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【地球をつまみ食い】絶品クロワッサンが「人助け」に? 毎日2000個売れるパン工房の素敵な秘密

地球をつまみ食い 更新日: 公開日:
焼きたてのライ麦パン「サワードー」を見せるジャン・ロバートさん(左から2人目)、マドゥさん(同3人目)ら=2021年2月3日、シドニー、小暮哲夫撮影
焼きたてのライ麦パン「サワードー」を見せるジャン・ロバートさん(左から2人目)、マドゥさん(同3人目)ら=2021年2月3日、シドニー、小暮哲夫撮影

工房に漂う香ばしい小麦の香り。噛むほどに味が広がるサワードーや、サクサクのクロワッサン。シドニーのスーパーやカフェで人気のこのパン、実は難民出身の人たちが焼いている。美味しさと社会貢献を両立させたベーカリーに潜入した。

この記事は、朝日新聞(デジタル版)の連載「地球を食べる」で2021年2月25日に配信された記事を再構成してお届けしています。本編記事はこちらから

「社会課題に取り組むパン工房」のポイント4つ

  1.   熟練の職人が指導するため味は本格派で、毎日2千個を焼く。堅めのライ麦パン「サワードー」はかむほどに旨みが出る絶品だった
  2.   難民として豪州に来た人たちを受け入れ、半年間でパン作りの技術だけでなく、英語や現地の労働ルールまで学べる「学校」のような機能を持つ
  3.   研修生たちは給料をもらいながら学び、終了後は全員がベーカリーや飲食店に就職。母国での資格が使えず就職難に苦しむ難民たちに、新たな「プロ」への道を開く
  4.  人気ベーカリーの創業者が、旅先のタイでミャンマー難民たちにパン作りを教えた経験から設立。売り上げを難民支援に充てる「ソーシャルビジネス」として運営している

もっと知りたい

1, シドニーっ子をうならせる本格派

この工房「ブレッド・アンド・バター・プロジェクト」の商品は、パン好きなシドニーの人たちを楽しませるクオリティが売りだ。香ばしいライ麦パンや、何層にも生地が重なるデニッシュなど、トレーには焼きたてが並ぶ。熟練職人の指導のもと、難民出身の研修生たちが生地のカットから焼き上げまでを担い、プロの味を生み出している。

2,  才能開花! ミャンマー出身マドゥさんのクロワッサン

研修生の中には、パン作り未経験から才能を開花させる人もいる。ミャンマーから逃れてきたマドゥさん(62)は、研修後に工房で雇用された。クロワッサンの生地を三角形に切り、美しく巻き上げる作業は職人芸。「本当にきれいに巻けたね」とプロに褒められるのが何よりの喜びだという。

3, 「食べる」ことが支援になる仕組み

美味しいパンを売った利益が研修費用に回る仕組みだ。研修生は「学費」を払う必要がなく、逆に労働時間に応じた給料をもらえる。さらに週1回の英語レッスンや、州政府の職業カレッジへの通学も無料で、食品か工業界で働くときに必要な修了証とることができる。シドニーの人たちがここのパンを食べることで、誰かの人生を再建する手助けができるサイクルがここにある。

4, 野菜も育てる! 広がる「おいしい支援」の輪

パンだけでなく、野菜作りでも同様の取り組みがある。シドニーの南にある無農薬農園では難民出身者たちを受け入れ、73種類もの野菜や果物、養豚などを手がける。採れたての甘いプチトマトや卵、豚肉はオンラインで販売され、地域住民の食卓を潤している。言葉の壁などで就職が難しい人々に、農業を通じて働く喜びと自信を取り戻してもらっている。

記者の食レポ

看板商品のサワードーを一口かじると、酸味と香ばしさがじわりと口に広がる。シンプルだが力強い味だ。パン作りの経験がなかった彼らが、異国の地で懸命に技術を身につけ、この味を出すまでの努力を思うと、美味しさがさらに胸に沁みる。「エシカル(倫理的)な消費」を味覚で実感できる貴重な体験だった。