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美しい時計には歴史への敬意を感じる パルミジャーニ・フルリエCEO

LifeStyle 更新日: 公開日:
パルミジャーニ・フルリエの修復部門では、内部機構も外装も手がける
パルミジャーニ・フルリエの修復部門では、内部機構も外装も手がける=パルミジャーニ・フルリエ提供

正確な時間を知りたければ、スマホで用が足りる。なのに、なぜ今、機械式の腕時計がもてはやされるのだろう。

「美しい機械式時計からは、歴史に対する敬意が感じられる」。1996年にスイスのヌーシャテルで創業した新興ブランド、パルミジャーニ・フルリエ(PF)のグイド・テレーニさんは、そう話す。1969年生まれのイタリア人で、元ブルガリの腕利きプロダクト責任者。2021年にPFのCEO(最高経営責任者)に就任するとデザインを極めてシンプルなものに転換した。内部には複雑な機構を搭載していても、そうは見えない時計を世に出して、他にない「新しさ」が受けている。

パルミジャーニ・フルリエのCEOグイド・テレーニさん
パルミジャーニ・フルリエのCEOグイド・テレーニさん=パルミジャーニ・フルリエ提供

PFの創業者はミシェル・パルミジャーニさん(74)。何百年も前に作られた複雑な名作時計の数々を修復してきた現役のレジェンド時計師だ。優れた時計修復師はムーブメント(時計内部で時を刻み針や各種表示を動かす心臓部)の設計、装飾技術などすべての時計製作の工程に精通し、卓越した知識と技術を持つ。

PFには現在も本社敷地内に修復部門があり、世界中の富裕層からいにしえの高級時計が持ち込まれる。テレーニさんは「我々のブランドの歴史は比較的新しいが、修復部門にルーツがあることから機械式時計の美しさや魅力を理解している」と語る。その精神は同社が手がける新製品にも息づいている。

ムーブメントからケース、文字盤に至るまでを自社で製造する垂直統合型の体制を採用。見学を希望する人は、修復工房や、ギョーシェ彫り(文字盤などに細かな模様を刻んで装飾する技法)やエナメル加工といった伝統技法などの希少な工程もすべて見ることができる。

パルミジャーニ・フルリエの「トンダPF GMTラトラパンテ ヴェルツァスカ」
パルミジャーニ・フルリエの「トンダPF GMTラトラパンテ ヴェルツァスカ」=パルミジャーニ・フルリエ提供

テレーニさんのCEO就任以降、PFは気品あるシンプルなデザインで時計愛好家を魅了している。通常であればクロノグラフ(ストップウォッチ機能つきの時計)に使う複雑機構「ラトラパンテ(別名スプリットセコンド。秒針2本を使い、二つのタイムを同時に計測できる)」を、時差のある2カ所の時刻を表示するGMT機能として世界で初めて取り入れた際にはマニアたちから絶賛された。その一方で、見た目は全体として、「引き算の美」が徹底されている。

テレーニさんは語る。「目指すのは、機械式時計のピュアな美しさ。多くを語らずとも伝わる、静かな造形。日本の方々の美意識とも深く通じるものがあると思います」