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10代の柔軟なアイデアと行動力で 地球環境や途上国の課題に挑む

World Now 更新日: 公開日:

今回のプロジェクト以外にも、檜原村の耕作放棄地を耕すプロジェクトやボルネオのスタディーツアーに参加するなど、中1〜高3まで、のべ40名ほどの生徒がSDGsの活動に参加している。〈前列〉左から丹羽葵さん、鳥海千尋さん(3年生)、吉田美鈴さん、阿部風さん(2年生)。〈後列〉左から芹澤迅さん、江口雅弘さん、落合航一郎さん、小林尚誠さん(2年生)

オーガニックコットンのやさしさと可能性をもっと

放課後の生物室に生徒たちが集まり、思い思いに弁当を食べたり、課題を広げたりしながら、プロジェクトの説明が始まるのを待っている。この日、生物室で説明が予定されているのは、「オーガニックコットン切れ端リノベーションプロジェクト」と「布ナプキンプロジェクト」だ。指導する山藤旅聞先生は生徒にこう呼びかける。

「ここに来ている一人ひとりは、すでに行動者。ここで考えたこと、知ったことを予定があって来られなかったみんなにも伝えて、広げていってほしいと思っています」。楽しいから、地球のためにできることを考えたいからと、参加する生徒の動機は様々だ。

「オーガニックコットン切れ端リノベーションプロジェクト」は、オーガニックコットン製品などを扱うメイド・イン・アースから商品を作る過程で出る不ぞろいな切れ端を提供してもらい、生徒のアイデアでリノベーションしようというもの。健全な自然環境で栽培されたオーガニックコットンは人にも地球環境にもやさしい。不ぞろいなコットンを手に取り、それを折ったり、ほつれたところからほどいてみたり、重ねたり、つないだり−。グループごとにアイデアを出し合っていく。生徒からはシュシュや赤ちゃんのおもちゃ、ペットボトルケースが作れるのではなどと具体的な案が挙がった。

生徒たちの自由な発想と社会の課題をつなげていく

「布ナプキンプロジェクト」では、肌に当たる部分をオーガニックコットンで作った布ナプキンをケニアの女の子たちに届けるプロジェクトだ。

「ケニアには、生理が来ると学校に行けないという女の子たちがいます。彼女たちの大切な学ぶ機会を断ち切らないように、手作りの布ナプキンを届けます。未使用のタオルやアフリカの女の子たちが喜びそうなかわいい布、スナップなど、家にある材料を持ってきてもらえるとうれしいです。ここに、作り方のレシピもあるので、できる人は家で作って、ここにいない人にも作り方を広げてください」。そう呼びかける山藤先生に、早速家から持ってきた布を手渡す生徒も。夏休み期間を使って、中高生による「オーガニックコットン切れ端リノベーションプロジェクト」と「布ナプキンプロジェクト」が進んでいく。

別室で進められているのは、中学生による企業へのプレゼン準備だ。今回は「持続可能なパーム油」を原料にすることを企業のエコの取り組みとして掲げる花王株式会社へ、商品パッケージのアイデアを中学生がプレゼンする。「サステナビリティ データブック2018」と「花王統合レポート 2018」を読み込んだ生徒たちは、独自にアンケート調査をしたり、デザインのアイデアを出し合ったりしてお互いの発表を評価する。

「自由で柔軟な生徒たちが考えることは、私たち大人の発想を大きく超えてくることもしばしばです。子どもたちの発想で社会問題の解決の糸口を見つけ、それを企業がかたちにしていく。生徒と企業の懸け橋になれればと考えています」(山藤先生)

ケニアの女の子たちに等しく学ぶ機会を 「布ナプキンプロジェクト」

東京・神保町にある共立女子中学高等学校の被服室を会場に、同世代の女学生が学校に行けない現状を学び、社会課題の解決のために行動するイベントが開催され、休日を利用して武蔵中・高の生徒たちも参加した。

「どこの国に生まれても、男性でも女性でも、与えられるチャンスは平等であってほしい。そんな思いから、アフリカへ布ナプキンを届ける活動を続けています」。そう語るのは、ケニアの女の子たちを布ナプキンで支援する、この日のイベントの主催者であるミュージックアクティビストのshihoさん。集まった90人ほどの中高生や一般参加者が、shihoさんのアドバイスのもと、型紙から型を取ったり、ミシンを動かしたり−。はじめて顔を合わせた生徒たちも作業をうまく分担しながらオーガニックコットンの布ナプキンを作成した。

リアルな社会課題と教室の学びをつなげることで、生徒から学ぶ意欲と意義を引き出す

2018年夏現在、都立武蔵高校の生徒を中心としたSDGs関連のプロジェクトは20以上あります。生徒たちの発想は本当にユニーク。積極的に大人や企業とパートナーシップを結んでいけば様々な社会課題の解決につながるはずです。

ブータンやマレーシアなどに渡航した際、子どもたちが目的を持って学ぶ姿が印象的でした。「教育インフラの整った日本で、子どもたちは、何のために学ぶのかという意識を持てているだろうか」と思ったのが、この活動を始めたきっかけです。SDGsの17の目標は、これからを生きる生徒たちがみんなで共有すべきこと。本物の課題と出合った生徒たちは、自主的に考え、一人ひとりが力強い行動者となっています。(談)

都立武蔵高等学校 理科(生物)教諭 山藤旅聞氏




本記事は朝日新聞社が各界のリーダーたちの意見、自治体や企業がゴールに向けて取り組んでいること、若い人のチャレンジなど2018年の動きをまとめた冊子「SDGsACTION!2」からの転載です。「SDGsACTION!2」はPDFファイルでご覧いただけます。

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