そもそもプラスチックって? 海洋汚染などの問題は、リサイクルで解決できるか
原油をもとにつくられる多種多様なプラスチック。19世紀半ばに発明され、おもちゃなどに使われたセルロイドがその始まりとされ、20世紀に工業化とともに生産が本格化した。
加工しやすく丈夫、軽くて電気を通さない特性があり、素材ごとに硬さや耐熱性などはさまざま。一般的な用途だけでも100種類以上あるという。
一方で、ポイ捨てなどで容易にごみになってしまう。米国の大学の研究では、1950年以降2015年までのプラスチック生産量は累計83億トンで、63億トンが廃棄されたという。大きな魚の胃からプラスチック片が出てきたり、ウミガメにストローが突き刺さる写真が公表されたりして、衝撃を与えた。
プラスチックは細かく砕けても、自然界で微生物などの力で分解されにくいため、直径5ミリ以下の「マイクロプラスチック」となって海洋や大気に漂う量も多い。健康への影響はまだ研究途上だが、食べた魚や呼吸などを通して人体にも蓄積されることがわかっている。
プラスチックのリサイクルに火をつけたのが、英国のNGO「エレン・マッカーサー財団」だ。スイス・ダボスで開かれる「世界経済フォーラム」で2016年1月に報告書を発表。14年には原油の使途の6%がプラスチック生産だったが、現状ペースで使用が増えると50年には20%を占め、海洋中のプラスチックの重量が魚を上回る、と指摘した。使い捨てプラスチックの利用をやめ、新たな生産を減らし、繰り返し再生させるサーキュラーエコノミーの実現を訴えた。
これに国連や世界各国も反応し、対策の検討などを始めたが、先行して取り組むのがEU(欧州連合)だ。EUは19年にスプーンや皿、ストローなどの使い捨てプラスチック用品の販売を禁止する法案を可決。一昨年12月には、プラスチック容器のリサイクル率の目標を30年に55%とし、1人あたりの包装廃棄物の量を18年比で5%削減することで合意した。
EUが次に挑むのが、普通車で150~200キロあるとされる自動車部品の再生プラスチック化だ。容器包装、建材などとともにプラスチックの使用が多い分野だ。昨年12月に合意した内容は、施行後6年以内に新車部品の15%を再生プラでまかない、このうちの20%は廃車の部品からの調達と定めている。
とはいえ、プラスチックリサイクルの道は簡単ではない。日本貿易振興機構(JETRO)ブリュッセル事務所の吉沼啓介調査研究員によると、EUがたてた25年時点のリサイクル率の目標50%に対し、24年時点で達成が見込めそうな国は、加盟27カ国中8カ国。ドイツやオランダなど少数派だった。
ベルギーを拠点にプラスチック問題の政策提言をしている欧州のNGOネットワーク「リシンク・プラスチック」の代表の一人、ローズ・ニー・クレアリさん(33)は「エレン・マッカーサー財団のおかげでリサイクルの取り組みが進んだとはいえ、EUの政策は生ぬるく、企業の、実態を伴わない環境配慮(グリーンウォッシュ)も見られる。削減にはほど遠く、もっと政策を強める必要がある」と訴える。
「コカ・コーラ・ショック」。リサイクル業者の間で2024年12月、こうささやかれる事態が起きた。世界的飲料企業のコカ・コーラが「30年までにペットボトルなど容器包装の50%をリサイクル素材にする」と掲げてきた自主目標を、「35年までに35~40%」と引き下げたのだ。リサイクルを増やす方針に変わりはないものの、「需要が急速に伸びる」という業者の期待感に水を差した。
加えて、欧州では再生プラスチックのコストが高止まりする一方、新品をつくる原料の原油価格が今年初めまでは落ち着いていた。関係者は「ペットボトルだと再生樹脂の最近の取引価格は1トンあたり1700ユーロ(約31万円)で、新品は1100ユーロ」と推測する。そのため、昨年はリサイクル事業者の倒産・廃業が相次いだという。
もともとペットボトルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)という単一素材で作られており、「最もリサイクルしやすいプラスチック」というのが世界の共通認識だ。特に日本では、家庭で中身もすすいで新品同様にして分別する習慣があるため、再生の手間やコストも抑えられる。
日本のペットボトルは「リサイクルの優等生」と呼ばれる。PETボトルリサイクル推進協議会によると、国内の年間消費量は250億本以上だが、近年は使用済みボトルを破砕、洗浄して樹脂にし、ボトルに戻す「水平リサイクル」の割合が急増。おかげでリサイクル率は24年度で85.1%に上り、欧州の42.7%、米国の19.6%(ともに21年)と比べてかなり高い。
ペットボトル以外のプラスチックごみは処理コストが高く、容器包装リサイクル法のもと、引き取って再商品化するリサイクル事業者側が金銭的な補塡(ほてん)を受けることができる。一方、使用済みペットボトルは回収場所や汚れ具合にもよるが、多くはリサイクル側が原料として手に入れたい「商品」。それが、高いリサイクル率の背景にある。
日本の各飲料メーカーも自主目標を掲げ、全国清涼飲料連合会は18年、「30年までに、使用するペットボトルの半分に再生ペットを活用する」と宣言した。需要の高まりを受け一時は飲料メーカーが、ごみを収集する地方自治体と直接契約して使用済みペットボトルを買い取る「争奪戦」の様相も呈した。しかし、コカ・コーラ・ショック後は「それも沈静化しつつある」と、国内のリサイクル事業者は打ち明ける。