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半数超が眠りの悩みを抱える高齢者 克服のカギは

ニューヨークタイムズ 世界の話題
Chronic insomnia is linked to an increased risk of developing hypertension, Type 2 diabetes, heart attack, depression, anxiety and premature death. (Gracia Lam/The New York Times) -- NO SALES; FOR EDITORIAL USE ONLY WITH NYT STORY SCI BRODY HEALTH BY JANE BRODY FOR JUNE 11, 2019. ALL OTHER USE PROHIBITED. --
慢性的な不眠症は高血圧や2型糖尿病、心臓発作、うつ、若死になどのリスクを高める可能性がある=Gracia Lam/©2019 The New York Times

どうでした? 昨夜はよく眠れましたか。もしあなたが65歳以上だとしたら、同年齢の多くの人たちよりも快眠だったことを望みますが――。

米国立老化研究所(NIA)が65歳以上のアメリカ人9千人余りについて調査したところ、半数以上の人が眠りに就くことや睡眠の持続に問題を抱えていると答えた。時間的にたっぷり眠れたと思っている人たちの多くも、起床した際に休息がとれたとは感じていなかった。

高齢者の5%から10%が慢性的な不眠症だが、それは単なる疲弊以上のものがある。高血圧や2型糖尿病、心臓発作、うつ、不安、若死にのリスクの増加とも関連しているのだ。

それは認知症、とりわけアルツハイマー型認知症の危険因子でもあるかもしれない。

ペンシルベニア州立大学医学部の研究者たちが1700人余りの男女を長年にわたって追跡調査した研究によると、高血圧の発症リスクは、睡眠時間が5時間未満だと5倍に高まり、5時間から6時間の人でも3倍半になることがわかった。ただ、いつも6時間以上眠る人の場合はリスクの増加はみられなかった。同様に、糖尿病の発症リスクも睡眠時間が最も短い人は3倍に増え、5時間から6時間の人は2倍高かった。

不眠症の人は、物事に集中できなかったり、記憶力に問題があったりするとの不満をもらすことがよくある。このエビデンス(科学的根拠)には一貫性がないが、前出のペンシルベニア州立大学の研究だと、不眠症の人は物事の処理速度や注意の切り替え、視覚的記憶のテストの成績が良くない傾向が強まる。また、ほとんどの研究が、不眠症は認識能力を低下させ、軽度認知障害や認知症の危険因子になる可能性があることを示している。

高齢者は睡眠不足や睡眠中断の問題を抱える割合が高いが、その理由の多くには睡眠を妨げる痛みや精神的な苦痛を引き起こす慢性的な健康問題、夜間頻尿、時を選ばず持ち上がる介護問題などがある。ひとたび朝早く目が覚めてしまうと、多くの人はもう一度眠りに就くのが難しくなる。

こうしたことの多くは根底に、体がストレスにどう反応するかという問題がある。ストレスは、覚醒や不眠を引き起こすことで知られるコルチゾールのような物質の分泌を促し、健康な中年の人たちはそうした刺激ホルモンによる睡眠障害の影響をより受けやすい。なぜ高齢者は不眠症になる可能性が高いのかを、これで説明できるかもしれない。医学博士のアレクサンドロス・H・ブゴンツァスとフリオ・フェルナンデス=メンドサは、米国の精神医学誌「Current Psychiatry Reports(カレント・サイカイアトリー・リポート)」でそう指摘した。

さらに2人は、こう付け加えた。不眠症の人は誰もが睡眠中にある程度の皮質覚醒の増加を経験し、それはとても多くの人たちが何時間眠ろうとも休息感や回復感を得られないと不満をもらす理由の説明になるかもしれないというのだ。

しかし、ミズーリ州スプリングフィールドの高齢者専門医ナビルー・S・カメルとセントルイス大学健康科学センターの同専門医ジュリー・K・ガマックは、睡眠障害は通常の老化の一部ではないと言っている。睡眠の必要量は、人によって違ってくる。つまり、高齢者に必要な睡眠の量についての「基準」はない。むしろ、どれだけ眠ったかによって、どのように感じ、どれだけうまく機能するかに基づくものなのである。

高齢者のほぼすべてに影響を与え得る要因には、加齢に伴う睡眠パターンや概日リズム(訳注=体内時計)の生物学的な変化がある。ジョンズホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生学部の睡眠学者アダム・P・スピラらの報告によると、深い眠りと夢をみているレム睡眠の時間は中年期から自然と減っていき、いわゆる睡眠効率――寝床での睡眠に費やされる時間の割合――は60歳を過ぎても減少し続ける。

加齢とともに概日リズムの位相前進という変化が自然に起こり、それが以前よりも早く眠気を感じ、早く起床する原因になる。カフェインを飲んだり、午睡をしたりして就寝時間を遅らせることができるかもしれないが、就寝時に眠りに入りにくかったり、起床時間まで眠り続けることが困難であったりしても、驚く必要はない。

「多くの人にとって20分程度の昼寝は役に立つが、夜間の睡眠トラブルを抱えている人にはいいことではないかもしれない」とスピラは言う。

睡眠不足を引き起こす可能性がある要因の多くは、加齢に伴う睡眠構造の変化への適応法を理解することや睡眠を妨げる行動を修正することによって容易に対応できるし、完全に排除することもおおいに可能だ。

良質な睡眠衛生を実践することから始めてみよう。カフェイン、たばこ、刺激物、そして特にアルコールを避けるか、最小限に抑えること。ワイン1杯は、より早く眠りに入るのを助けるかもしれないが、往々にして睡眠の質や持続時間を混乱させてしまう。

できれば屋外で、定期的に運動をする。ただし、就寝時間近くの運動は避けること。昼間あるいは夕方、自然光に身体をさらすと、就寝時に眠気を促すよう体内時計を調整するのに役立つ。就寝前にはドカ食いをしない。おなかがすいているなら、軽い食べもの、例えばバナナ、コップ1杯の温かい牛乳、または全粒穀物クラッカーが眠りに就くのを後押ししてくれる。

明かりを消す前に本を読むのはいいが、米国立睡眠財団(NSF)は就寝時に電子書籍リーダー(例えばAmazon Kindle)やスマホ、タブレット、パソコン、さらにはテレビなどの青い光にさらされないようにと警告している。青色光には覚醒作用があり、自然な睡眠ホルモンのメラトニンの分泌を抑え、眠りに入るのを遅らせてしまうからだ。代わりに、ランプライト(灯光)にするか、青色光を使っていないKindle Paperwhiteのような機器で読書をすること。

ベッドの脇に用紙とペンを置いておき、寝る前に奇抜な考えや忘れてはいけない大事なことが頭に浮かんだらメモを書き、脳は朝まで休ませること。

自ら招く問題で、おそらく最も一般的なのが心配をすることだ。状況を大げさに捉え、特に十分な睡眠がとれない事態の影響を心配することで、それが「ゆったりと眠る能力にあらがって、さらなる覚醒を招いてしまうのだ」とスピラは指摘する。

すでに起こってしまったことや、後日に何が起きるのかを思い悩むのは、良質な睡眠に逆効果でしかない。ストレスは覚醒と不眠を引き起こす脳の領域を目覚めさせる。1930年代の歌にある「悩みなんて戸口に放り出し、日の当たる通りの方に足を向けよう」というアドバイスを試してみてはいかがだろうか。心配事を締め出すリラックスした考えで頭を満たすよう心掛けるのだ。(抄訳)

(Jane E. Brody)©2019 The New York Times

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