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「真の男」を育てる学校が北京に誕生 その目的は

ニューヨークタイムズ 世界の話題
「本色男児倶楽部」の少年たちは、北京での訓練の後、スローガンを唱和しながら、バス停に向けて行進する=Gilles Sabrié/©2018 The New York Times

タン・ハイエン(39)は明確な使命感を持って学校を運営している。少年たちを男(訳注=中国語で「男子漢」)に仕立て上げることだ。

もちろん、男への道はいくつもあるが、肩幅の広いタンは特定の男を思い描いている。男はスポーツを楽しむ。男は困難を克服する。

「子どもたちにはゴルフやセーリング、乗馬を教える」とタンは語り、「だけど、決して弱虫にはしない」と言い添えた。

タンが創設した学校「本色男児倶楽部」は、中国における男であることの意義についての、深遠な論議の最前線に立つ。軍事的な有効性、伝統的な文化や役割の包摂、男子のがっかりするような学業成績、すでに廃止された一人っ子政策の反響といったことに関する懸念が議論を沸き立ててきた。

少年たちに講義するタン・ハイエン(中央)は「本色男児倶楽部」の創設者。男の子たちがあまりにも甘やかされて育つのを心配する親たちの悩みに応えたいという=Gilles Sabrie/©2018 The New York Times

中性的なポップアイドル、過保護な母親、ほとんどが女性の教師が、男の子たちを弱虫にしてしまう社会。この学校の考え方は、そうした環境に取り巻かれている7歳から12歳までの少年たちに、もう一つの人生を提供することにある。

最近のことだが、ある日曜の午後、同校の少年17人がアメリカンフットボールを習いながら、お互いにブロックやスプリント、タックルなどの練習をした。赤いフード付きのスウェットシャツを着たタンは、少年たちに掛け合い式でスローガンを連呼させた。

「誰が最高か?」とタンが叫ぶ。「私が最高です」と少年たちが、答える。

「誰が最強か?」とタン。「私が最強です」と少年たち。

「君は誰だ?」とタン。「真の男です」と少年たち。

「本色男児倶楽部」の誓いを暗唱する少年たち。この学校を創設したタンは「ぜったいに弱虫な子にさせない」と言っている=Gilles Sabrie/©2018 The New York Times

この学校は、異論があるかもしれないが、中国にはまだ存在していない問題に応えようとしている。中国人の男性たちは依然として政治やビジネスの世界の上層部を支配している。制度上の男女差別は広範囲で行われている。富は男性の懐に集中している。女性たちは、公共交通機関や大学、会社などでのセクハラに不満を抱いている。

それでも、中国には強い男をよしとする先入観があり、若い男性たちが困った状況下に置かれているのではないかとの懸念の高まりは政治的な次元の問題になっている。国営メディアは、ビデオゲームや自慰行為、運動不足が多くの若者たちを軍隊に不適格にさせていると指摘した。華中師範大学の教授(性科学)ペン・シアオホイは、「死ぬことも苦しいことも恐れないという男性の特質を消し去ること」は、「国家の自殺」に等しいと指摘する。

「男の子は男の子として、女の子は女の子として育てられることが今もなお必要なのだ」。電話でのインタビューに、ペンはそう述べ、「性別に反した育て方をすべきではない」と語った。

元サッカーのコーチで、教員だったタンは、息子が授業についていけないことを心配する親たちとの話し合いから学校設立の着想を得たと言っている。四つの省の小学生とその親たち計2万人を対象にした2014年の調査によると、学業成績が振るわなかった児童は、女子は3分の1未満だったが、男子の場合はほぼ3分の2に達した。この調査は、教育省傘下の研究機関「中国教育科学研究院」が実施したものだ。

タンはまた、06年に米カリフォルニア州のオークランドを訪れた際、米国人の親たちが身体運動を通じて少年たちに「困難や危険を克服すること」を教えているのを見て、触発された。中国では、これとは逆に、親たちの多くが息子を保護しようとする。それは一人っ子政策で増幅されてきた文化的な偏りだ。中国教育科学研究院による調査で、「親たちは、生活面でも学業面においても、男の子をダメにしてしまう傾向がある」ことがわかった。

訓練の一つに、アメリカンフットボールも取り入れられている=Gilles Sabrie/©2018 The New York Times

タンによると、これまでに計2千人以上の少年が本色男児倶楽部に参加した。

スン・イーが8歳の一人息子を参加させたのは、チームワークを彼に教えてもらえると思ったからだ。1学期のコースに、約2千ドル相当を支払った。

「息子は泣き虫だったけど、今ではとても明るい性格になったと思う」とスン。「忍耐力が向上したと思うし、失敗や欲求不満への対処法もわかってきた」と言う。

本色男児倶楽部では、男になる学課はスローガンを通して教わる。少年たちは宿題に取り組む前に、「中国の台頭」のために懸命に勉強することを誓う。その誓いは、こうした文言で始まる――。「私は真の男です!

将来、家族を養い社会的責任を担う大黒柱です!

中国人民の中核です!」

「真の男」とは勇敢であること、とタン(彼は3歳の女の子の父でもあるが、「少女にそれは求めない」と言い、「それは少年にだけの特質なのだ」と指摘する)。タンが言うには、度胸、礼儀、善悪を判断する能力、そして名誉と不名誉を理解していることなども少年の特質に含まれる。

教員の一人、クオ・ソンユイ(30)の話だと、訓練プログラムの始まりの時点では、少年たちの何人かは30分間ほど、小声でしか話さなかったり、泣いたりしている。

「誰か一人が泣いても、決してなだめたりはしない」とクオ。「強くあれ、と彼を励ますだけだ」

一部には、少年たちの行動に欠陥があるのは男性のロールモデル(模範)が欠けているからだと非難する声がある。政府の調査によると、中国では父親は子どもの育児にほとんどかかわらない。ポップアイドルでさえ、不満のネタになる。国営の中国中央テレビ(CCTV)が2018年9月、お化粧をした少年バンドの特集番組を放映したが、それが親たちの怒りを買った。親たちは、そうしたポップアイドルが息子たちの行動を「女っぽく」させていると不平を言っているのだ。

本色男児倶楽部は、少年たちの自立を育み、勉強中は親が周りでウロチョロしないようにさせ、目標を達成するよう促す。チン・ホン(9)が言うには、家で宿題をしている時には両親がずっとそばにいる。「(本色男児倶楽部の)プログラムで一番いいところは、独立して勉強ができること」と彼は話している。

このプログラムは、少年たちに見境のない行動をしないよう促している。他の子たちを押しのけたり、暴言を浴びせたりすれば減点にし、クラスのレベルを「鳳凰」組から「悪臭雛(ひな)」組に落とすこともある。

だが一方には、こうした男性志向型の学校の有効性に疑問を呈する向きもある。ワン・チェンペン(23)は倉庫会社のマーケティング担当の従業員で、お化粧をするのが好きだが、以前、彼が持っていた人形を母親があまりにも少女趣味だとの理由ですべて焼いてしまったという。後日、自分はゲイであると明かした。

「表面的には、(本色男児倶楽部のような学校の)少年たちは、親や教育機関の求めに合わせようとし、うわべだけ、そうしたイメージを振りまいている」。そうワンは話し、「でも、本質は同じままで、変わらないだろう」と言い添えた。(抄訳)

(Sui―Lee Wee)©2018 The New York Times

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