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ロシア人はおもてなしの達人<後編> ロシアンティーの本当の飲み方は?

荻野恭子の 食と暮らし世界ぐるり旅。
ロシアンティー=竹内章雄撮影

◉保存食のおかげで、効率の良いおもてなしに

手際よくパパッと料理が仕上がるのを見ていると、夏の間に「ダーチャ」で仕込んだ保存食の素晴らしさを思います。イチから準備しなくて良いところが、肩の力が抜けた、普段着のおもてなしを可能にしているのです。保存食は様々な料理に展開されます。キャベツの漬物はさっと煮てスープにしたり、肉と一緒に煮込んだり、刻んでピロシキや餃子に入れるなど。キノコやピーマン、トマトの塩漬けを加えたり、乾燥きのこもよく登場します。

以前の回でもお話ししましたが、「ダーチャ」のある家庭の場合は、夏の間にバンカ(保存瓶)に漬けたものを、すべて北側の寒い部屋に置いています。冷蔵庫には入りきりませんし、バルコニーにおくと凍ってしまいますので。今は、冬でもスーパーに行けばあらゆる野菜が手に入りはしますが、買ってきた野菜で仕込むことは少ないようですね。

◉何も無いよりは、ジャムと紅茶でおもてなしを

ヴァレーニエ(ロシア風ジャム)を添えて飲む「ロシアンティー」も、おもてなしに欠かせません。日本の喫茶店で「ロシアンティー」を注文すると、紅茶の中に溶いて飲んでくださいと言われたり、あらかじめジャムが入っていたりします。でも本当は違うのです。

「ロシアンティー」は、「ジャムをお菓子として食べる」というのが本来の姿。ジャムが砂糖がわりの役割である部分もあるかも知れませんが、プリャニキー(糖蜜菓子)につけることもあります。実は、ロシアが貧しかった時代に、「何もないよりは、ジャムと紅茶でおもてなしを」という気持ちから根付いた究極のおもてなしなのです。素敵だと思いませんか?

ロシアンティー。ヴァレーニエはお菓子として楽しむ=2010年代、カムチャツカ、荻野恭子提供

◉料理にお酒は使わない

野生のベリー類は酸っぱくて少しほろ苦い。そのまま食べても美味しくはないので、だからこそジャムに活用しているのだと思います。保存もききますし、作っておけばいつでも食べられる。こういうことが、即座のおもてなしにもつながると思います。

ロシア風ジャム「ヴァレーニエ」はいわゆるフランス風ジャム「コンフィチュール」よりもフレッシュ感があります。ヴァレーニエはシンプルに砂糖でさっと煮ますが、コンフィチュールはお酒も加えて長時間煮詰めます。フランスもジャムに酒は入れません。ちなみに、ロシアでは、お酒は飲むもので、料理や菓子には使いません。

以前、尾山台にあるフランス菓子店「オーボンヴュータン」のオーナーである河田勝彦さんが、「ジャムはお菓子の原点なり」とおっしゃっていたのを伺って、納得してしまったことがあります。ロシアでは、まさにヴァレーニエはお菓子のベースとなるもので、氷水で割ってモールス(ジュース)にしたり、アイスクリームに添えたり、ケーキの生地に混ぜたりと様々に使われるからです。

ウラジオストクの農家の貯蔵庫に置かれたヴァレーニエやカンポート=2000年ごろ、荻野恭子撮影

◉ロシアで再認識した、普段着のおもてなし感

気楽に迎える、気取らない感覚というのは私の祖母がまさにそうでした。実家が飲食店をやっていましたので、もともとお客さんは多く、普段の料理でも、来た人にちょっと出すような感じがありました。日本人はどうしても、きちんとしなくてはという感覚が強いですが、あるがままにあるものを出す、別に大したものではなくても、人に出せるということが大切だと、ロシアをまわって気づかされたことは、私の人生にとって、とても大切なことでしたね。

→次回は、4月3日に更新予定です。

●ヴァレーニエの材料と作り方(作りやすい分量)

ヴァレーニエ(左)とカンポート(右)=竹内章雄撮影

1 ホーロー製の鍋に好みのベリー1キロ、砂糖300〜500g、レモン汁1/2個分を入れて火にかけ、アクを取りながら中火で10分ほど煮る。
2 煮沸消毒した瓶に熱いうちに入れ、蓋をして冷めるまで逆さにしておく。
※果実ならどんな種類でも作れる。砂糖は果実の30〜50%が目安。