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「毎朝4時起き」は成功者へのカギか、体をこわすカギか

ニューヨークタイムズ 世界の話題
The illustration shows 6-year old Amy sleeping in her bed next to her cuddly toy in Sieversdorf, Germany, 28 March 2013. Photo by: Patrick Pleul/picture-alliance/dpa/AP Images
成功者になるためにはどのように眠るのがよいのか。様々な研究が示されている(写真は本文とは関係ありません)=picture-alliance/dpa/AP Images

アップルの最高経営責任者(CEO)ティム・クックは毎日午前4時少し前に起床する。米大統領トランプは2004年の著書で、ひと晩に4時間眠れば十分だと書いている。ヴァージン・アメリカ社の元CEO、デイビッド・カッシュは朝4時15分に目覚めると言っていた。ジェニファー・アニストン(俳優)は瞑想(めいそう)するために朝4時半ごろ起き、クリス・ジェンナー(タレント)もそうしている。同じころミシェル・オバマ(前大統領夫人)はジムに出かける。

最近、スティーブ・ハーベイ(コメディアン)は「カネ持ちは1日8時間も眠ったりはしない」と公言した。

それは、生産性を高めるために自身の体を酷使する著名な成功者たちにならって成功をつかむカギなのか?

資本主義というのは、少なくとも名誉の印として、早起きを好むが、成功する人の睡眠時間が短いことを示すデータはない。

アメリカ人の睡眠時間は平均7時間未満。これはつまり、アメリカ人の多くの睡眠時間は、米国睡眠医学会(AASM)が推奨する時間よりも短いということだ。

「この傾向は、最近のハイテク企業のCEOたちよりも、かなり昔にさかのぼる」と神経内科医でAASM会長のダグラス・B・カーシュは指摘する。そして、こう続けた。「トーマス・エジソンは常々、同じことを言っていた。(睡眠時間は)4時間で十分だと。ただし、その発言からは、彼がかなり頻繁に昼寝もしていたという事実が抜け落ちている」

カーシュが言うには、芸能人や起業家たちが喧伝(けんでん)する早起きには深刻な問題がある。ある人の場合は他の人より睡眠時間が短くてもいいのかもしれないが、体内時計をもてあそぶことはできないのだ。

<十分に睡眠をとらなかったら、どうなるのか?>

ペンシルベニア大学とハーバード大学医学部の学者たちによる2003年の研究で、認知課題に対する反応時間やパフォーマンスは睡眠が4時間や6時間だと急落することがわかった。

この研究では、21歳から38歳までの健康な人たち48人は睡眠が慢性的に制限されていた。1日6時間未満しか眠らなかった人は「最大2晩分の睡眠不足に相当する認知能力障害を引き起こした」。

シカゴ大学の研究者たちは1999年、睡眠時間が6日間連続でわずか4時間のグループ――非常に早起きな人たちには一般的な睡眠時間――をモニターした。このグループの人たちは、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌がすぐに高水準に達し、血圧が上がり、インフルエンザワクチンに対する抗体を通常の半分しかつくり出さなかった。

ハーバード大学医学部の睡眠医学教授チャールズ・A・ツァイスラーは、早起きのことを「パフォーマンス・キラー(performance killer=能力殺し)」と呼んでいる。なぜなら、いつも4時間しか睡眠をとらないのは24時間覚醒していることによる精神的機能障害に相当するからだと彼は言っている。

<8時間眠って朝4時に起床する場合でも、まだそうした問題に直面するのか?>

多分、そうだ。多くの睡眠専門家によれば、どれだけ眠るとしても、「オオカミの時間」(訳注=睡眠が深い未明の時間)に目覚めるような回路になっていなければ、そして私たちの多くはそうなっていないから、正常なリズムが乱れると害をおよぼす。

ほんの数分間、睡眠が短くなる――たとえば、30分早く起きる――としても、それはたいしたことではないと思うなら、考え直すべきだ。この3月、南フロリダ大学とペンシルベニア州立大学の研究者たちは、睡眠時間が16分間短くなると仕事の成績に深刻な悪影響が出る可能性があると報告した。

体内時計が遅れたり早まったりすると、十分な睡眠をとらないのと同様の結果を招くことがある。これは、睡眠・覚醒相前進障害(訳注=望ましい時刻より前に自然に目が覚めてしまうこと)として知られる現象だ。

「概日リズム(訳注=生物に本来備わっている生理現象。一般的に体内時計とも言う)は、睡眠ホルモンのメラトニンをいつ分泌するかを脳に伝達するが、まだ脳がメラトニンを出し続けているのに起床すれば、昼間、過度の眠気を感じたり、エネルギーが低下し、気分が悪くなったり、認識力が衰えたりする可能性がある」。シカゴ大学睡眠障害センターの行動睡眠医学専門家リサ・メダリーは、そう言っている。

<さほど眠る必要を感じない人の場合は、どうか?>

「平均的な人と比べて睡眠時間が短くても、適切に機能できる人が少しはいる。だが、そういう人はとても珍しい」とメダリーは指摘する。

きのうは2時間、きょうは1時間といった具合に睡眠時間が減り、週末にかけて眠るパターンが極端に変化したりすると、それは慢性的な睡眠不足への導入口になる。疲労や過敏症および総体的な精神錯乱が、そうした睡眠不足がもたらす危険性や症状だ。

しかし、スケジュールを調整することは可能かもしれない。「早起きではない人が朝型になりたいなら、週末も含めて毎朝5時に起床し、すぐに明るい陽光、理想的には青色光に15分から20分間、身体をさらす必要がある」とメダリーは言う。

でも、そこに問題がある。そうした新しいスケジュールは守られなければならない。さもなければ「ウサギの穴」(訳注=予測できない不思議な世界のこと)へと吸い込まれてしまうだろう。

<睡眠の効用>

眠ることで免疫力が高められる。2015年に出た研究によると、より短い睡眠時間と風邪をひくリスクの増加には関連性があることが判明した。

睡眠は体重増にも関係があるらしい。睡眠時間が1日7時間未満になると、体重が増える可能性がある。睡眠障害はエネルギーの摂取や消費に悪影響をおよぼすからだ。満腹感をもたらす化学物質のレプチンが減り、その一方で飢餓ホルモンのグレリンが増すことにその一因がある。

シカゴ大学の睡眠・代謝・健康センター所長イブ・バン・コーターら同大教授たちは2008年、睡眠不足と肥満や糖尿病のリスクの増加との関連性をみつけた。その10年後、同大は研究をさらに進展させ、慢性的な睡眠不足が血中の遊離脂肪酸の量を増やす可能性があることを突きとめた。それが代謝異常で、血糖値を調整するインスリンの分泌を促す身体能力を低下させてしまう。

さらに、睡眠と気分にも関係がある。睡眠時間が少ないと、気分も悪くなる。睡眠問題を抱える人は抑うつ症や不安のリスクが高いかもしれないが、そうした障害が睡眠を妨げる可能性もある。

<もっと眠るためのヒント>

米国立睡眠財団(NSF)は睡眠スケジュールを順守することを推奨している。すぐにはできないかもしれない。(眠りの)借金をつくり、払い戻さなければならない。しかし、それには数週間ないし数カ月しかかからないだろう。

開始への一つの方法はこうだ。まず、目標とする規則的な就寝時間を設定する。そして、寝室を整え、快適で暗く、眠りやすいエリアにする。遮光カーテンをつけるのもいいし、安眠マスクや耳栓を使ってもいい。

運動は快眠を促す。就寝前にドカ食いやアルコールは避ける。そして、身体を目覚めさせることが自然の概日リズムを取り戻すカギになる。

寝る前の読書、たとえばビル・ゲイツやアリアナ・ハフィントン(作家でリベラル系ニュースサイトの創業者)が推薦するような本を読んで気持ちをリラックスさせる。携帯電話は使わないこと。携帯電話のスイッチを切るか、他の部屋に朝まで置いておくのがいい。

「私たちは睡眠を、資産としてではなく生産性やパフォーマンスの邪魔ものとみなす傾向がある」とテリー・クラールは言う。公認看護師で、このトピックに関する本の共著者でもある睡眠専門家だ。そしてクラールは、こう述べている。「(ここで伝えるべき)メッセージは、十分な睡眠をとることについてであるべきだ。私たちの多くは、たっぷり眠ることを労働倫理や意欲を欠いているとみなしてしまう。ノドの渇きといった生物学的なニーズに関してはそうではないのに、どうして睡眠についてはそのように考えてしまうのか」(抄訳)

(Adam Popescu)©2019 The New York Times

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