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自給自足派のマストアイテム、それはニワトリ

マイケル・ブースの世界を食べる
photo:Kitamura Reina
photo:Kitamura Reina

このところ、私の知人たちは皆、ニワトリを飼っているらしい。パーティーでも、ネットでも、もっぱらの話題である。もうニワトリを手に入れた? 手に入れる予定はある? 家で使う分の卵があるなんて素晴らしくない? エサに何をやっている? キツネを追い払うにはどうしてる? 名前はつけてる? こうした会話が最近多いのだ。

欧米の自立心が強い気質の人たち(もしお金があまりなくて、少し若ければヒップスターと呼べそうな人たち)のあいだでは、ニワトリは今年のiPhoneかネスプレッソのコーヒーメーカーのようなマストアイテムとなっている。一方で、ほとんどの日本人にとって、養鶏はそこまで実用的でないだろうとも思う。「私たちもめんどりを手に入れて、裏庭で飼うべきよ」と、妻に提案というか宣告されたとき、私は初めかなり懐疑的だった。

私には、子どもたちも、犬もいる。多岐にわたるスポーツの試合があり、片時もテレビから目が離せない。 これ以上の責任を負うなんて、それだけは勘弁してほしかった。

しかし、ニワトリはやってきた。とにかく妻が手に入れたのだ。以前から飼っていたご近所さんがあきて、一式を売ってくれた。

ニワトリに鶏小屋、柵、よくできた給水器(物理学の法則に反しているように見える)、オーガニックのエサを数袋。ざっと計算してみると、めんどりが卵7420個を産んでもとがとれるというところか。与えよ、さらば得られん いや、そんなことはもういいのだ。原稿を書くかたわら、庭で鳴きながら、私が大切に育てているハーブをつつきまわるのが見えるのだから。

茶色、白、黒のめんどり9羽。妻には言わないでほしいが、私は今や彼女たちに恋をしているのだ。卵を産んだかどうかを1時間おきくらいに見に行かないといけないので、最近では仕事が全然片付かない。

それでも、小屋の戸を開け、わらのなかに白と茶色の宝石を見つけたときには、伝えることができないくらいワクワクする。

自分のめんどりから自分の卵を集めたり、ゴミ箱に捨てられていただろう残り物をエサとして与えたりしたときの自己満足感もまた、言葉では言い表せない。完璧な取引関係である。めんどりが喜んで食べるもの(スイカの皮が大好き!)を与えると、殻に入った食べ物を代わりに得られる。

人の家に招かれたとき、ほかの客がみなワインや花(退屈な物)を持ってくるなかで、卵が6個ほど入った箱を渡すときの気持ちはもっと自己満足的だし、スーパーの卵売り場を通りかかったときに内心悦に入ったときもそうだ。「卵代はチョコレート売り場で使わせてもらうよ。どうもありがとう」と言うかのように、所持金が入ったポケットを軽くたたく。

しかし、おそろしいくらいの量の卵があり、私たちは卵づけになる。ここのところ、メレンゲを作るのに8個分もの卵白を使ってもなんとも思わないし、ましてやわざわざ卵黄をとっておこうなどと考えもしない。

あとになって「アイスクリームに使えばよかった」と気づくくらいだ。

ちょっと待って。めんどりが外で鳴いている。

卵を産むときの鳴き声は、いつも警報のようで助かる。今朝はいくつ産んだのか、見てくることとしよう……。

やったぞ、鶏小屋からさらに4個取ってきた! もとをとるまで残る数はちょうど……。

(訳・菴原みなと)