ポリ袋やストローなど使い捨てプラスチック禁止を法制化 バヌアツの成果と課題
首都ポートビラの市街地は湾に面して広がり、さわやかな海風が吹き抜ける。中心部にある青果市場には各地の農家が持ち寄ったバナナやココナツ、地元でアイランドキャベツと呼ばれる葉物野菜などが所狭しと並ぶ。ポリ袋やプラスチック製の梱包(こんぽう)材は見当たらない。ヤムイモやサツマイモはココナツの葉で編んだカゴに入れられて売られている。客はマイバッグを持参したり、ひもで結んだ野菜を抱えたりして買い物を楽しんでいた。
バヌアツは2017年7月30日、37回目の独立記念日を祝う式典で、当時の首相が「使い捨てプラスチックを禁止する」と宣言。翌年施行された法律では、世界で初めてプラスチック製ストローが禁止され、買い物用のポリ袋や発泡スチロール製食品容器などが規制の対象になった。
この法律のきっかけを作ったのが、1999年からバヌアツに暮らすフランス出身のクリステル・テフェリーさん(53)。「ここでの暮らしが長くなるにつれ、ビーチにプラスチックごみがどんどん増えているのを目にするようになった。とても心配で、何かしなくてはという思いでした」と振り返る。
2017年3月にフェイスブックのページを立ち上げ、プラスチック汚染や海洋生物への影響、代替品の可能性などについての情報を発信。数カ月の間にフォロワーが増え、2000人の署名を集めて政府に請願書を提出した。賛同する政治家も現れ、当時の首相への面会も実現した。「すぐに政治家にアクセスできるのは、この国の良いところ」とテフェリーは笑う。
南太平洋の島国の取り組みは、各国で報道されるなど注目を集めた。20年には英国でもプラスチック製ストローが禁止された。
市民生活やビジネスへの影響はどうだったのだろうか。市場でアボカドを売っていたノーレン・チミさん(50)は「プラスチックが禁止された当時は売り方も変えなければならず大変だった。ただ次第に慣れてきたし、環境にも良いし良かったと思う」と話す。ヤムイモを売るときにはココナツの葉でカゴを編む。「5分ぐらいで編むことができるし、家で作れる。そんなに大変なことではない」
この法律によって、プラごみは減ったのか。ポートビラ市の廃棄物処理マネジャーを務めるジェイソン・アンドルーさん(36)に聞くと、「残念ながらごみは減っていない。むしろ人口増で右肩上がりだ」と苦笑いした。
実際、ペットボトルや肉や魚を入れるポリ袋など、禁止されていない使い捨てプラスチックもまだまだある。スーパーにはプラスチックで梱包された輸入品の食材や日用雑貨が並ぶ。バヌアツにおいても、プラスチックなしの生活は極めて困難なのだ。
それでもアンドルーさんは「法律がなかったらもっと増えていたかもしれない」と続け、「バヌアツのような国が大規模なリサイクル設備を持つのは難しい。可能な限り使用量を減らす努力は不可欠だ」。
一方で、バヌアツでは分別回収やリサイクルはほとんど実現していない。道沿いに置かれたごみ袋をのぞくと、空き缶から紙、ペットボトルまで詰め込まれている。ポートビラがある島では、プラスチックを含む廃棄物のほとんどが1カ所の処分場で埋め立てられている。
日本も様々な支援を続けている。ポートビラ市役所のアンドルーは福岡県で廃棄物処分の研修を2カ月間受けた。ごみ収集用の車両も日本の支援で配備されたほか、国際協力機構(JICA)の海外協力隊も分別の啓発活動などに取り組んでいるという。
国レベルでも「次の一手」に乗り出す動きがある。昨年11月、ペットボトルなど飲料容器を返品すると一部が返金されるデポジット制の導入に向けた法案が国会で可決された。
法案成立に深く関わったラルフ・レゲンバヌ気候変動相(55)は、「バヌアツにとって廃プラのほぼ100%が輸入品であり、引き続き国境でプラスチックが流入することへの規制は続ける。ペットボトルについては、デポジット制というインセンティブを設けることで、状況は大きく変わるのではないか」と語る。