1. HOME
  2. LifeStyle
  3. ヒップでグルメな多国籍小国家——サンフランシスコのミッション地区

ヒップでグルメな多国籍小国家——サンフランシスコのミッション地区

サンフランシスコ 美味しいフード&ライフスタイル
週末になると方々から人が集まりミッションドレレスパークはカラフルな色に染まる=写真はいずれも関根絵里撮影

サンフランシスコでここ数年、人気急上昇中のミッション地区。南北に貫くバレンシアストリートを歩くと、挽きたてのコーヒーや焼きたてのパンの香りに包まれ、つい食べ歩きをしてしまう。ここは、私のお気に入りの街でもある。

カラフルなミューラルアート(壁画)や、通り過ぎる人達のファッションからも開放的な気持ちになる。ここには、全米チェーン店やおしゃれな外観の店は一軒もない。看板もかかってないのに、入ってみるとたくさん人がいて、盛り上がっているような店が多い。外見の派手さより、「プロセス」を重視する本物志向の店が多いのだ。街を特徴づけるのは多様な文化と市民の食意識の高さが形成する社会。最先端でヒップなライフスタイルに出会える。

ミューラルアートが多いのもミッション地区の特徴
人気カフェ「フォーバレル」は廃材を利用した店つくりでローカル客に人気
2019年5月にオープンしたダンデライオン単独店舗2号店=関根絵里撮影

一昔前までこの地区はヒスパニックの低所得層が住む町だった。変化が訪れたのは2000年代。シリコンバレーのハイテク企業に勤める若いエンジニアがこの地区に住み始め、今ではアメリカ人の数がヒスパニック系の人口を抜いてしまった。

オーガニックムーブメントの先駆者 Bi-Rite

昔からの伝統を残すこの場所は、全米に広がるムーブメントの発信地でもある。その一つが、小さな食料品店、948年に創業した「Bi-Rite」だ。ムーブメントの発端は、1997年に経営を引き継いだ2代目のサムさんが食品流通のシステム改革をしたことにある。それまで卸業者に頼っていた生鮮食品の入荷を、自ら農家に出向き、生産者と消費者をつなぐ「Eat Good Food」のポリシーへと変更した。ファーマーズマーケットに行かないと手に入らないようなオーガニックでサステイナブルな農法で作られた農産物が、繁華街の店頭で買えるように。オーガニックムーブメントが一般家庭に浸透する大きなきっかけとなった。

Bi Riteのエントランスには新鮮なオーガニックフラワーが迎えてくれる。店舗は昔から変わっていない

「Bi Rite」の革新は食品流通だけに終わらなかった。シェフ出身のサムさんはこだわりの食材を仕入れ、隣接したキッチンでデリやスープ、自社ブランドの食品を作り、ケータリングまで含めた一つのサービスを作り上げた。

店では経営者の思想に共感する若者が、自分のプライドと充実感を持って働き、町にはそのビジネスを支持する人々が集まりコミュニティーを作る。ミッション地区は創造的なビジネスを生み出したい人と、環境を考慮し自分が自分らしく誇りをもって生きたい人たちが集まり、ビジネスを起こし、連鎖していく。当時このスーパーがある18thストリートにはビジネスは少なく、通りにはたった30人の雇用しかなかった。だが、グルメストリートと変貌したこの場所には店舗が増え、今では300人以上の雇用が生まれた。街は活性化している。

最近、「オーガニックアイスクリーム」大ヒット。がまたストリートを賑やかにした。

大人気のアイスクリーム店舗の拡張中、ソーラーパネルを備えた可愛いトラックが代行を勤めている

「美味しいストリート」作りのパイオニア達

空かさず周辺に新しい変化が起きる18th ストリート はグルメコミュニティーの基盤となった。続々と同じ思いを持つ若い世代の飲食店オーナーが集まって来た。ミッション地区の発展に大きく貢献したのが、同時期にオープンした人気イタリアン店Delfina(デルフィナ)とTartine Bakery(タルティーヌベーカリー)だ。両店はたちまち人気店となり、連日長い行列ができた。追随して次々と独自の発想と手法を持つカフェが増えていった。そうなるとムーブメントはもう止まらない。今度は住民の層が変化し始めた。

変貌するミッション地区の光と陰

グルメな街となれば、率先して流入してきたのが流行に敏感なミレニアル世代だ。特にシリコンバレーの大手IT企業で仕事をしている技術者たちは、オリジナルで本格的なコーヒーやカフェが大好き。たちまち住人が増え、イケてなかったバレンシアストリートの歩道は綺麗になり、新しいアパートが次々と建設されていった。

しかしユニークなのは、ヒスパニック系住人のテリトリーであるミッションストリートは、相変わらず昔ながらの街並みが残り、スペイン語しか聞こえてこない。おしゃれなアパートや洗練されたカフェが建ち並ぶ一方で、ヒスパニック文化が混在する不思議な光景だ。1ブロック違うだけで文化が変わるのもアメリカらしい。そのギャップを楽しむ人は多い。この地区にはクラブ、バーも多く、毎週末は大勢の若者達で溢れかえる。

しかし良いことばかりではない。人気の街になったミッション地区の店舗の賃料はこの数年で5倍から10倍に跳ね上がり住民の流出も。住宅の家賃の高さは言うまでもない。「OMG」!

18ストリートから始まったグルメの連鎖。若い人の指示が街を作る

多様性が炸裂「ミッションドロレスパーク」

LGBTのムーブメントが起きた「カストロ」地区との境界線にある「ミッションドロレスパーク」は民族的、社会的にも多様な文化が覗けるサンフランシスコ屈指の公園。天気が良い週末には実に様々な人たちが集まり、それぞれの時間を過ごす。更に去年からマリファナが合法になった事で、この公園を歩くたびそれらしき匂いが漂う。と言っても怖いところではない。大人が遊ぶ芝生の横には子供パークがあったり、ドッグランがあったりと開放的だ。毎年6月最後の週末には華々しく「ゲイウィーク」が開催され、その社交場所となる同公園はカラフルなゲイカラーに染まる。

毎年6月に開催される「プライドウィーク」には世界からLGBTの人達が集まり街全体がレインボーカラーになる。

多文化が炸裂するミッション地区。毎日のように新しいビジネスや流行が創出されている。多様性はフードやアート、ファッションとなり私達のライフスタイルを豊かにしている。