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新型コロナウイルスで中東でもライフスタイルに変化 政権への疑心暗鬼も

中東を丸かじり
エジプトの家庭料理

危機意識薄い人も

サウジアラビアに在住する日本人によると、街中でマスクをしているのは1割程度。あいさつの際の握手やハグといった習慣が今も多くの人によって続けられている。それでも、市民の間では危機感を抱く人も多く、消毒用のアルコールなどは売り切れ状態という。サウジ人の間ではレストランに行く機会が減り、家で過ごす時間が長くなっている。

エジプトでも学校の休校のほか、レストランやショッピングモールの営業時間を午後7時までとし、夜間に外出するのが習慣化しているエジプト人が大勢集まらないよう政府が躍起となっている。だが、若者たちは路上でたむろっているといい、危機意識は低い。シシ大統領は、政府が求める対策を履行するよう呼び掛けている。中東の独裁的、強権的な政権に対して国民は信用しておらず、新型コロナウイルスをめぐっても、実態が正しく伝えられていないのではないかと疑心暗鬼に陥る人が少なくない。

日没近くのナイル川

「衛生意識も問題だ」と、あるエジプト人は次のように訴える。「新型コロナウイルス以前の問題として、公衆トイレやストリートフード(屋台)の衛生意識の低さがある。街頭でも、職場である大学でもマスクをしている人はほとんど見かけない」。エジプトでは日頃から、飲食店の衛生状態を懸念する声が多く、改めて家庭で調理する重要性が見直されているようだ。

エジプトの首都カイロの下町

医療体制や情報不足に不安

内戦や紛争、情勢不安で外界との人の往来が極端に少ない地域もある中東では、感染確認がほぼ皆無という地域もある。内戦が続くリビアやシリアの北西部イドリブ県、イスラエルの「経済封鎖」が行われているパレスチナ自治区ガザ地区だ。

だが、ガザ地区では最近になって感染者2人が初めて確認され、人々が外出の機会を減らすなど影響も出始めている。イドリブ県でも世界保健機関(WHO)が検査機材を送った。

ガザ地区やシリアなどでは感染が広がった場合、不十分な医療体制や情報の伝達から悲惨な状況になりかねない。リビアやシリアでは、外国人の傭兵やイラン軍兵士によってウイルスが持ち込まれるのではないかとの懸念もある。政権基盤が整わない中、人々は、情報不足に不安を募らせている。

「エジプト料理はまずい」?

人々が外出を減らすと増えるのが、家庭で食事を取る機会である。料理がまずいとされるイギリスの支配を受けたエジプトは「料理が美味しくない」ともささやかれるが、エジプトでは家庭料理が美味しいといわれる。ブドウの葉でごはんや肉を包んだり、ズッキーニやナスの中身をくり抜いて具材を詰めたりする料理など準備に手間と時間のかかる料理が中東には多い。作り手の愛情なくして存在しない料理の数々だ。エジプトのレストランではお目にかかることのない庶民の料理に、日本の里芋のようなタロ芋を使ったオルアース・ワ・サル(里芋とスイスチャードの煮込み)がある。

自宅で作ったオルアース・ワ・サル

宗教と人々の生活が密接に絡み合う中東らしく、この料理も、エジプトの人口の約10%を占めるキリスト教系コプト教徒たちに、イエス・キリスト生誕祝いに絡む公現祭に際して、よく食べられている。芋を調理前に茹でる様子から洗礼の儀式を連想したようだ。

新型コロナウイルスの拡大が沈静化するまで筆者も中東への取材旅行を延期した。三重県の山奥に構えた拠点に「籠城」している。新型コロナウイルスとは無縁の地域のようだが、高齢者がほとんどの集落の人たちは、外部からウイルスが持ち込まれないよう警戒している。

近所の人に赤芽大吉という品種の里芋をいただいた。菜園に生えているカラフルなスイスチャードも使ってオルアース・ワ・サルを料理することにした。日本の里芋は粘り気が強いものが多いが、この赤芽大吉は、粘り気が少ない。茹でるとホクホクしていてエジプトのタロ芋に近い食感だ。インドネシアのスラウェシ島を発祥とするセレベス系の里芋で、芽が赤っぽいのが特徴。エジプトのタロ芋も赤っぽい。