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NHK番組「BENTO EXPO」 世界中から投稿された独創的な弁当はまるでアート

World Now 更新日: 公開日:
NHK「BENTO EXPO」に台湾(左)と香港(右)から寄せられた写真
NHK「BENTO EXPO」に台湾(左)と香港(右)から寄せられた写真=NHK提供

日本の弁当が「Bento」になって海外に広がっています。世界のさまざまな国から投稿された手作り弁当などを紹介する、NHK国際放送でシーズン8を放送中の「BENTO EXPO」。これまでに写真投稿サイトや番組のホームページに投稿された弁当の写真は数万点に上るといいます。

放送開始から番組に携わってきた日本国際放送のチーフプロデューサー、小出由美子さんに投稿の概要や弁当人気の背景について聞きました。(聞き手・丹内敦子)

bento」がフランス語の辞書に載ったり、日本食ブームが起きたりして、自分で作った弁当をSNSで紹介している人がいるのを見て、番組にしたらニーズがあるのではないかと考えた。弁当のふたをパッと開けたときの写真は、文章より一目瞭然なので、SNSの中でも写真投稿サイトが人気になるにつれ、投稿も多くなっていった。

2016年に定期的な放送が始まってから70以上の国・地域から応募があった。

投稿フォームが英語なので英語が理解できるかなどが影響している。そのうえで、日本を別にして応募が多かったのは、1位米国、2位インドネシア、3位台湾、4位フィリピン、5位マレーシア、6位インド、7位シンガポール、8位香港、9位英国、10位ドイツだった。

この順位を見ると、香港や台湾、マレーシア、シンガポールといった国・地域では元々、弁当のような携行食文化があり、弁当作りに違和感を覚えないのではないか。

フィリピンやインドネシア、マレーシアではキャラ弁も人気だ。ご飯は形や色を変えられ、キャラ弁向きと言える。こうした国では、いろいろなキャラクターをご飯で作る楽しさが身近なのかもしれない。

NHK「BENTO EXPO」にマレーシアから寄せられた写真
NHK「BENTO EXPO」にマレーシアから寄せられた写真=NHK提供

米国はさまざまなルーツを持つ人がいて、アジア系も多く、日本とビジネスをしている人も多いことが影響しているのでは。アニメや漫画に日本の「食」がよく出てくるようで、若い世代が弁当を知っていることが多い。

2020年に新型コロナウイルスの感染拡大が始まり、世界中で外食ができなくなったときに、応募が2、3割増えた感じだ。これまで弁当を作ったことはなかったがチャレンジするという人が増えたと感じた。

米国のbento人気を背景に、番組ではニューヨークの有名シェフの弁当を取り上げたことがある。

料理人の間でもBentoはブームのようだ。というのも、弁当は長時間かけて食べるコース料理と違い、短時間でも食べられるので現代生活、特に米国のエリートたちの生活に合っている。弁当はさまざまな食材を使って栄養バランスが取れ、ヘルシーだということも大きい。シェフたちは懐石など料理として完成度の高い部分に引かれるのではないか。

シェフではない人も弁当は外食より栄養バランスが良く、節約もできる点も安心するのだろう。冷めてもおいしく、離れて食べても家族への愛を示せたり、感じられたりする。

現代社会は変化していて、それぞれが忙しく孤独になりがちだ。そんな中、だれかのために弁当を作り、だれかが自分のために作ってくれた弁当を食べる。そうしたことで、孤独になりがちな生活の流れを変えているように感じる。

サウジアラビアからNHK「BENTO EXPO」に寄せられた写真。巡礼に行く人びとの様子をあにぎりで表現
サウジアラビアからNHK「BENTO EXPO」に寄せられた写真。巡礼に行く人びとの様子をおにぎりで表現=NHK提供

応募作は独創的なものが多く、アートを制作する趣味のようだ。

英国女性は野菜をきれいに切って絵画のように並べていた。それが話題になり、英国で本を出した。サウジアラビアの女性は巡礼に行く人びとの様子をおにぎりで表現。ニューヨークの建築家は富士山とクライスラービルディングをパンでかたどり、野菜で模様を付けて作った。日本人が思いつかないような発想や色合いで作り、遊びながら楽しんでいるようだ。