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建国初の選挙を迎える南スーダン 「生まれて初めて」本当に行われるのか 期待と不安

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日本に研修に訪れた南スーダンの人たち。憲政記念館で(JICA提供)
日本に研修に訪れた南スーダンの人たち。憲政記念館で(JICA提供)

南スーダンでは、建国して初めての選挙が来年行われる予定だ。若者は生まれて初めての選挙になる。人々は選挙に何を思い、何を期待しているのだろうか。

生まれて初めて迎える総選挙は、本当に実施されるのか。2011年にスーダンから分離独立した南スーダンは内戦が続き、選挙が行われたことがない。4回延期され、2026年の12月に行われる予定。18歳から投票ができる。

同国の国家選挙管理委員会は、日本政府のJICAを通じた支援で、2022、23年と選挙実務の研修のために来日。日本の選管や総務省に話を聞き、開票のための機械を製造する会社や小学校での模擬投票、実際の選挙活動や投開票作業などを見学した。

選管が特に力を入れるのが、若者への教育だ。首都ジュバにある三つの大学でも選挙管理委員会による模擬投票などが行われる予定だ。人口の75%が35歳以下という若い国で、有権者の過半数を18~35歳の若者が占める。来年予定の総選挙で33歳以下の有権者は、スーダン時代にも選挙を経験しておらず、生まれて初めての投票だ。

9月から10月にかけて、大学生の調査員が若者を対象に、来年の選挙を知っているか、選挙に何を期待するか、選挙の障壁は、などの調査をした。選挙について教育する目的もあった。

調査員となった大学生。左からスザーナ・ヨンコンさん、サミュエル・マリス=ボルさん、マチュエン・ジェームス=アミコさん、ジュアナ・ベンジャミン=ベネディクトさん

調査員の大学生に話を聞いた。マチュエン・ジェームス=アミコさん(35)は、ジュバ大学でMBA取得をめざす。「この選挙が行われれば、南スーダンの真の姿を決定づける。現在は部族を動員して戦争に赴くことで政治の力を得ると認識されていますが、選挙で自由で公正、平和な未来を実現したい」

とはいえ、本当に選挙が実施されるのか疑心暗鬼になっている人々も多いようだ。アッパーナイル大学で公衆衛生を学ぶサミュエル・マリス=ボルさん(29)は、「最大の課題は、人々がまだ選挙の実現を疑っていること」という。同大で医学を学ぶスザーナ・ヨンコンさん(28)も、「ある若者は、選挙に対してとても否定的でしたが、私と話すうち、選挙が実際に行われるという希望を持つようになった」。ジュバ大学で医師をめざすジュアナ・ベンジャミン=ベネディクトさん(26)は、「調査の時には、私たち抜きに私たちのことを決めないでほしいと思っている、だから選挙が重要なのだ、と調査対象者に伝えました」。

国家選挙管理委員会局長のバルナバ・マイヨー=デンさん(左)とアイエテ・スーザン=アレックスさん
国家選挙管理委員会局長のバルナバ・マイヨー=デンさん(左)とアイエテ・スーザン=アレックスさん

バルナバ・マイヨー=デン国家選挙管理委員会局長は、「日本の研修で小学校の模擬投票を見学した。この経験が、南スーダンでも学校や大学生に焦点を当てるきっかけとなった」。同委員会の広報担当、アイエテ・スーザン=アレックスさんは「若者や女性、障害者などはこれまで周縁化されていた。私たちは全ての人を包括的に巻き込みたいと思っています」。