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インスタ、スナチャに政治をどう乗せる 中国の侵食進む香港、民主派旗手の模索

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香港の民主化運動「雨傘運動」の中心的・象徴的存在のアグネス・チョウ(周庭)さん=2018年12月27日午後、東京都渋谷区、仙波理撮影
香港の民主化運動「雨傘運動」の中心的・象徴的存在のアグネス・チョウ(周庭)さん=2018年12月27日午後、東京都渋谷区、仙波理撮影

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■相手の組織力高まった

――昨年11月の立法会(議会)補欠選挙では民主派から2人が立候補したものの親中派に敗北。しかも、民主派候補2人の得票を足しても親中派に届きませんでした。

非常に残念です。民主派は、以前は補選で負けたことがありませんでした。民主派には、香港独立を主張する「独立派」や、私のように、香港の未来は香港人が決める「民主自決」などいろいろな主張があります。でも独立派が立候補資格を取り消されるようになった2016年から、独立派にとっては自分たちを代表する候補者がいない状態になり、そうした人たちの間で、「もう投票に行かない」といった考え方が出ています。

また、親中派の選挙運動がうまくなり、組織力が高まったことも要因の一つです。自由意思による投票が中心の民主派に対し、親中派は組織票が強いです。例えば地区の年長者の会とか、そういう組織が「みんなで投票に行きましょう」と呼びかけています。

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――アグネスさん自身も18年3月の立法会補選に立候補しようとして、認められませんでした。

私はもともと街で社会運動をやっていましたし、昔のように、街宣活動や市民の組織化に力を注いでいます。特に、かつて雨傘運動に参加した人たちをもう一度呼び戻せるようがんばっていきたいと思っています。

■「何やっても無駄」強まる無力感

――一方で最近、香港の若者たちの政治に対する関心が薄れていると言われていますが。

16年の立法会選挙は雨傘運動の元リーダーも当選し、すごくいい結果になりましたが、結局は議員資格が無効になってしまいました。そうして香港の人たちには、「何をやっても無駄だ」「もう反抗できない」「中国政府が強すぎる」とか、そういう無力感がすごく強まっています。

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2014年の香港での大規模デモ「雨傘運動」の様子。ドキュメンタリー『乱世備忘 僕らの雨傘運動』より ©2016 Ying E Chi All Rights Reserved.

■かわるコミュニケーション、どう対応

――フェイスブックやツイッターが動員や連絡の中心的役割を果たした雨傘運動当時と違って、今の若い世代に人気のソーシャルメディアの特性が徐々に変わってきたことも影響しているようですね。

私は今22歳で、一応若者ですが、10代は話題も言葉遣いも全然違っていて、世代の違いを感じます。中高生はフェイスブックをあまり使わず、インスタグラムやスナップチャットが中心。写真や動画が主体なのです。インスタでも長い文字は載せられますが、文字がメインではありません。

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そうした特性でもって、香港政治についてどうやって中高生に訴えるかは私たちにとってチャレンジです。だから今、フェイスブックに長い文章ではなく短い動画やかわいい写真を載せたり、インスタにおもしろい写真を載せたりしていますが、それで本当に政治を伝えるツールになるのか。政治は何かに対してすごく怒ったり、すごくまじめな話を語ったりするだけに、「かわいい」「きれい」「おもしろい」が中心のアプリでどうやって伝えられるのか、難しさを感じています。

――昨年、香港と中国大陸を結ぶ初の高速鉄道「広深港高速鉄道」が開通しましたが、駅の一部や香港内を走る車両内で中国大陸の法律が適用されるようになりました。一国二制度の行方を危惧する声もあります。

怖いです。香港の一国二制度は、どこが二制度なのかもうわからなくなっています。中国大陸と香港、マカオを結ぶ世界最長の海上大橋「港珠澳大橋」も開通しましたが、中国政府は今、いろいろな手段で経済一体化を進めています。香港の香港らしさがどんどんなくなり、中国の一都市になるんじゃないかとすごく心配しています。私たちのシステムがどんどん変わってしまい、政治的な一体化を進める動きも際立ってきました。

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小中学校でも中国の愛国教育がいろんな科目に入り込んでいます。世界でも多くの政府が、そうやって人々の考え方を変えさせようとしていますが、香港人として、本当に警戒心を持たないとだめだと思います。

正直、私は(一国二制度が適用期限を迎える)2047年以後の香港を想像できない。今年の香港すら想像できないです。政治的な弾圧がどんどん増え、英紙フィナンシャル・タイムズの記者がビザを更新されなかったりして、海外メディアの報道の自由にも影響しています。私たちが香港人としてやらなきゃいけないことがいっぱいある、と改めて思います。

――今年は天安門事件から30年の節目の年ですが、香港の人々の見方が変わってきているようですね。

昨年、香港での追悼集会で「(共産党の)一党独裁を終わらせる」というスローガンが掲げられた際、親中派の一部が「(憲法に相当する)香港基本法違反だ」と問題視し、これを叫んだ人は選挙に出られない、との声まで上がりました。民主派はほぼ全てが一党独裁に反対していますし、これがなぜ香港基本法違反なのか、私には理解できません。将来、本当にそうなるのではないかと、すごく心配しています。

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2014年に香港で起きた大規模デモ「雨傘運動」の様子。ドキュメンタリー『乱世備忘 僕らの雨傘運動』より ©2016 Ying E Chi All Rights Reserved.

また、今の若い世代の間には「天安門事件は私たちの問題じゃない」「もう昔のことだ」という考え方があります。そのうち、例えば10~20年後の若者たちが「雨傘運動は過去の話」「どうでもいい」となってしまうんじゃないか。想像するだけで怖いです。

日々の生活を見ても、中国大陸で売られるものは香港人にとっては安く、休日に深圳に行く人たちが本当に増えています。また、大陸に行くのが好きになった若者もすごく増えています。彼らは中国の通販サイト「タオバオ」もよく利用しています。中国の人権問題に対してあまり知らない、知っているとしても自分と関係ないといった考え方が彼らにはあります。どうやって人権問題に注目してもらうようにするのか、大事な課題です。

――香港には中国大陸から学びにくる学生も大勢います。民主派の活動を間近に見て、影響を受けて帰ったりはしないのでしょうか。

私が通う香港バプテスト大学は中国大陸の学生の比率がとても高く、教室にも大陸の学生がたくさんいます。中国では聞けない、天安門事件や雨傘運動の話もいろいろ見聞きしています。大陸に帰ったらそういう話はしなくなりますが、それでも、私たちの考え方や民主化運動の真実を知ってもらえればと思います。

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――中国の圧力を背景に、台湾では昨年11月の統一地方選で独立志向の与党が大敗しました。中国は台湾への一国二制度の適用を主張しています。

民主選挙の結果は尊重しなければいけないですが、私たちとしては残念です。香港もマカオも一国二制度がすごく壊されていて、自治権もどんどんなくなっています。台湾としても将来、今の香港のようになるのを望んでいないですよね。

――香港に希望を見いだせず、香港を出てしまう人も増えているといいますが、アグネスさんは考えたことはありませんか。

私は両親のいる香港に住み続けたいですし、政治的にも、自分が香港に残る責任があると思っています。民主化のため、一緒に一生懸命に戦っている仲間がいる、だからがんばれると思っています。

アグネス・チョウ 周庭 活動家・学生
1996年、香港生まれ。2014年の「雨傘運動」で参加した若者らでつくる政治団体「香港衆志」の幹部として活動。香港バプテスト大学の学生で、独学で学んだ日本語を話す。