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キルギス料理を知ってますか 伝統の一皿はボリュームが命

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キルギスの伝統料理ベシュバルマック(右)とナン(パン)=ビシケク

ビシケクの南西部に、ベシュバルマック専門店が5軒立ち並ぶ激戦区がある。そのひとつ、「ベシュバルマック ナンバー1」に入ると、調理人のクルマベコバ・シャルクン(38)は「すべて手作りのシンプルな料理なので、作り手の気持ちが味にそのまま伝わるのです」と力を込めた。

キルギスの伝統料理ベシュバルマック専門店「ベシュバルマック ナンバー1」=ビシケク

「ベシュバルマック」とはキルギス語で「5本の指」という意味。いまはフォークやスプーンを使うが、かつては素手の右手で食べていたことに由来する。麺の上に、塩味を付けてゆでた肉を細かくほぐして載せ、刻んだタマネギと馬肉の腸詰を盛り付ける。その上に、うまみたっぷりの肉のゆで汁をかけてできあがり。ゆで汁はタマネギを入れてスープとして一緒に提供する。

「ベシュバルマック ナンバー1」で食事をする男性=ビシケク

家庭で作る場合は羊肉を使うことが多いが、この店は馬肉専門の本格派だ。シャルクンは「汁の美味しさがカギです。高原で育つ馬は、無農薬の草を食べ、空気がきれいな美しい自然の中で育つので、美味しさも格別。オーガニックな料理でもあります」と胸を張る。

■ボリューム求める労働者、ダイエット志向の都市女性

最も一般的な基本のベシュバルマックで1皿240ソム(約380円)。イスラム教の戒律に従って調理したハラール料理であり、店はアルコールを提供しない。

すぐそばに建設資材のバザールがあるため、建設現場で働く出稼ぎ労働者がよく立ち寄る。「満腹感」を求める客がボリューム満点のベシュバルマックを好んで食べることから、この一帯に専門店が集まるようになったと言われている。

店長になって1年のアリコバ・アイプリ(27)によると、売り上げは毎年伸びている。1日平均200皿、混雑する週末は350皿ほど出るという。着席まで10分待ちになることもあるそうだ。

「ベシュバルマック ナンバー1」の店長アリコバ・アイプリ(左)と、調理人のクルマベコバ・ジャルクン=ビシケク

知人と来店していた南部出身の農家の男性(27)は「家でも食べるけれど、この店は馬肉だけ使っていておいしい。ベシュバルマックはキルギスに欠かせない料理」と話した。

ただ、都会のビシケクの若者、特に女性客は、以前のようなボリュームを食べなくなった。シャルクンは、料理そのものは「遊牧民時代からのものなのでできるだけ変えないようにしている」と強調しながらも、盛りが少なめのメニューを用意したり、スープに入れる油を減らしたり、ヨーグルトや馬乳酒を加えてみたりと、健康志向、ダイエット志向に応える工夫も重ねている。

こちらは中国系ムスリムの少数民族ドンガン人の麺料理「アシュラン・フー」。うどんに似たものと、ジャガイモのでんぷんをゼリー状にした2種類の麺が入っている。辛みと酸味が効いたスープが特徴で、最近、「ヘルシー志向」の若い女性を中心に人気という