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スウェーデンの田舎町で見つけた、みんながうれしい農業

マイケル・ブースの世界を食べる
北村玲奈撮影

多くの人と同じく、私も自分が食べるものや食をとりまく一連のシステムを心配している。土や水に含まれる農薬や除草剤、殺菌剤、硝酸塩。工業型農業による生物多様性の破壊。種苗会社や化学肥料メーカーは私たちが食べるもの、その育ち方を支配するほど肥大化し、巨大スーパーマーケットは法外な利益を上げている。

農家も小売業者も消費者も致命的な負のスパイラルに陥っており、食のシステムは腐敗して久しい。連鎖の先には、この星にとってもこれからを生き抜く次世代にとっても悲惨な結末が待っているのだ。

主な原因は三つある。第1に政治家。食がたどる道のりの腐敗を止める力を持っている(ずっと持っていたはずの)真に唯一の存在だ。第2に企業。土をやせさせ、作物や家畜の感染症・虫害を起こし、遺伝子組み換えの種や化学肥料、農薬、殺菌剤を売りつけるというあしき循環を永らえさせてもうけている。そして最後に私たち消費者も、責任の少なくとも一端を担っている。

これらすべての解決策を、スウェーデンの田舎町に見つけた。同国の南西部に環境再生型農業を実践しているという農場があり、車で向かった。実際にやっている人からもっと話を聞いてみたかった。

この方法がスウェーデン特有というわけではない。自分が育てる農作物やその生育環境、とりわけ土のことを気にかけるような見識ある農家がいる限り、どこでも見られるだろう。

わかったのは、カギとなるのは土だということ。工業型農業は土中の菌や養分を枯渇させてきた。そうして何十年、ヨーロッパやアメリカの一部では何世紀もかけてやせ細らされてきた土は、化学肥料を使い続けてどうにか作物が育つような、ほとんど、ちりのようなものらしい。

対照的なのが、泥炭だ。有機性が高く、事実上、腐敗した植物といえる泥炭は菌類や生物、養分に富む。炭素が含まれている点も興味深い。豊かな土ほど含まれる炭素も多い。私たちが排出している炭素を取り込むために必要なものだ。

私がどこへ向かっているか、わかりますか。あなたも同じ結論に達しましたか?

環境再生型農業は、チャンスを倍にする。食のシステムを健全に回復させながら、土に二酸化炭素を封じ込めることで炭素排出量削減に関する問題を緩和させてもいる。「ウィンウィン」というわけだ。

■まさに「ウィンウィンウィン」

この環境再生型農業、どう実践されているのか。一つには、昔ながらのやり方で家畜を放牧していること。羊、豚、牛、鶏、ヤギなどが出してくれるものが土を豊かにする。次に耕すのを控えること。農地をしょっちゅう掘り起こすと菌を殺してしまう。つまり、工業型農業が炭素の大きな排出源である現状で、高品質でオーガニック、放牧でのびのび育った肉を食べることができるというまさに「ウィンウィンウィン」なのだ。肉はより高価になるが、あくまで工場で製造される損なわれた肉と比べたらの話。まったく食べないわけにもいかないが、大量に食べないほうがいいことを思えば、本来高価であるべきだろう。

他にも多くの利点がある。植物だけでなく、動物の生物多様性も進むことだ。虫は増えるがその虫をエサとする生物も増え、互いに共生している。

こんなにうまい話があるだろうか。環境再生型農業が唱えていることは、農家にとって新たに学ぶべきことでありつつも、当たり前のことにも見える。スーパーマーケットが巨大な利益を生み出す今のシステムは、終わらせないといけない。環境再生型農業の生産量が工業型農業に匹敵するには、しばらく時間がかかる。政治家に法制化をまかせる必要が出てくる。市場の原理では動かないだろうから。

親愛なる読者のみなさん、政治家に行動を起こさせることができるかどうかは、みなさんにかかっています。(訳・菴原みなと)