ルールを変える方法は学べる 世界各地で主権者教育を実践 多様性から始まる試み
人は社会の中で生きている。他人と共存する以上、小さい時は何をして遊ぶかを周囲と決め、大人になったら投票をして選んだ人が作った法律のもとで暮らす。ルールがなければ力が支配し、文字どおり無法地帯となる。
みんなが生きやすくするためには、ルールを不断に見直す必要がある。そのルールが変えられないと思ったら、やる気もなくなる。それが投票率の低い状態ではないのか。政治が遠すぎて自分には変えられない、無関係だと思ってしまうからだ。
社会を変えるには方法がある。それが若者議会などで用意されているフィンランドの中学生は、「社会は変えられる。その方法を教わるから」と至って自然体だった。同国は投票率も日本より高い。
変えるための一歩はまず社会を知ること。答えが出にくい社会の事象や課題を「知れば知るほど変えられると思える」と話してくれたのは、岐阜高校2年の石本煌陽さんだ。
南スーダンの若者も同じだ。選挙が行われなければ、政治に関心もなくなる。けれども、初めての選挙が実際に行われると思えば、自分たちが社会を変えられると希望も持てる。逆回転が米国だ。議論の分かれる問題を避け、政治との接点を減らす。そんな環境で育つとどうなるのか。
政治ばかりではない。オランダのピースアブルスクールを日本に紹介した熊平美香さんは、ビジネス界の出身だ。課題解決のコンサルティングを行ううち、なぜ日本は優秀な人材が多いのに、課題解決能力が低いのかという問題に突き当たったという。「複雑な問題に挑戦しないし、異端であることを嫌う。この原因は教育にある」、そしてオランダの実践を知った。「民主的な社会は違いが前提となっているという考え。日本にないのはこれだと思いました」。確かに、自分自身を振り返っても、日本は同調圧力の高い社会で、そこから外れることへの恐怖感が強い。
こども家庭庁の、日本、米国、ドイツ、フランス、スウェーデンの13~29歳の若者対象の調査がある。「私の参加により、変えてほしい社会現象が少し変えられるかもしれない」に「そう思う」と答えた割合は、日本が11.3%と一番低い。4位のフランスとも6ポイントの差だ。一方で、「社会のことは複雑で、私は関与したくない」に「そう思う」と答えた割合は一番低い。つまり、社会への関心はあるのだ。
若者の投票率が低い日本で、今夏の参院選で18、19歳の投票率が前回参院選より7ポイント上がった(それでも全体より17ポイント低い)。これはSNSを駆使し、選挙活動が「推し活」や「フェス」のようだった参政党の急伸とも関係しているのではないか。
世界はますます複雑になるばかり。簡単な正解なんてない。でもその中で私たちは答えを出さねばならない。岐阜高校の2年生、都竹菜月さんは「公共で学ぶのは、受験のその先、生きていくうえで必要なこと」と話してくれた。そのための方法論はある。5歳児だって合意形成を学べるのだ。