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学生諸君注目!  睡眠問題を甘くみるな

ニューヨークタイムズ 世界の話題
Gracia Lam for The New York Times/©2018 The New York Times
Gracia Lam for The New York Times/©2018 The New York Times

これから大学生になろうとしている皆さん、注目してほしい。

学生生活をうまく送るには何が必要かを考える時、最も大切なことの一つを見落としがちである。それは、いかに長く良い睡眠をとるかということ。週末だけでなく、月曜から日曜までの毎日だ。

複数の調査研究で、睡眠の量と質の問題はアルコールやドラッグと同程度かそれ以上に学業成績や卒業の可否を占う重要な関心事であることがわかった。

ある調査によると、学生の60%が、睡眠問題にどう対処するかの知識を大学で教えてほしいと願っているものの、睡眠不足が学業や心身の健康に及ぼす悪影響について何らかの対応をしている高等教育機関はほとんどない。それどころか、実際には正反対のことをしている大学もある。たとえば、夜通しの勉強を奨励するかのように図書館を24時間開放するといったケースだ。

実は筆者も大学1年生の時、試験勉強で1度だけ徹夜をしたことがあるが、試験中に寝入ってしまった。これは、いい教訓になった。

徹夜勉強は、何かを暗記するだけのことならいいかもしれない。だが、資料を使っての複雑な問題に取り組まなければならないような時の徹夜は逆効果をもたらすだろう。大学生の睡眠問題の専門家であるJ・ロクサーヌ・プリチャードはそう指摘する。眠っていない時間が16時間を超えると、脳の機能は衰えはじめ、20時間以降は脳があたかも泥酔したような状態になると彼女は言っている。

大学に進学する若者の多くは、良くない睡眠が習慣化したまま学生生活をスタートさせ、単位を取得するための厳しい要求や交友、クラブ活動、運動競技などで睡眠がさらに悪化しがちである。

10代の、とりわけ男子の場合、週末も起きてくるのは午前11時以降。筆者はまだ、そうではないという子を持つ親に出会ったことがない。平日に積もり積もった深刻な睡眠不足を補おうというわけだが、「サーカディアン・リズム(circadian rhythm)(訳注=24時間周期の生理現象)を狂わせてしまう。これは毎週末、3時間以上の時差がある場所へと移動しているようなもので、月曜日から金曜日は時差ボケに悩まされることになる。

この過程で、サーカディアン・リズムが支配する20個の遺伝子のうちの一つが正常に機能しない状態に陥る。その結果、しかるべき時にしかるべき遺伝子が働かず、身体は正常時の能力を発揮できなくなる。認知力や肉体の機能にも悪影響を及ぼす。米スタンフォード大学の研究によると、大学の男子バスケットボール代表チームの選手は適正な睡眠が取れていれば、フリースローや3ポイントシュートの成功率が格段に上がることがわかった。

健全な睡眠習慣を身につけられない学生は、自分が選択した科目でもうまくこなせず、本来の学力を発揮できない傾向がある。これは、全米で55千人以上の学生を対象にした調査研究の結果だ。

米ミネソタ州セントポールにあるセントトーマス大学のモニカ・E・ハートマンとプリチャードによる研究だと、睡眠が乱れる日が週に1日増えると落第点をとる可能性が10%高まり、GPA(訳注=通常、4ポイントから0ポイントまでの段階評価で表す成績の平均値)は学業成績を左右するその他の要素を考慮したとしても0.02ポイント下がる。

「全米レベルでみると、3人ないし4人のうち1人の割合で卒業できない学生がでる」。ニューヨーク・タイムズの取材に、そうプリチャードは答えた。「睡眠が良くなると、卒業できる可能性も高くなる。いい睡眠が悪い結果を生むことは何もなく、たくさん良いことをもたらす」と彼女は述べた。

プリチャードは心理学および神経科学の教授で、セントトーマス大学睡眠センターの科学研究部長の任にある。彼女が言うには、学生の睡眠習慣は「重要な健康危機の一つ」なのだが、高等教育機関はこの問題にほとんど関心を払っていない。大学側が学生に知らせておくべき重要な問題と考える26の健康リスクのうち、彼女によると、睡眠問題の重要度は下から2番目で、最下位はネット中毒。

「教育を通じて学生の睡眠を改善する余地は十分にある」と彼女は言っている。

プリチャードはラット(実験用のシロネズミ)で研究していたが、大学でフルタイムで教えるようになったとき、居眠りをこらえるのに必死になっている学生たちの様子を目の当たりにしてから研究対象を大学生に向け、良質の睡眠を妨げる要因について調べてきた。

「アルコールやカフェインの摂取は睡眠の質を左右する重要な予測因子ではなく、ストレスが学生の眠りを妨げている主な原因であることがわかり、私は驚いた」とプリチャード。これは1125人の大学生について調査した結果に基づくもので、彼女は2010年、青年期医学誌「Journal of Adolescent Health」に共同執筆者と論文を発表した。「多くの学生たちが鬱(うつ)病や精神不安、ADHD(注意欠落・多動性障害)などに悩まされており、そうしたことが睡眠不足や睡眠悪化の兆候となる」と言う。

それが判明したことで、彼女は学生たちのストレスや精神不安に役立つ対処法を探った。セントトーマス大学の学生心身健康センター(SWC)と協働で、新入生を対象にヘルシーな朝食を一緒に取りながら学生同士が交流を深め、ストレスの原因になる問題について話し合う催しを企画した。これは単に電子メールで情報を学生に送りつける方法に対抗した試みだった。彼女の話によると、こうした朝の催しに参加した学生たちはストレスが大幅に解消され、良く眠れるようになったと報告している。

また、きわめて重要なのは良い「睡眠健康法」を実践することだとプリチャードは言う。これは十分かつ安らかな夜の眠りを確実にするための行動測定法である。彼女と米睡眠医学会(AASM)は以下の実践を提言している。

――週末を含め、毎日ほぼ同じ時間帯での就寝、起床。

――リラックスできる睡眠環境を整え、寝る際のルーティンを守ること。

――少なくとも就寝前の3時間は、カフェインを含む食べものや飲み物、刺激効果をもたらす薬物の摂取を避けること。

――試験に向けた詰め込み勉強や宿題の処理を遅い時間まで続けないこと。課外活動にあまりにも時間がとられるようなら、不要事を切り捨てること。

――可能であれば、パソコンやTV、携帯電話など電子機器はすべて寝室に置かず、それらを使う場合でも就寝直前は避けること。

――空腹で眠りに就かないこと。ただし、就寝前に大食いはしないこと。

――寝る時間が近づいたら、激しい運動は避けること。その代わりに軽い読書か瞑想(めいそう)などで気持ちを鎮めること。

――眠る時の寝室は、静けさ、暗さ、涼しさを保つこと。室外の明かりや音が気になる場合は、ライトブロッキング・シェード(lightblocking shades=遮光用のカーテンなど)やホワイトノイズ・マシン(white noise machine=周囲の騒音を消すために「サー」という音が出る装置)の使用を検討してみること。(抄訳)

(Jane E. Brody)©2018 The New York Times

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