アメリカの10代、成績やリーダーシップで女子が男子より上?調査結果が示す社会の影響
米国の学校では、1980年代から1990年代にかけてはまだ男子生徒が目立っていた。数学や理科の成績は男子が女子を上回り、手を挙げる回数も多く、教師に目をかけられることも多かった、とデータは示していた。
しかし、今日の生徒たちの実態はそうではない。ティーンエージャー(訳注=13~19歳)の半数以上が、学校で男女はほぼ対等になっていると言う。ピュー・リサーチセンター(訳注=米ワシントンに拠点を置くシンクタンク)が2025年3月13日に発表した全米の10代の若者を対象にした調査によると、男子と比べて女子の方が成績は良く、リーダーシップがあり、授業中の発言が多いなど、女子のほうが優れているとの意見がかなりの割合を占めている。
調査に応じたティーンエージャーたちは、男子は乱暴だったり、ケンカをしたり、薬物やアルコールの問題を起こしたりする可能性が高いとも指摘した。そして、際立っていたのは、大学に進学するつもりがあると答えた男子がかなり少ない点だ。4年制大学について、男子は46%が進学を希望すると答えたのに対し、女子は60%だった。
ティーンエージャーは、質の高い世論調査の対象になることがあまりない。ピュー・リサーチセンターのこの調査に対する回答は、教育の成果に関する他のデータとも呼応している。今どきの男子は、すでに幼稚園の段階から学校で女子よりも多くの課題を抱えている。女子は、数学で男子との差を縮めており(ただし、新型コロナウイルス感染症の大流行による学校の閉鎖以降は差が拡大している)、読解力では男子を上回っている。男子は、高校卒業率も大学進学率も低い。
男子の学校での苦闘は、長期的に影響する可能性があると研究者らは指摘する。男性の就労率は低下している。共和党支持の男性の半数近くが、米国社会は男性に対して否定的な見方をしていると感じており、それは学校で学んだ少年時代に始まったと答えている。若い男性の疎外感は選挙に影響を与えた。この層が大統領選でドナルド・トランプ支持に傾いたのは、おそらくトランプが米国社会における彼らの地位回復を約束したことに一因があるだろう。
「過去50年間、女子は成長を遂げてきた。その一方で、男子は同じような進歩を遂げられなかったことがわかった」とマット・エングラー・カールソンは言っている。米カリフォルニア州立大学フラトン校で少年と男性を研究しており、米心理学会(APA)の男子学生に関する対策チームのメンバーだ。「より大きな論点は、教育の成果に男女間でこれほどの格差があると、社会に何が起こるのか? ということだ」とエングラー・カールソンは続けた。
研究者らは、なぜ男子が女子と比べてこれほどまでに学校の成績で後れを取ってしまったのか、正確には分かっていない。原因の一部は生物学的なことかもしれない。つまり、男子は成熟するのが遅いし、学校での勉強はより早くから、より本格的になり、男子は幼いうちからじっと座って自主的に勉強するよう求められる。教師のほとんどが女性であることも一因かもしれない。
今回の調査では、教師が女子を優遇していると答えた男子は23%で、女子の9%より多かった(教師が男子を優遇していると答えたティーンエージャーは、ほんのわずかにすぎなかった)。
男子は学業にあまり関心が向かないよう社会的に教育されているという証拠もある。また、研究者らによると、何年も教室で問題児として扱われてきたことが影響している可能性もある。
レベッカ・ウィンスロップはブルッキングス研究所(訳注=米ワシントンに本部を置くシンクタンク)で教育を研究しており、ジェニー・アンダーソンとの共著「The Disengaged Teen(無関心なティーンエージャー)」をこのほど出版した。ウィンスロップによると、ティーンエージの男子は学校では最低限のことしかしない傾向があるのに対し、女子は成果を重視することが研究から浮かび上がった。
「男子と女子では社会性が違う」とウィンスロップ。「男子は、一生懸命に努力したり賢くなったりしても地位は得られないと言うけど、一方の女子たちは、正しいことをして誰もがっかりさせないよう社会化されている」と彼女は言うのだ。
13歳から17歳まで計1391人を対象にしたこの調査によると、ティーンエージャーの女子も何らかの形で苦闘している。10代の若者たちは、女子の方が不安やうつ症状になりやすいと言っている。女子は、男子と比べ、見た目にこだわり、周囲に溶け込むプレッシャーを感じている。
しかしながら、学校で女子の力を高める取り組みを何十年にもわたって続けてきたことは、多くの点で成果をあげている。成人6204人を対象にしたピュー・リサーチセンターの調査では、女子が学校で良い成績をおさめ、自立し、リーダーになることに十分な力点が置かれるようになっていると答えた人の方が、そうでない人より多かった。同じ質問をした2017年の調査と比べても、変化したのだ。当時は、女子の勉強やリーダーシップに十分な力点が置かれていないと回答する人の方が多かった。
調査では、人びとが、男子とその成果に対してもっと力点を置くべきだと考え始めていることが分かる。
「自分の気持ちを言葉でなく行動で表す行為の中に見えるのは、男子が感情のコントロールに苦労しているということだ」とエングラー・カールソンは言う。
「私たちに必要なのは、男子の発達を理解し、自分たち自身の偏見を理解できる教師やスタッフだ」とつけ加えた。
成人回答者の57%は、男子に対して自分の気持ちを声に出すよう促すことに十分な力点が置かれていないと答えている。また半数近くが、男子が学校でよい成績をおさめられるようもっと助けるべきだと答えたのに対し、女子については、そのように介入が必要だと答えた人は4分の1強だけだった。
子どもたちがリーダーになることや自立するのを促すことについて、人びとの考え方に大きな性差はなかった。つまり、だいたい成人回答者10人中4人が男子にも女子にもそうした取り組みがもっと必要だと答えた。
しかし、とりわけ身体的な特性については強固なジェンダー規範がいくつかあるようだ。ティーンエージャーの女子の半数以上が見た目を良くしなければならないという圧力を感じると言っている。そして、男子の半数近くは肉体的に強くあるべきとの圧力を感じているという。これは、若者に関する他のデータとも一致している。
ティーンエージャーは、彼らの年代では精神的な健康問題が最大の課題だと言い、3分の2以上の若者が不安障害やうつ症状が学校で問題になっていると答えた。大半のティーンエージャーは、精神的なサポートを求めることができる親しい友人が少なくとも1人いると回答したが、女子の方がより気軽に友人に頼っているようだ。
大学進学の件(女子の方が進学希望者の割合が高い)を除けば、ティーンエージャーは男女とも「こういう大人になりたい」という目標が似通っている。86%は自分が楽しめる仕事に就くことが大切だと答え、親しい友人を持つことや金持ちになることがこれに続いた。(抄訳、敬称略)
(Claire Cain Miller)©2025 The New York Times
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