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ウイグルの「再教育」に懸念 米中が抱える人権問題の火種

World Now 更新日: 公開日:
中国国家主席・習近平を映す大画面の前を歩くウイグル族の女性=2018年9月、中国新疆ウイグル自治区カシュガル、ロイター

シルクロードの要衝にある中国最西部の新疆ウイグル自治区で、「再教育」と呼ばれる少数民族への弾圧が波紋を広げている。

■米議会で体験を証言

「電気いすに通電されるたびに全身が激しく震え、血管が痛みました。拷問するくらいなら殺して、と懇願しました」米議会で昨年11月、スカーフ姿のウイグル族女性ミフリグル・トゥルスン(29)は恐怖の体験を証言した。

留学から帰国した直後から3回、計10カ月間拘束された。狭い施設に約60人が押し込められ、朝食前に共産党や国家主席をたたえる歌や詩を唱えさせられた。錠剤や液体を無理やり飲まされて気を失ったり、大量に出血したりした人もおり、この部屋だけで3カ月間に9人が死亡した。自分が何の罪を犯したのか係官に尋ねると、「ウイグル族であること自体が犯罪」と言われた、とも証言した。

■米中間の懸案にも

ウイグル族はトルコ系少数民族で人口約1000万人。多くがイスラム教徒だ。18世紀に清朝の支配下に入ったものの、漢族への抵抗を続けてきた。漢族と衝突して2000人近い死傷者が出た09年のウルムチ騒乱以降、中国当局は締め付けを強めている。

100万人規模とも言われる「再教育施設」の実態が国外に漏れ伝わり始め、国連人種差別撤廃委員会が昨年8月、収容者の解放を中国政府に勧告。米国も11月、中国との外交・安全保障対話で「人権侵害」と非難し、中国側と激しい応酬になった。

「シルクロードの要衝にウイグル族がいることが邪魔なのです」と語る世界ウイグル会議の上級顧問カハルマン・ホジャムベルディ=カザフスタン・アルマティ、村山祐介撮影

■周辺国にも広がる懸念

シルクロード沿線国にも懸念が広がっている。ウイグル族はカザフスタンに約46万人、キルギスにも約6万人いるほか、収容者にはカザフ系住民もいるとされるためだ。カザフ人の空港職員エルザノフ・ロシムザール(27)は「こんなことが続くといい結果にならない」と語った。

なぜいま、弾圧が強まっているのか。カザフに住む世界ウイグル会議の上級顧問カハルマン・ホジャムベルディ(77)は言う。「中国の夢であるユーラシア支配の実現には、シルクロードの要衝に我々ウイグル族がいることが邪魔なのです」