マレーシアになだれ込む、日本など先進国のプラスチックごみ 中国のプラ禁輸の影響も
マレーシアの首都クアラルンプールから車で2時間余り。マラッカ海峡に流れ込む河川沿いに広がる工業団地の未舗装の道を進むと、高さ3メートルほどの鉄板が立ち並ぶ壁が現れた。
地元のNGOが「輸入された廃プラが陸揚げされているのでは」とにらむ艀(はしけ)だ。検問所の警備員3人に日本から取材に来た旨を伝えると、「ダメだ」と言って立ち去った。ゲートには進入禁止の看板が掲げられ、ライフルを構えた絵が描かれていた。
マレーシアでは、認可を受けていれば、廃プラを輸入してリサイクルすること自体は適法だ。リサイクル業者は、環境への影響を含めて関連法令を順守した処理が求められているが、リサイクルに向かない廃棄物が放置されていると疑われるケースもある。廃プラの問題に取り組む国際NGO「バーゼル・アクション・ネットワーク」のウォン・プイイーさん(39)は「どういう廃プラが輸入され、どう処理されているのか、実態は不透明だ」と指摘する。
マレーシアは、世界でも有数の廃プラの受け入れ国とされる。国連貿易統計によると、2024年にマレーシアが輸入した廃プラは86万トン。その4分の1以上を日本からの廃棄物が占める。
背景に、17年末からの中国による廃プラ禁輸措置がある。17年に年間57万トンだったマレーシアの廃プラ輸入量は、18年には100万トンに跳ね上がった。特に増えたのが日本からの輸入量で、それまで中国に輸出されていた日本の廃プラがマレーシアになだれ込んだとみられる。
艀から車で1時間ほどのところに、プラスチックのリサイクル施設が集まる地域がある。道路沿いには、フレコンバッグに入った廃プラが無造作に置かれていた。中には、電化製品の破片や潰されたペットボトル、粉々に細断されたプラスチック片などが詰め込まれていた。
施設は高い壁に囲まれていて中をうかがい知ることはできない。市民団体「C4センター」のウォン・シーピンさん(53)によると、適切に処理をしている会社もあるというが、看板なども出さず当局も把握できていない業者も多いという。
アブラヤシ畑に囲まれた一角が、こんもりと高くなっている。積み上がっているのは、砂利ほどの大きさの色とりどりのプラスチック片だった。踏みしめるとカリカリという音がする。リサイクル施設が集まる地域から車で40分ほどのところにある国内最大規模の廃プラの不法投棄場所だ。
所々から煙が立ち上り、近づくとプラスチックが溶けたような臭いが漂う。ウォン・シーピンさんは「ここにあるのは99%が廃プラ」と話す。付近の集落では呼吸器系の疾患を訴える住民もいるという。
数カ月に一度ここを訪れる彼女だが、廃棄物を運び込む場面に遭遇したことはない。誰が、いつ、どこから持ち込んでいるのかなど、不明なことは多い。「廃プラの輸入許可を得ている業者のリストも公開されておらず、我々の調査を受け入れてくれるリサイクル業者もない。不透明なフローでは、我々は何も信じることができない」
あたりを歩くと、少し大きな破片を見つけた。沖縄県の地名とガス会社の名前が書いてある。ガスメーターの部品だろうか。このほかにも、日本の大手プリンターメーカーの社名の入ったプラスチック片も見つかった。
日本を2度訪れたことがあるウォン・シーピンさんは言う。「全てのプラスチックをリサイクルすることはできません。技術力も高く、効率の良い日本社会は大好きですが、なぜプラスチックの大量消費を続けているのでしょうか」