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「バイデン大統領は大丈夫」高齢批判を一蹴する68歳の医師、四つの老化防止法を実践中

World Now 更新日: 公開日:
2020年のワールドシリーズを制覇したアメリカ・メジャーリーグのドジャース選手らの表敬訪問を受け、ユニフォームをプレゼントされたバイデン大統領
2020年のワールドシリーズを制覇したアメリカ・メジャーリーグのドジャース選手らの表敬訪問を受け、ユニフォームをプレゼントされたバイデン大統領=2021年6月、ホワイトハウス、Pool/ABACA via Reuters Connect

――2020年の米大統領選の際に、大統領候補2人の年齢について包括的な調査をされました。バイデン氏とトランプ氏の年齢についてそのような調査をした理由を教えてください。

出生証明書にもとづく私たちの暦年、パスポートに書かれている年齢は、私たちの「生物学的な年齢」とは異なるというとても重要な議論をしたかったのです。

おそらく、あなたの友人やご両親の知人などには、早く老いる人も、ゆっくりと老いる人もいるはずです。年齢はそれ自体に意味はないのです。

当時、バイデン、トランプ両氏に関する医療データを大量に入手できたことも、調査に取り組んだ理由です。ただ、今回はバイデン氏の医療記録は十分にある一方で、トランプ氏のデータはほぼないため、調査はしませんでした。

――2020年の調査では、バイデン氏が85歳まで生き延びる確率は66%でした。バイデン氏が11月に再選を果たし、2期目を終えると、86歳になります。バイデン氏の年齢について心配はありませんか?

米国の男性の平均寿命は76歳ですが、バイデン、トランプ両氏はその年齢をすでに過ぎています。彼らが生き延びる可能性が、今後、減っていくのはたしかです。

――平均余命を長くするための要因について、より詳しく説明してください。

主に二つあります。一つは年を重ねるには、死に至るような病気にかかってはいけない、ということ。ガンや心臓発作にならず、高齢に至るということです。それには、薬や治療が必要になります。

もう一つは健康を最大化する、ということ。そのために、だれでも毎日できることが四つあります。一つは運動。バイデン氏も毎日、運動しているはずです。有酸素運動や筋肉トレーニングはもちろん、ただ、体を動かすだけでもいい。スマホなどの万歩計を持っているなら、1日1万歩歩く、ということを確実にできる。

二つ目は食事。最も重要なのは、痩せていること、太りすぎや肥満にならないことです。バイデン氏が肥満でないことは明らかです。トランプ氏も痩せたようには見えますが、映像からは、よい形で体重を減らしたのかは判断できません。

三つ目は睡眠。睡眠の様子を確認する方法の 一つは、日中に昼寝をしたか、会議で眠りに落ちたかです。バイデン、トランプ両氏とも、日中に眠りに落ちたり、エネルギーを失ったりするのを私は見たことがありません。

四つ目は、社会的なつながりです。バイデン、トランプ両氏とも、社会的に活発で、いつも周りに人がいる。それは彼らの老化を遅らせている。

もちろん、ストレスはあるでしょうが、ストレスは二つの方向に作用します。体に良いストレスの例としては、ジョギングが挙げられる。ジョギングは体に多くのダメージを与えますが、老化に対処する準備になります。つまり、ある程度のストレスは、次のストレスに対処する能力を高めるのです。

休暇中、ゴルフを楽しむアメリカのバイデン大統領
休暇中、ゴルフを楽しむアメリカのバイデン大統領=2022年12月、米領バージン諸島、ロイター

――バイデン氏は、日々多くのストレスにさらされていると思いますが、そのいくつかが彼を強くしているのですね。

バイデン氏の認知能力に不安を抱いている人がいます。人の名前を思い出せないことと、認知能力を結びつけようとする人もいる。

ただ、これは加齢による自然なことで、認知症とは関係ありません。バイデン氏の言い間違いは、元々、吃音であることと関係していますが、認知症とは無関係です。

――前回の調査から4年を経たいまも、バイデン氏は「スーパーエイジャー(超高齢者)だと思いますか?

年齢の割にはすごくよくやっている。大丈夫です。バイデン氏が備えるかけがえのないものの一つが「知恵」です。知恵は時間とともに蓄積されます。バイデン政権の強みは「知恵」があることだと思います。とても若くても、知恵を持たなければ、すべてを台無しにしてしまうでしょう。

バイデン、トランプ両氏とも、どのような知恵を蓄えてきたか、という議論ができる。オバマ元大統領、クリントン元大統領も若くて優れた大統領だったと思いますが、若い新人ならではの過ちもありました。

――長寿の要因を探る研究はとても興味深く、多くの日本人の関心をひくと思いますが、そもそも、こうした研究の大きな目標はどこにあるのでしょう。

日本の平均寿命は世界一です。それは常に遺伝的要素と環境の組み合わせが可能にしています。日本には100歳という人がたくさんいるので、遺伝学的な見方もできますが、ほとんどの人は100歳にはなれません。100歳になるには、環境だけでは足りないと思います。

1998年に研究を始めたときに気づいたのですが、当時、100歳に達した人は、同じ年に生まれた人たちの平均寿命の2倍以上を生きたことになる。1898年生まれの人の平均寿命は40歳~50歳でした。1万人に1人でとても珍しかった彼らには私たちが理解すべきいくつかの秘密がありました。

大事なのは、彼らが長生きするだけでなく、人生の終わりのほとんど、病気で過ごす時間がない点です。生きて、生きて、生きて、そして死ぬ。100歳まで生きた人の30%は、薬を服用していません。CDC(米疾病対策センター)の調査では、100歳以上で亡くなった人の最後の2年間の医療費は、70歳で亡くなった人の3分の1だったそうです。

長寿が社会にもたらす「配当」も大きい。ロンドン・ビジネススクールのアンドリュー・スコット教授らは、健康な高齢者は旅行をしたり、買い物をしたり、家族のために物を買ったりして、経済的な貢献度がはるかに大きくなります。高齢者が健康に過ごせる期間を長くできたら、医療費も大幅に節約できます。

メジャーリーグの開幕を祝い、ホワイトハウスでキャッチボールをするドナルド・トランプ大統領
メジャーリーグの開幕を祝い、ホワイトハウス(アメリカ大統領官邸)でキャッチボールをするドナルド・トランプ大統領(当時)=2020年7月、Gripas Yuri/ABACA via Reuters Connect

――日本の状況をどう見ていますか?

高齢化が急速に進んでいますが、その状況に介入することはできます。人々を、今よりも、はるかに長い期間、健康に過ごさせることは可能なのです。病気の治療ではなく、健康管理により多くの時間を費やさなければなりません。老化を遅らせると、心臓発作、ガン、認知症といった病気は減るのです。

――1998年に長寿化研究のプロジェクトを始め、25年以上もこのテーマに取り組んできました。時代とともに、この社会における高齢化への認識やエイジズム(年齢差別)は変わりましたか?

エイジズムは変わっていません。しかし、老化に対して何かできるはずだという認識は広がっています。

ただ、「年齢は年齢であり、あなたは老化について何もしなくてよい」という考え方も根強くあります。「老化防止」のために何かをすることは、高齢をありのままに受け入れない考え方や、エイジズムに通じると信じている人もいます。

老化をそのまま受け入れる必要はありません。「何とかなる手が打てるはずだ」と考えていい。そして、エイジズムと科学がぶつかり合うのは面白いことです。

米食品医薬品局(FDA)は老化を病気と呼びたがらない。しかし、FDAは、心血管疾患、ガン、認知症、死亡率などの加齢性疾患のクラスター予防に関連する薬を承認しています。

――老化防止に何をしていますか。

私には秘密があります。

運動と睡眠のほかにやっていることが二つ。一つは、メトホルミンという薬の服用です。さまざまな加齢性疾患を遅らせる薬の一つです。

二つ目は断続的な断食です。私は毎日少なくとも16時間は断食します。夜の8時に夕食を食べ終わったら、翌日の正午までは、ブラックコーヒー以外は何も口にしません。

1日のうち8時間の間にだけ食事をするのです。おかげで体調が良くなりました。ただただ驚くばかりです。体重は少し減りましたが、集中力が増し、体力がつきました。

すべての人に当てはまるわけではありません。たとえば、女性は断続的な断食でも体重が減らないようです。この二つが、老化を予防に私が行っている主なことです。私がどのように改善したか、実年齢よりもどれだけ若いかを示す客観的なデータもあります。