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ルールを変える方法は学べる 世界各地で主権者教育を実践 多様性から始まる試み

World Now 更新日: 公開日:
ピースアブルコミュニティのイベントで踊る地域の人々=2025年9月、オランダ・ハーグ、秋山訓子撮影
ピースアブルコミュニティのイベントで踊る地域の人々=2025年9月、オランダ・ハーグ、秋山訓子撮影

社会で人と共存し、生きていくためにはルールが必要。そのルールの変え方は学べる……その様子を各地で見た。

人は社会の中で生きている。他人と共存する以上、小さい時は何をして遊ぶかを周囲と決め、大人になったら投票をして選んだ人が作った法律のもとで暮らす。ルールがなければ力が支配し、文字どおり無法地帯となる。

主権者教育の「逆回転」が起きている米国のテキサス州でも、草の根で地道に若者や子どもの政治や社会参加に取り組む人たちがいた。ナイジェリア出身のアジマ・サディークもその一人。テキサス州議会に若者を集め、政治家と意見交換するイベントを行った(本人提供)
主権者教育の「逆回転」が起きている米国のテキサス州でも、草の根で地道に若者や子どもの政治や社会参加に取り組む人たちがいた。ナイジェリア出身のアジマ・サディークもその一人。テキサス州議会に若者を集め、政治家と意見交換するイベントを行った(本人提供)

みんなが生きやすくするためには、ルールを不断に見直す必要がある。そのルールが変えられないと思ったら、やる気もなくなる。それが投票率の低い状態ではないのか。政治が遠すぎて自分には変えられない、無関係だと思ってしまうからだ。

社会を変えるには方法がある。それが若者議会などで用意されているフィンランドの中学生は、「社会は変えられる。その方法を教わるから」と至って自然体だった。同国は投票率も日本より高い。

変えるための一歩はまず社会を知ること。答えが出にくい社会の事象や課題を「知れば知るほど変えられると思える」と話してくれたのは、岐阜高校2年の石本煌陽さんだ。

南スーダンの若者も同じだ。選挙が行われなければ、政治に関心もなくなる。けれども、初めての選挙が実際に行われると思えば、自分たちが社会を変えられると希望も持てる。逆回転が米国だ。議論の分かれる問題を避け、政治との接点を減らす。そんな環境で育つとどうなるのか。

子どもや若者の教育支援や社会参加を後押しするNPO、チルドレンズ・ディフェンス・ファンドのテキサス州ディレクターを務めるブランディ・テイラー。テキサスの教育現場が直面する多くの課題に取り組んでいる=2025年9月、米国・オースティン、秋山訓子撮影
子どもや若者の教育支援や社会参加を後押しするNPO、チルドレンズ・ディフェンス・ファンドのテキサス州ディレクターを務めるブランディ・テイラー。テキサスの教育現場が直面する多くの課題に取り組んでいる=2025年9月、米国・オースティン、秋山訓子撮影

政治ばかりではない。オランダのピースアブルスクールを日本に紹介した熊平美香さんは、ビジネス界の出身だ。課題解決のコンサルティングを行ううち、なぜ日本は優秀な人材が多いのに、課題解決能力が低いのかという問題に突き当たったという。「複雑な問題に挑戦しないし、異端であることを嫌う。この原因は教育にある」、そしてオランダの実践を知った。「民主的な社会は違いが前提となっているという考え。日本にないのはこれだと思いました」。確かに、自分自身を振り返っても、日本は同調圧力の高い社会で、そこから外れることへの恐怖感が強い。

こども家庭庁の、日本、米国、ドイツ、フランス、スウェーデンの13~29歳の若者対象の調査がある。「私の参加により、変えてほしい社会現象が少し変えられるかもしれない」に「そう思う」と答えた割合は、日本が11.3%と一番低い。4位のフランスとも6ポイントの差だ。一方で、「社会のことは複雑で、私は関与したくない」に「そう思う」と答えた割合は一番低い。つまり、社会への関心はあるのだ。

若者の投票率が低い日本で、今夏の参院選で18、19歳の投票率が前回参院選より7ポイント上がった(それでも全体より17ポイント低い)。これはSNSを駆使し、選挙活動が「推し活」や「フェス」のようだった参政党の急伸とも関係しているのではないか。

リジー・ケイン・クラークは、地域のNPO、ウェルカム・テーブルのスタッフとして、チルドレンズ・ディフェンス・ファンドと共に「フリーダム・スクールス」という子どもの社会参加を促す活動に取り組んでいる。NPOは公立学校と違って、州法の適用を受けず、今のところ自由に活動できているという=2025年9月、米国・オースティン、秋山訓子撮影
リジー・ケイン・クラークは、地域のNPO、ウェルカム・テーブルのスタッフとして、チルドレンズ・ディフェンス・ファンドと共に「フリーダム・スクールス」という子どもの社会参加を促す活動に取り組んでいる。NPOは公立学校と違って、州法の適用を受けず、今のところ自由に活動できているという=2025年9月、米国・オースティン、秋山訓子撮影

世界はますます複雑になるばかり。簡単な正解なんてない。でもその中で私たちは答えを出さねばならない。岐阜高校の2年生、都竹菜月さんは「公共で学ぶのは、受験のその先、生きていくうえで必要なこと」と話してくれた。そのための方法論はある。5歳児だって合意形成を学べるのだ。