■米議会で体験を証言
「電気いすに通電されるたびに全身が激しく震え、血管が痛みました。拷問するくらいなら殺して、と懇願しました」米議会で昨年11月、スカーフ姿のウイグル族女性ミフリグル・トゥルスン(29)は恐怖の体験を証言した。
留学から帰国した直後から3回、計10カ月間拘束された。狭い施設に約60人が押し込められ、朝食前に共産党や国家主席をたたえる歌や詩を唱えさせられた。錠剤や液体を無理やり飲まされて気を失ったり、大量に出血したりした人もおり、この部屋だけで3カ月間に9人が死亡した。自分が何の罪を犯したのか係官に尋ねると、「ウイグル族であること自体が犯罪」と言われた、とも証言した。
■米中間の懸案にも
ウイグル族はトルコ系少数民族で人口約1000万人。多くがイスラム教徒だ。18世紀に清朝の支配下に入ったものの、漢族への抵抗を続けてきた。漢族と衝突して2000人近い死傷者が出た09年のウルムチ騒乱以降、中国当局は締め付けを強めている。
100万人規模とも言われる「再教育施設」の実態が国外に漏れ伝わり始め、国連人種差別撤廃委員会が昨年8月、収容者の解放を中国政府に勧告。米国も11月、中国との外交・安全保障対話で「人権侵害」と非難し、中国側と激しい応酬になった。
■周辺国にも広がる懸念
シルクロード沿線国にも懸念が広がっている。ウイグル族はカザフスタンに約46万人、キルギスにも約6万人いるほか、収容者にはカザフ系住民もいるとされるためだ。カザフ人の空港職員エルザノフ・ロシムザール(27)は「こんなことが続くといい結果にならない」と語った。
なぜいま、弾圧が強まっているのか。カザフに住む世界ウイグル会議の上級顧問カハルマン・ホジャムベルディ(77)は言う。「中国の夢であるユーラシア支配の実現には、シルクロードの要衝に我々ウイグル族がいることが邪魔なのです」