジャパ』の私が追いつくためには、サボってる場合じゃない」と、友人ともなるべく英語で通した。原書講読など課題はハードだったが「英語漬けの環境に身をおけたことが、嬉しくて楽しくて仕方なかった」という。

「私たちの変な話、録音したら面白いかもね」

卒業後、外資系のPR会社やコンサルティング会社に計3社勤めた。卒業して数年後に、招かれたパーティーで、1歳年下のMichaelと出会った。「パーティーがあまりに退屈で、後ろの椅子に座ってたら、同じように隣に座ってた。お互い、変な話に興味があって、宇宙とかピラミッドとか、何時間でも話が尽きなかったんです」

2社目の会社では激務で睡眠不足になった。ベッドに入っても「眠らなきゃ」というプレッシャーで不眠症になった。半年ほどで転職した3社目、ヨーロッパからの長期出張から帰った2012年夏に、健康診断のガウンになぜか着替えられなくなった。次の瞬間、受付で名前を呼ばれながら返事ができず、パニックになった。「典型的な鬱病」と診断され休職した。

自宅療養前から、Michaelとたわいのない長電話やメールのやりとりをしながら、毎日聴いていたのが、アメリカの人気コメディアン、ジョー・ローガンのPodcast「Joe Rogan Experience」だった。専門家から素人までゲストと3時間、台本なしで、放送禁止用語もお構いなしに好き勝手に喋り続ける。

「私たちも変な話を長時間しゃべってるの、録音したら面白いかもね」と2人で話し合っていた、その構想を復職後の2013年5月、実行に移した。

「自由に言える場でありつづけたい」

始めて2カ月で、爆笑問題の太田光がラジオ番組で紹介し、日本のiTunes の総合ランキングで1位に。「楽しく英語が学べる」と話題になり、2015年には英語学習法の著書も出版した。

バイリンガルニュースを自宅から配信し続けるMami=吉野太一郎撮影

今は子育ての傍ら、フリーランスで広報関係の仕事をしている。多くのファンを抱え、収益を得る道はいくらでもありそうだが、スポンサーはつけず、「有名になっても窮屈なだけ」と、サーバーレンタル費用、録音機材など、ほぼ全額を自費で負担しながら配信を続けている。

パーム油生産に伴う環境汚染、中国の「ゲノム編集ベビー」など、Mamiのトークは時に熱くなり、政府や業界への批判も飛び出す。「マーケティング関連の仕事をしているから思うことでもあるんですが、広告をもらうとどうしても、言いにくいことが増えてしまう。NGワードなしで、自由に言える場でありつづけたい」という。(文中敬称略)

【後編も読む】 「バイリンガルニュース」マミに学ぶ、日本人にありがちな英語学習の落とし穴