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夢の不老不死「魔法の薬はすでに存在している」 健康寿命を延ばす七つのポイントとは

ニューヨークタイムズ 世界の話題 更新日: 公開日:
研究に裏打ちされた「エイジングウェル」のコツがある
高圧室も赤外線も、無視していい。研究に裏打ちされた「エイジングウェル(上手に老いる)」のコツがある=Cristina Spanò/©The New York Times

人類は何千年もの間、不老不死の秘法を探し求めてきた。その探求の一環として、今日では高圧室で眠ったり、凍結療法を試したり、赤外線を浴びたりする人もいる。

大半の老化専門家は、こうした措置が人間の寿命を有意に延ばすことになるか懐疑的である。ただ、いくつかの簡単な生活習慣によって、多くの人がより健康に長生きし、心身ともに良好な状態で80歳、90歳、さらには100歳を迎えることができると信じている。若者の血液を輸血するといった類いの、特異な方法ではない。

「人は魔法の薬を探し求めている」と米国立老化研究所(NIA)の科学部長で博士のルイジ・フェルッチは言い、「魔法の薬はすでに存在しているのだ」と続けた。

ここで、老年医学専門家が提唱する健康寿命を延ばすための7ポイントを紹介しよう。

1)もっと動こう

専門家が一番推奨するのは、体を活発に動かすことだ。運動によって早死にのリスクを減らせることが、さまざまな研究で明らかになっている。

体を動かすことで心臓や循環器系を健康に保ち、心身に影響を及ぼす幾多の慢性疾患から身を守ることになる。また、筋肉を強化することで、高齢者の転倒リスクも減らすことができる。

「成人期に筋肉量や筋力、バランス能力、心肺の持久力を鍛えておけば、肉体的な老化が進んでも、何かあった時により強いレベルからスタートすることができる」と、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校医学部の老年医学の教授で博士のアンナ・チャンは指摘する。

運動は、楽しみながら続けるのが一番だ。たくさんのことをする必要もない。米国心臓協会(AHA)は、週150分間の中強度の運動を推奨している。つまり、1日20分余り歩くだけでも効果がある。

2)もっと果物と野菜を食べよう

専門家らは、何か特別な食事を推奨しているわけではない。一般的に、適度に食べ、果物や野菜を多く取り、加工食品の摂食を減らすことを勧めている。

地中海食は、全粒穀物や豆類、ナッツ類、魚、オリーブオイルに加えて生鮮食品に重点を置くもので、健康的な食生活の良いモデルである。この食事は、心臓病、がん、糖尿病、認知症のリスクを下げることが証明されている。

専門家によっては、健康的な体重を維持することが長寿のために重要だと言うが、米コロンビア大学で健康政策と老化を研究する教授で博士のジョン・ロウによると、特に高齢期になるとそのことをさほど心配する必要はない。

「私はいつも、体重が増えた患者よりも、減った患者のことを心配していた」と言っていた。

3)十分な睡眠をとろう

睡眠は軽視されがちだが、健康的な加齢に大きな役割を果たす。研究によると、毎晩の平均睡眠時間はあらゆる死亡リスクと相関関係があり、良質な睡眠を継続的にとると寿命が数年延びる可能性があることがわかっている。

睡眠は脳の健康にとりわけ重要なようだ。2021年のある研究によると、睡眠時間が5時間未満の人は認知症の発症リスクが2倍になることがわかった。

「人は年齢を重ねるほど、必要な睡眠時間は減るどころか、むしろ多くなる」とアリソン・ムーアは指摘する。カリフォルニア大学サンディエゴ校の医学部教授・博士で、老年医学や老年学、緩和ケア学の主任をしている彼女の話だと、一般的には7時間から9時間の睡眠が推奨されている。

4)喫煙しない、そして飲み過ぎない

言うまでもないが、喫煙はあらゆる種類の致命的な病気のリスクを高める。「たばこの煙に、体に良い成分はまったく無い」とロウは言う。

過度のアルコール摂取も、どれほど健康に悪いかがわかってきている。女性は1日1杯以上、男性だと2杯以上、あるいはそれ以下でも、心臓病や心房細動、肝臓病、また7種類のがんのリスクが高まる。

5)慢性疾患を管理する

米国人の成人の半数近くが高血圧で、40%はコレステロール値が高い。そして、3分の1以上が糖尿病予備軍である。

ここまでに記してきた健康的な行動はすべて、これらの症状を管理し、より深刻な病気になるのを防ぐのに役立つが、時には生活習慣の調整だけでは不十分なケースもある。そのため、専門家らは、医師のアドバイスに従って症状を管理することがきわめて重要だと言っている。

「薬を飲むのは楽しいことではないし、血圧や血糖値を測るのも楽しくはない」とチャン。「でも、それらすべてを一体的に最適な状態にすることで、より長く、より健康的で、より良い生活を送ることにも役立つ」と言う。

6)人間関係を優先する

精神的な健康は肉体的な健康より後回しにされがちだが、両者は同じくらい大切だとチャンは言っている。「孤立や孤独は喫煙と同程度に健康を害する」と彼女は指摘し、それが「認知症、心臓病、脳卒中のリスクを高める」と付け加えた。

人間関係は、より健康的に生きるためだけでなく、より幸せに生きるためのカギである。ハーバード大学成人発達研究所(HSAD)によると、良好な人間関係は幸福度の最大の予測因子である。

ロウは医学生たちに、高齢患者の半年後の健康状態を知る最良の指標の一つは「ここ1週間に何人の友人や家族と会ったか」を尋ねることだと教えているという。

7)ポジティブ(前向き)思考を養う

前向き思考も長生きの要因になる。いくつかの研究で、楽観主義は心臓病リスクの低下と関連しており、楽観主義を測るテストで高得点を取った人は悲観的な人よりも5%から15%長生きすることが判明している。

楽観主義者には、より健康的に生活し、一部の慢性疾患の罹患(りかん)率が低い傾向があるからかもしれない。しかし、そうした要因を考慮したとしても、前向きに考える人の方が長生きすることが研究で示されている。

長寿のために健康的な習慣を一つ選ぶとしたら、「何らかの身体活動をすること」とムーアは言う。「それができないのなら、つねに前向きであれ」(抄訳)

(Dana G. Smith)©2024 The New York Times

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