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地球に優しい食とは? 世界のシェフたちがサンフランシスコで熱く語る

サンフランシスコ 美味しいフード&ライフスタイル
セールスフォースタワー62階からはサンフランシスコを一望できる。湾の向こうに見えるのはアルカトラズ島=関根絵里撮影

「フードロスを無くそう!」

「持続可能な食ビジネスで地球を守ろう!」

世界のシェフ達の切なる想いが轟いた。先日開催された「Sustainable thinking symposium」に参加した時の事。

スペインの料理学校「バスクカリナリーアカデミー」が「ガストロノミーで社会を良くする」をテーマに開催している食プロ集団による世界活動の一環だ。世界各地からミシュラン三ツ星レストランのシェフや農家、食品店主まで食の分野で持続可能な社会を牽引してきたスペシャリスト達が集結し、地球に優しい食について熱い議論が繰り広げられた。

参加者達はリラックスした雰囲気の中、プレゼンテーターの貴重な言葉に聞き入っていた=関根絵里撮影

会場となったIT トップ企業の「セールスフォース」タワーは、去年サンフランシスコで最も高いビルとなった。会場の62階は、サンフランシスコの街や遠くの山々を一望できる絶景スポット。まるで高級ホテルのロビーのように、すわり心地の良いソファやグランドピアノが配置され、地元シェフが腕によりをかけたオードブルが終日振舞われた。まさに最高の舞台だ。

終日、地元のケータリングがサービスするオーガニックな食事を堪能した
会場となったオフィスはホテルのロビーのような雰囲気=関根絵里撮影

地元の代表には、オーガニック食、地産地消文化を築いた「シェ・パニーズ」のアリス・ウォータース氏、究極のファームトゥー・テーブルダイニングでミシュラン三ツ星を獲得した「シングル・スレッド」のカイル・コナウグトン氏、世界初の女性ミシュラン三つ星オーナシェフのドミニック・クレン氏、オーガニックストア革命を起こした「Bi-Rite」のサム・モガナム氏などが参加した。

アリス・ウォータース氏は「オーガニック、ローカル、フレッシュ」 の“美味しい革命”を訴えた©Apollo Strategic Communications
2018 ワールドベストレストラン1位に輝いたマッシモ ビトゥーラ氏 「皆で美味しいものと地球の美を守るため戦おう!」と訴えかけた©Apollo Strategic Communications

世界からはメキシコ、バスク、スペイン、ブラジル、イギリス、ペルー、デンマークから食のスペシャリストが集結し、「食がどのように人と環境に貢献できるのか」のテーマで、地球に優しい食の思想や活動を熱く語った。そして日本からは、「持続可能な美食」を叫ぶ「NARISAWA」(東京・青山)のオーナーシェフ、成澤由浩氏が参加した。

成澤由浩氏。登壇者らと=関根絵里撮影

成澤シェフに聞くーー革新的「里山料理」で日本の里山の美しさをアピール

成澤流の「持続可能な美食」とは、自然豊かな日本の森と水を料理で再現する「里山料理」を指す。会議では流暢な英語で「東京はエキサイティング。でも本当に美味しい食材は田舎にある。その美しい里山の生態系を守りながら良い食材を調理するのが僕の役割。シェフの仕事は、美味しさと幸せをテーブルに運ぶ事」という言葉に会場から大歓声が上がった。

「世界ベストレストラン50」では常に上位に君臨する「Narisawa」。7月大阪で開催されたG20では、総理晩餐会で美しく表現力豊かな「里山料理」を披露し、世界の首脳達から絶賛されている。一般にミシュラン星レストランといえば、近寄りがたい「ラグジャリー」を連想してしまう人も多い。しかし、インフルエンサーとして世界に発信力を持つ成澤は、スポットライトを浴びる傍、とても謙虚で地道な活動をもう何年も続けいている。彼の哲学は、健康な森と川が生態系を守り美味しい食材を育てるというもの。「『生命が溢れる』食材を使ってこそ、体に恩恵を与え心を満たすのだと熱く語る。「食材」と「自然」を循環させる命のハーモニーなのだ。

日本代表の成澤シェフは、サステイナブルとガストロノミーを融合した料理の本質を力説した=関根絵里撮影

「NARISAWA」 の料理は、森と水に恵まれた里山を表現した「革新的里山料理」なのだという。なんとカッコ良いフレーズだろう。実は筆者は、幸運にも東京・青山の「NARISAWA」で食事をした事がある。当時は同氏のフィロソフィーも知らなかったが、「森」というコースでは、テーブルに運ばれる何品もの料理のプレートはまるで里山に足を踏み入れたかのような演出で、土や木の匂いさえするのだ。そして木の筒中には湧き水が。多くのミシュランレストランを訪れているが、「水」を一品として頂いたのは初めてだった。しかも、その水が身体中の毒を洗い流してくれるように清らかで一瞬にして体がリセットされたのを覚えている。「体に浸みる一滴」と表現するべきか、体もやはり自然を求めているのだろう。これこそ、氏が提唱する「森からのメッセージ〜持続可能な美食」。成澤の世界への誘いだ。他の料理もまるでテーブルにいながら旅をしているような味覚、プレゼンに五感が震えた。

たかが水、されど命の基盤である「ピュア」な水を守る為、氏は定期的に里山に出向き植林活動をしている。「森が健康であれば川も海も綺麗になり魚も蘇る。生態系を守る事は私たちの使命。食材調達は全て地球上にある天然のものだけを使う」と氏。イノチあるものを調理し食す氏の『命の循環』という言葉にハッとさせられた。

そう言えば私が子供頃の夏休み、蝉やトンボ、ミツバチがたくさんいて、虫や鳥達がいつも生活の中にいた。私たちは森や川で泥だらけになって遊んでいた事を思い出した。いつのまに世の中はこんなに無機質になってしまったのだろう。最近は「昆虫採集」という宿題もあまり聞かなくなった。

「NARISAWA」は、「蜂」がロゴのモチーフとなっている。去年新しくオープンしたバーはその名も「Bees Bar」。ミツバチが絶滅の危機を迎えている今、彼らこそが生態系を維持する天からの「媒介者」であるかのようなメッセージが伝わってくる。成澤は、「森を再生し、人と自然が寄り添い生きていけば、生態系が戻ってくる」と教えてくれた。

360度を展望できる最上階からの夕景。ゴールデンブリッジがシルエットとなり夕陽が沈んでいく=関根絵撮影

日没まで続いたシンポジウムは、大切な活動である「フードロス」や「ごみゼロ」を消費者に促し、世界の人々が環境意識を高める必要があると訴え、幕を閉じた。終了後、参加者達は地元産オーガニックフルーツが凝縮したカクテルを片手に、ゴールデンゲートブリッジの西に落ちていく美しい夕日を見ていた。その神々しい光のせいか、皆の顔が高揚し決起に満ちているように輝いていた。