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日本料理に世界が向ける関心、いまだ衰えず 

マイケル・ブースの世界を食べる
握り寿司の写真
北村玲奈撮影

■この記事は朝日新聞別刷りGLOBE連載(3月6日発行)の転載です。

6年の月日を経て、GLOBEに別れを告げるときがきた。みなさんに向けて毎月書かせてもらえたのはまさに喜びであり、手間を惜しまずコラムの感想を寄せてくださった方、別にそこまでしようとは思わなかった方も、すべての読者にお礼を言いたい。ライターにとって自分が書くものを読みたい人がいることは決して当たり前ではないから、みなさんがこの6年そう思ってくださったのは、とてもありがたいことだ。

食に限らずだが、世界全体が大きく変化してきた。もちろん食の世界も国際的な政治事情や環境、気候、文化などをめぐるグローバルとローカルそれぞれの事象と密に絡み合っている。だからこんなにも果てしなく、豊饒(ほうじょう)なテーマなのだろう。食とは人生、食とは私たちなのだ。

私のコラムで驚くほど目立った役割を果たしてきたのが政治だ。トランプ前大統領からブレグジット、東京オリンピックから日本の某総理大臣の食べ方まで。クレージーなもの(木の板にのった料理)も、そうでもないもの(ヴィーガン主義)も、何年もかけて混ざり合ってきた食のトレンドは言うまでもない。

世界の食を追うコラムを書くことは、やはりここ2年ほどは渡航制限もあり簡単ではなかったが、それでもロックダウンや旅行の禁止が解除されたときには、どうにかその都度各地からお届けすることができた。いつものことながら私のお気に入り、日本の動向も注視してきた。

■イノベーションを恐れない

過去には日本に対する懸念を示したこともあった。食文化の保存、日本酒消費の低迷、飲食や農業の分野を志す若い人の減少、伝統料理の衰退。一方で、ここ数年行けてはいないものの、日本の食文化について読んだり聞いたりしていると大体とても励まされるものがあるのだ。若い人たちは古き営みの価値を理解しながら、イノベーションを起こすことを恐れない。これこそまさに、あるべき姿だ。

初めて日本を訪れてから20年来、日本料理への関心が世界的に高まっていく様子を喜んでみてきたが、いまだ陰りの兆しはみられない。

日本は今も、好奇心と野心に富んだシェフにとって、働いたり修業を積んだりするのにこのうえない目的地だ。ヨーロッパやアメリカのシェフが向かう先はほとんど東京に集中しているが、新型コロナウイルスが去ったころには首都のさらに先、大阪や京都へと食の興味が深まっていくことを強く願っている。

■ハッピーな胃袋を!

個人的にどうしてもまた行きたい、もっと掘り下げたいのは四国、鹿児島、秋田に青森。あとは何より、金沢ですしの最前線を探求したい。
これは、コロナ感染拡大中に書いていた小説に登場する地域だからでもある。私にとって初めてのフィクションで、この土地で名の知れたすし職人たち(架空の人物)の話だ。

若き英国人が父親を探すためにその地をめぐるうち、すしの名家のドラマに巻き込まれていく……一般的に、人が初めて書く小説は書き手自身の願望を満たすようなものになると言われている。私の場合、それはまさにその通りなのかもしれない。

この小説がいつか日本語に翻訳され、またみなさんと日本や日本食についての会話を再開できることがありますように。それまで、まずは毎月お付き合いくださりありがとうございました。そして……ハッピーな胃袋を!(訳・菴原みなと)