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シリコンバレーの起業家から始まった「チョコレート革命」

サンフランシスコ 美味しいフード&ライフスタイル
ミッション地区、バレンシアストリートの中心地に位置する赤煉瓦の建物=関根絵里撮影
ミッション地区、バレンシアストリートの中心地に位置する赤煉瓦の建物=関根絵里撮影

ダンデライオン・チョコレート

2013年、個性的なレストランやカフェが並ぶ若者で人気のエリア、サンフランシスコ・ミッション地区に「スモールバッチ」(少量生産)と描かれた木製の看板が掛けられた。

ノスタルジックな赤煉瓦の建物の中に入ると床はコンクリート、天井は枠組みがむき出し。奥にはコーヒー豆の麻袋が積み上げられ、ほとんどのスペースはチョコレート工房。カフェといえば窓際に少しのテーブルが配置されているだけ。ーーでもなぜかカッコ良い。それは従業員が夢中で働く姿なのか、倉庫のような高い屋根から差し込む光からか、チョークで書いただけの黒板メニューからなのか。そこには、”ミッションスタイル”と言うべき、ミニマル(最小限)でモノづくりの原点である「本質」主義の格好良さがあった。

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店内ではワークショップやファクトリーツアーが毎日行われている=関根絵里撮影
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明るい店内とフレンドリーなスタッフ。チョコレートメニューも人気=関根絵里撮影

倉庫から始まった「シリコンバレードリーム」

創業者であるトッドとキャメロンは大学時代からの友人。2人は卒業してすぐシリコンバレーでITベンチャー企業を立ち上げ、10年後そのシステムを売却した事で若くしてマルチミリオネラーとなった。

仕事をしなくても遊んで暮らせるはずが、彼らにはパッションがあった。それがチョコレート作りだ。今までの常識だった大量工場生産の味付きチョコレートを嫌う二人は、友達の倉庫を借りて“本物のチョコレート”のワークショップを始めた。

研究を重ね試作品が出来る度にパーティを開いて友達と楽しんでいだが、「豆の香りと味がする豆ときび砂糖だけの美味しいチョコレートを世に出すべき」と友達の説得により始めたのが、のちに日本のチョコレートファンをも虜にすることになる「ダンデライオン・チョコレート」だ。“シリコンバレードリーム”を短期間で2度も成功させた二人の起業家は、ライフスタイルを取り込んだ革命的チョコレートを世界に創出しようとしている。

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各国の農家に持続可能な農法を教育し、オーガニック豆を栽培させている=関根絵里撮影
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一つ一つ手作業で豆を選別する=関根絵里撮影

「人」と「地域」を繋ぐライフスタイル型カフェ

「ダンデライオン・チョコレート」のコンセプトは「Bean to Bar 」(豆からバーまで)。限定した持続可能な農家から直送のカカオ豆を使用し、豆の選別からチョコレートバーまで一連の作業を手作りで行っている。ミッション店では客と従業員の距離が近く、モノづくりの現場を目の当たりにしながら商品に触れカフェでチョコレートドリンクやデザートが味わえる。従業員にとっては、客の反応を見ながら作業ができることでモチベーションが上がるようだ。

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昔からの製法で豆をローストしていく=関根絵里撮影
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スタッフは皆仲良くヤル気のある人ばかり=関根絵里撮影

工場見学は毎日実施され、「作る」「学ぶ」「食べる(飲む)」を共有している。ミッション地区はこのような工場と一体化させた”インダストリアルスタイル”と呼ばれるカフェの発祥地でも知られ、その自由な風潮を支持する若者が集まり街を活性化させている。新しいジェネレーションがもたらしたトレンドは、クラフト感溢れるライフスタイル型カフェだ。

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クリエイティブなメニューは「ダンデライオン」のオリジナル=関根絵里撮影
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濃厚で風味のあるチョコレートドリンクは大人気=関根絵里撮影

品質主義+持続可能は社会作り

「ダンデライオン・チョコレート」の原材料は、このカカオ豆ときび砂糖だけ。余計な甘味や添加はなく、チョコレートの種類は基本的な板チョコのみ。パッケージはインドでプリントされたリサイクル可能な紙包のワンパターン。その上に生産地と砂糖の配合、特徴を記したシールが貼ってある。

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季節によってリボンを付けた商品が並ぶ=関根絵里撮影

農家からの「シングルオリジン」(単一豆)にこだわった製法は、その国の風土や環境、気候を象徴する自然な豆の香りが特徴だ。それぞれ豆は乾燥や発酵の仕方でも個性が分かれ、一つ一つのバーにはまるでワインノートのようにその特徴が表示されている。ありがちな過剰包装やギフト包装はなく、袋さえない(サンフランシスコでは環境破壊の原因となるプラスチック素材の袋の製造は固く禁じられている)。余計なものが取っ払われると、残るものはチョコレートと働く人だけ。そのミニマルな空気感やスペースがカッコ良さに変わる。

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店内は若いエネルギーで溢れている=関根絵里撮影

「ダンデライオン」は、2年前に日本上陸を果たし、現在、京都や伊勢など4箇所に出店している。先日京都の一念坂にある「ダンデライオン」を訪れた時、古民家を改装した落ち着いた和の佇まいとミッション地区のミニマルスタイルとが美しくブレンドしていた。過剰包装文化の日本でこのシンプルな商品が受け入れられているのは驚きだった。

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日本との繋がりは深く陶器やMade in Kuramaeの商品もある=関根絵里撮影

「ダンデライオン」の人気は全米でも急速に拡大し、今秋、ミッション地区のユニークな工場地帯に巨大な「ダンデライオン」第2ファクトリー&カフェがオープンする。企業を成長させているのは、経営思想に賛同し高品質のチョコレートを支援(購買)する地域住民から。それが農家の支援と持続可能な社会作りにも繋がっている。それはきっといつか日本でも始まる「チョコレート革命」かもしれない。