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何でもおいしくできる技 世界を救うのは日本食!?

マイケル・ブースの世界を食べる
Photo: Toyama Toshiki

捨てるとこなし 日本食とSDG

国連、それは世界中で途方もない量の良いことを実践しているすばらしい組織だ。その一方、ブランド化とコミュニケーション戦略にかけてはまるでなっていない! 例えば国連が定めた17分野のSDGs(持続可能な開発目標)を見てみよう。眠りこけそうでキーボードで書き起こすのも苦労する。私には組織で使われる業界用語や「ミッションステートメント」への忍耐力があまりになさすぎるにせよ、気候変動や限りある天然資源に対する人々の関心を高めたいのなら、問題をどう伝えるかはまさしく重要なはずだ。

いくら個人の行動を見直したところで、その恩恵を直接は感じられないという別の障壁もある。たとえば家中の電球を(ものすごく高価な)省エネタイプに取り換え、自動車の代わりに自転車に乗ってみる。すると私はお金を失い、汗だくのへとへとになるだろう。私たちみんながこんなことをすれば、この星の悲劇的な温暖化を少しは遅らせることができるかもしれない。しかし、個人の視点で考えてみると、得する人は誰もいない。

そこで一つ、解決策がある。誰もが今すぐ、金銭的にも恩恵を受けられて、効果も簡単に計算できる問題。それは食品ロス(国連らしいキャッチーな表現をするなら「責任ある消費と生産」)。私たちは平均して約3分の1の食料を無駄にしている。こんなことがいつまでも続くはずはないが、食べ物を無駄にしないための日本人の貴重な教訓から、世界が学べることはきっとある。食べ物を無駄にすることへの罪悪感が少なくとも人一倍ある日本人だからこそ、無駄を最小限に減らすことにかけても世界一なのだ。

漬物に見える日本の知恵

たとえば漬物。漬物は良質な菌と酵素を含む、スーパーヘルシーな食べ物だ。見た目もきれいだし、いろいろな料理に爽やかな酸味を添えてくれる。冷やさなくても保存がきく。何よりも、安かったり少し古くなっていたり、食べられるなんて考えもしなかったような食材(スイカの皮、キャベツやブロッコリーの芯、カブの葉や茎……)が、漬物にするだけで食べるに値するようになる。北欧では、ニシンのような恐ろしく骨の多い魚を酢漬けにして骨を柔らかくし、保存できるようにしているが、琵琶湖沿岸にもそれとよく似たふなずしがある。摘みたてでは食べられないウメも、塩漬けにすると口をすぼめるようなおいしさになる。生のオリーブを一度でも食べたことがあるなら、塩漬けがいっそうありがたく感じられるだろう。漬け汁はサラダのドレッシングに再利用することもできるし、酒を造る時にできる副産物にすぎない酒粕(さけかす)を、捨てずに「粕漬け(かすづけ))」に使うあたりも日本ならではだ。

日本人は鮮魚を無駄なく使うことにかけても一流だ。パリの星付きレストランで働いていたとき、ヒラメのエンガワは捨てるように教わった。ところが日本では、あの平べったい身のほんの「キワ」の部分も立派な珍味なのである。ウナギの骨はカラリと揚げるし、フグのヒレまで使っている! 焼き鳥の料理人も鶏を余すことなく料理し尽くす技術を身につけている。つくねがいい例だ。軟骨を食べられるように加工するなんて、魔法としか思えない!

日本食の中で私が気に入っているゆばも、外国人の目には廃棄物と映るかもしれない。しかし、日本では、温めた豆乳にできる膜が本当の美食にまで高められるのである。

新しい本を書くために訪れた四国でも、ユズがいかに無駄なく使われているかを知った。皮から中果皮、種までもが、食品や化粧品として使われるのだ。そして日本人は、誰も食べられると信じてこなかったものでさえ、ちゃんとおいしいものにしてしまう。長野県で、昆虫を食べる伝統を取材してからというもの、私にとってイナゴは殺虫剤で退治すべき害虫ではなく、立派な夕飯のおかずとなった。

(訳・菴原みなと)