【地球をつまみ食い】絶品クロワッサンが「人助け」に? 毎日2000個売れるパン工房の素敵な秘密
この記事は、朝日新聞(デジタル版)の連載「地球を食べる」で2021年2月25日に配信された記事を再構成してお届けしています。本編記事はこちらから
1, シドニーっ子をうならせる本格派
この工房「ブレッド・アンド・バター・プロジェクト」の商品は、パン好きなシドニーの人たちを楽しませるクオリティが売りだ。香ばしいライ麦パンや、何層にも生地が重なるデニッシュなど、トレーには焼きたてが並ぶ。熟練職人の指導のもと、難民出身の研修生たちが生地のカットから焼き上げまでを担い、プロの味を生み出している。
2, 才能開花! ミャンマー出身マドゥさんのクロワッサン
研修生の中には、パン作り未経験から才能を開花させる人もいる。ミャンマーから逃れてきたマドゥさん(62)は、研修後に工房で雇用された。クロワッサンの生地を三角形に切り、美しく巻き上げる作業は職人芸。「本当にきれいに巻けたね」とプロに褒められるのが何よりの喜びだという。
3, 「食べる」ことが支援になる仕組み
美味しいパンを売った利益が研修費用に回る仕組みだ。研修生は「学費」を払う必要がなく、逆に労働時間に応じた給料をもらえる。さらに週1回の英語レッスンや、州政府の職業カレッジへの通学も無料で、食品か工業界で働くときに必要な修了証とることができる。シドニーの人たちがここのパンを食べることで、誰かの人生を再建する手助けができるサイクルがここにある。
4, 野菜も育てる! 広がる「おいしい支援」の輪
パンだけでなく、野菜作りでも同様の取り組みがある。シドニーの南にある無農薬農園では難民出身者たちを受け入れ、73種類もの野菜や果物、養豚などを手がける。採れたての甘いプチトマトや卵、豚肉はオンラインで販売され、地域住民の食卓を潤している。言葉の壁などで就職が難しい人々に、農業を通じて働く喜びと自信を取り戻してもらっている。
看板商品のサワードーを一口かじると、酸味と香ばしさがじわりと口に広がる。シンプルだが力強い味だ。パン作りの経験がなかった彼らが、異国の地で懸命に技術を身につけ、この味を出すまでの努力を思うと、美味しさがさらに胸に沁みる。「エシカル(倫理的)な消費」を味覚で実感できる貴重な体験だった。