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なぜネイティブの言っていることは聞き取れないのか?

英語が拓く世界 更新日: 公開日:

「リスニングが難しい」
「ネイティブ同士の会話はほとんど聞き取れない……」

よく英語学習者のみなさんからこんなセリフをお聞きします。映画を字幕なしで見たい。そんな夢を持って英語学習を始めたはずなのに、いつまでたってもちっとも聞き取れない方も多いでしょう。実際、字幕なしで映画やドラマを聞き取れるようになるのは難しいものです。英語圏に10年以上住んでいても字幕なしでは聞き取れない人などいくらでもいます。なぜ英語のリスニングはこれほどまでに難しいのでしょうか?

聞き取れない原因は7つある

一口にリスニングが難しいと言っても、その原因はレベルによって様々です。しかし、日本人が共通して遭遇する問題はおおよそ次の7つにまとめられます。

1. 英語のリズムがわかっていない
2. 日本語に比べて抑揚が激しい
3. 日本語に比べて音域が低く、聞き取りにくい
4. 消えたり、変わったりする音がある
5. 音のつなぎ方のルールを知らない
6. カジュアルな言い回しやスラングを知らない
7. そもそも話題になっていることを知らない


それでは順番に解説しましょう。

原因1:英語のリズムがわかっていない
以前の記事でも紹介しましたが、日本語は音節の最後に母音が来る言葉がほとんどという言語です。これに対して英語の方は、音節の終わりに子音が来るケースが大半を占めます。したがって、喋る際のリズムがかなり違うのです。「子音に母音がお供するのが日本語」「母音が子音のサンドイッチになっているのが英語」と意識して聞くだけでも、かなり聞き取りやすくなります。

◇子音に母音がお供する日本語
犬 〜 i-nu
テイクアウト 〜 te-i-ku-a-u-to
マクドナルド〜ma-ku-do-na-ru-do

◇母音が子音のサンドイッチになっている英語
dog
Take out(eは発音されない)
M(a)cDonald


原因2:日本語に比べて抑揚が激しい
英語を聞くと、なんだか無駄に抑揚がありすぎるように感じる人も多いと思います。実際、英語はかなり音程の上下動が激しい言語です。なお、音程が変わるのは基本的に母音です。歌などもそうですし、普段喋っている時もそうです。また、強調するときに母音を伸ばして発音することもあります。

例えば “I hate it!” (俺、それ嫌い!)などと言うときには “I heeeeeyt it!” のような感じで、’a’ の音(ei エイ)の [e] の音の部分の音を上げたり下げたりしつつ、さらに伸ばして強調します。日本人は抑揚というと声の大小ばかりに意識がいきがちですが、音程の高低にも気をつけると、また一段聞きとりやすくなります。

原因3:日本語に比べて音域が低い

実は日本語は、もっとも高い声で話されている言語のひとつです。一方英語は、数ある言語の中でも、特に低い音域で話されています。よく知っているハリウッド俳優などをユーチューブなで探して、声の低さに注目してその英語を聞いてみてください。どの人も日本人の俳優と比べると驚くほど声が低いです。このため、日本人が聞くとどうにも低すぎて聞き取りにくいと感じることがあります。なお、日本語の他に中国語やベトナム語なども音域が高いですし、英語以外にもスペイン語やフランス語、あるいはドイツ語なども低い傾向にあります。

原因4:消えたり、変わったりする音がある

よくwater が「ワラ」に聞こえたりしますが、前後の音によって発音が変わってしまったり、音そのものが消えてしまう子音が存在します。これを知っていると知らないでは聞き取りやすさがずいぶん変わります。

例1:[t]が母音で挟まれていると /d/ や /l/ のように発音される
Water 〜 t が/l/ のようにように発音され、「ワラ」と聞こえる
Butter 〜 t が/d/ のようにように発音され、「バダー」と聞こえる

例2:後に[t] が[n]と母音に挟まれると、/t/ が省略されることがある
Interstates 〜「インターステイツ」のはずが/t/ が抜け落ち、「インナーステイツ」と聞こえる
Interview 〜 「インタビユー」のはずが/t/ が抜け落ち、「インナビュー」と聞こえる

例3:[h]が省略されることがある
I will tell her. 〜 h が省略されて ‘I will teller” と聞こえる
Was he there?. 〜 h が省略されて “Wazi there?” と聞こえる

原因5:音のつなぎ方のルールを知らない

「聞き取ろうと思っても、全部つながって聞こえてくるんです」と言う方がたくさんいますが、それは実際に音をつなげてしゃべっているからです。ですから、つなぎ方のルールを把握し、耳を慣らすだけで、リスニングがかなり楽になります。ここでは代表的なルール2つ紹介します。

例1:同じ子音は一度しか発さない
Bad dog 〜 /d/が一度しか発音されず、badogと聞こえる
The best time /t/が一度しか発音されず the bestime と聞こえる
Gas station 〜 /s/が一度しか発音されず gastation と聞こえる

例2:子音と母音が繋がって発音される
stop it! 〜 /p/と /i/ がくっついて「ピ」と発音され “sto-pit!”(ストッピット)と聞こえる
Let’s play a song. 〜 /y/と /a/ がくっついて「ヤ」と発音され “pla-ya-song.”(プレイヤソング)と聞こえる
I have to read a book 〜 /d/と /a/ がくっついて「ダ」と発音され “rea-da-book”(リーダブック)と聞こえる

原因6:カジュアルな言い回しやスラングを知らない

4つめの原因は、カジュアルな言い回しやスラングを全く知らないことです。日本語でも同じですが、よく知っている友達同士だと、カジュアルな言い回しが大半を占めます。必ずしもスムーズに言えるようにならなくてもいいですから、ある程度スラングに慣れ親しんでおくことリスニングがずいぶん楽になります。

原因7:そもそも話題になっていることを知らない

最後の原因は話題を知らないことです。仮に日本語の会話でも、自分がまったく予備知識がない話というのは、会話に加わることができません。英語ならなおさらです。英語の勉強とちうつい教材の反復練習に終始しがちですが、教材を何度回しても話題が増えませんから、いつまでたっても話の輪に加われない、と言うことになってしまうのです。

ではどうすればいいのか?

まず、英語というのは「日本語とは異なるリズムで、より低い声で、音程を大きく上下動させながら、繋げて喋る言葉なのだ」という認識を持ちましょう。一語ずつ切り離して話さないのが普通の状態なのです。ここの認識がずれていると、「スペル通り聞こえない!」などとフラストレーションを抱え込んでしまいます。くっつけずに喋ってくれるのは、Siriとアレクサくらいかもしれません。

そうした認識を持った上で、なるべく生の英語に触れましょう。教材用の音源を何度聞いても、なかなか生の会話を聞き取れるようになりません。なぜなら、こうした教材の類は学習用にあまりにも殺菌されすぎているためです。実際の会話ほど感情もこもっていませんし、あまりにもわかりやすく発音されすぎています。また、スラングが混じることもなければ、学習者が知らない話題が流れて来ることもありません。

ある時期まではこのような教材も悪くはありませんが、せいぜい中学校レベルまでと考えておいてください。次はたとえ子供向けでもよいですから、ネイティブ向けに作られたコンテンツを聞くようにしましょう。今ではNetflix などもありますし、英語字幕を簡単に表示できますから、リスニングの練習にはもってこいです。

最初は日本語字幕で観て、次は英語字幕を表示したまま視聴し、最後に字幕をオフにして聞いてみてもよいでしょう。知らない言い回しが出てきたら、スクリーンを止めて辞書で調べることも可能です。また、ドラマなどはスラングを覚えるに非常に適した素材です。

また、話題を仕入れるという意味では、日常的に英語のニュースを読んだり聞いたりすることを強くお勧めします。こうすることで知らぬ間に話題が増えていくからです。また英語で仕入れた話題というのは、そのまま英語で話しやすいものです。日本語で仕入れた話題を英語で話そうとすると、「あれ、これは英語でなんていうのだろう?」というところでつまずきがです。

以上、リスニングが向上しない原因と、その対策についてまとめました。

次回からは、「英語が使って一体何ができるか?」について、お話したいと思います。