割れや欠けのある果物からケーキ、酒かすからジン――。これまでだと捨てられがちだった素材を使った食品づくりに取り組むベンチャー企業が増えてきた。
おやつの定期便サービスを提供する「スナックミー」(東京)は、形や大きさが「規格外」という理由で捨てられる果物や野菜を加工した「アップサイクルおやつ」の販売を、2020年2月に始めた。
きっかけは取引先から、割れや欠け、変色があるドライフルーツやナッツが大量に出たという相談を受けたことだった。「訳あり品」は素材のまま安く販売されることもあるが、同社は「味は規格品と変わりなかった」として、新たにグラノーラに加工して売ると好評だった。
シリーズ化したアップサイクル商品は、21年10月までにブドウのケーキなど九つに及ぶ。いずれも、素材本来のおいしさが楽しめると評判だ。「消費者の方にはまず商品のおいしさを感じてもらい、気づいたら社会に貢献もできていたと思ってもらえるような状況が理想です」と、代表取締役の服部慎太郎さん(40)は話す。「原材料の供給次第だが、月1回ぐらいのペースでアップサイクル商品を出したい」
捨てられる素材を酒づくりに生かすのは、クラフトジン生産を手がける「エシカル・スピリッツ」(東京)。CEOの山本祐也さん(36)らが、日本酒づくりの際に出る酒かすの有効活用を狙って、20年に設立した。
「使われず捨てられる素材の可能性を引き出したい」と、酒かす以外にもコロナ禍で行き場を失ったビールを蒸留したり、チョコレートの製造過程で処分されるカカオ豆の皮を香りづけに使ったりして開発を続けている。
21年には、酒かすからつくった同社のジンが、国際的な品評会で相次いで受賞した。海外販路の拡大にも取り組むという。(太田航)