【地球をつまみ食い】寿司とスパイス肉に出会うカフェ 「エチオピア風パニーニ」は嫉妬するほど美味だった
この記事は、朝日新聞(デジタル版)の連載「地球を食べる」で2021年8月2日に配信された記事を再構成してお届けしています。本編記事はこちらから
1, 「寿司」と「エチオピア風」が半々
ワシントン北部の住宅街にある「Mita Cafe」は、2020年11月にオープンした小さなカフェ。ここではエチオピア風パニーニと本格的な寿司という、通常ではありえない組み合わせが楽しめる。調理場はパニーニを作る妻のエリアと、すしを握る夫のエリアにはっきりと分かれており、背後の黒板メニューにもサンドイッチと寿司が並ぶ。この斬新さは、多くの人種が暮らす米国ならではの光景として、地元メディアでも話題になっている。
2, 大使公邸シェフがエチオピアで出会った妻
店を営むのは、茨城県出身の井上毅彦(たけひこ)さんとエチオピア人の妻ミスラック・ゲブレヒウォットさん。井上さんは約20年間、エチオピアやウガンダなどの日本大使公邸で料理人を務め、外務大臣表彰も受けた実力派だ。エチオピア勤務時代に妻と出会い結婚。その後、妻が先に渡米し、井上さんも合流して開店に至った。店名はミスラックさんの「Mi」と毅彦さんの「ta」を組み合わせたもの。母国ではない米国を選んだのは、ワシントンに数十万人規模のエチオピアコミュニティーがあるからだ。
3, 絶品パニーニ「ABAYI」の秘密
看板メニューのパニーニ「ABAYI」は、エチオピアの伝統料理「クトフォー」を挟んだもの。生の牛肉を細かく刻み、唐辛子やターメリックなどのスパイスと混ぜ合わせる。さらに「ニッター・ケベ」と呼ばれる香辛料入りのバターでさっと火を通し、半生状態で提供するのが味の決め手だ。サクサクのパンからスパイスと肉の香りが立ち上り、一口食べればその本格的な味わいに驚かされる。
4, コロナ禍での挑戦と将来の夢
開店準備中にコロナ禍に見舞われたが、テイクアウト需要を取り込み客足は増加した。ガスが引けない、アルコールが出せないといった制約の中で、サンドイッチと寿司、そしてエチオピアコーヒーなどを提供するスタイルを確立。井上さんは、妻の料理センスに「すしがかすんでしまう」と嫉妬するほどだ。二人の夢は、ライセンスを取得して、日本の居酒屋料理とインジェラなどのエチオピア料理が両方楽しめる店を開くことだ。
パニーニ「ABAYI」にかぶりつくと、スパイス香る半生の牛肉が口の中でとろける! アフリカへの特派員だった時に現地で食べた本場の味そのもので、上品な辛さが後を引く。その後に食べたすしもさすがのクオリティだが、このパニーニのインパクトは強烈。井上さんがミスラックさんの料理を称えるのも納得のおいしさだった。