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「投票間に合わない」「早くネット投票を」 衆院選の在外投票、海外邦人ら不満の声

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海外に住む有権者の一票は

■投票意欲高く問題が可視化 ハードルいくつも

「10年ほどツイッターで『在外投票』を検索して、困っている人たちをサポートしてきましたが、今回は特に投票意欲が高い人が多いです。『投票した』という人も格段に多い」と話すのは、米ニュージャージー州在住で、「海外有権者ネットワークNY」(@jovnewyork) の竹永浩之さんだ。

「在外投票を巡る様々な問題はこれまでにもありましたが、投票しようとする人の数が増えたことで、ネット上で可視化されたんだと思います」

在外投票は、日本以外の国に住む邦人が投票する制度。2000年の衆院選から国政選挙の比例代表に投票できるようになり、07年の参院選からは選挙区にも投票できるようになった。在外邦人からは長く望まれてきた制度だが、投票率は高くない。2017年衆院選では在外有権者は10万90人で小選挙区投票率は21・18%。とにかく投票に至るまでのハードルが高いのだ。

まず、日本で住んでいた自治体の選管の「在外選挙人名簿」に登録されていなければならない。
出国時、役所に転出届を出すときに同時に申請しておけば良いが、していなければ出国後、在外公館で申請する必要がある。

登録の申請書はネットでダウンロードできるが、自治体との間で郵送を挟む手続きのため、だいたい2カ月から3カ月程度かかる。つまり実質的には、投票できるのは公示前に名簿に登録されている人だけだ。

総務省によると、在外選挙人名簿の登録者数は9月1日現在約9万7000人だ。

名簿に登録されれば、投票に必要な「在外選挙人証」が発行される。
だが手元に在外選挙人証があったとしても、投票までのハードルは高い。

在外投票には、主に直接大使館や領事館などに赴いて投票する方法と、日本に記入済みの投票用紙を送る郵便投票がある。

公示の翌日から、各国の大使館や領事館には投票所が開設される。だが投票できる期間はかなり短い。世界各地から集められた投票用紙はいったん外務省に集められ、そこから投開票日である31日までに各選管に届ける必要があるためだ。

■直接投票は1日だけの公館も コロナ禍で郵便事情悪く

海外在住の日本人が記入した投票用紙

外務省によると、今回15の在外公館が治安悪化やコロナで実施を見送っていて、投票を実施するのは226箇所。公示日翌日から投票が始まるが、集められた票を、選挙区ごとに日本の各選管へ31日までに送り届ける必要があるため、締め切りはかなり短くなった。

最も短いところは公示日翌日の20日のみ。長いところでも25日まで。それでも、間に合うかどうかぎりぎりの日程だった。

このため大使館のなかには、9月ごろに邦人あてに前もって「郵便投票」の準備をを呼びかけるメールを送っていたところもある。

だが、今回は解散から投票までが17日という戦後最短、コロナによる各国の郵便事情が高いハードルになった。

郵便投票は在外邦人と登録した自治体の選管との間のやりとりになる。手順はこうだ。

  1. 有権者が選挙人登録した自治体に、投票用紙の請求書と在外選挙人証を同封し、選管に郵送
  2. 選管が投票用紙と選挙人証を同封して返送
  3. 有権者は公示・告示日の翌日以降に投票用紙に候補者名を記入して選管に郵送(投票日に間に合わなかった票は無効)

一往復半の海外郵便が必要で、しかもこの間に「罠」がある。

1の投票用紙の請求自体は、公示前でもできる。選管からの発送は公示の60日前、つまり今回の場合、任期満了予定だった2カ月前の8月22日から、請求があった分の発送が始まるはずだった。

竹永さんも、総選挙を念頭に投票用紙を請求していた。念のためにと9月初旬に選管に問い合わせると、「投開票日が決まって発送すると思っていた」と言われたという。

「公示60日前」のルールが浸透しておらず、東京都港区など、投票用紙の発送を控えていた自治体が複数あったことが分かっている。

投票用紙を請求するためには選挙人証を郵送する必要があるので、郵便では間に合わないからといって、公館での直接投票に切り替えようとしても、選挙人証が手元になく投票出来ない場合もある。竹永さんは「何重苦もの状態になってしまう」と話す。

総務省はインターネット投票についても検討中

ツイッターには、郵便投票を準備していたが間に合わないことが分かり、在外公館までタクシーと電車で往復8時間、泊まりがけで投票したという人もいた。

「#郵便投票間に合わない」「#やっぱネット投票しかない」というハッシュタグも盛んにツイートされた。

総務省も在外投票のこのような問題点については把握している。2018年には「投票環境の向上方策等に関する研究会」の報告書 で、ネット投票についての議論が公開された。

研究会では名簿への登録、投票を個人のパソコンやスマホなどの端末から直接でき、開票と集計は各選管ごとではなく、全国で共同で利用できるシステムを検討。

本人確認にマイナンバーを利用することや、セキュリティー上の課題なども議論されたうえで「在外選挙インターネット投票の実現に向けた技術・運用面の大きな課題、ハ ードルはクリアできる」と報告している。

また、現在は最高裁裁判官の国民審査に対しては在外投票ができないが、昨年6月、東京高裁は、これを「憲法違反」と判断した。裁判で国は「裁判官の名前を印刷した投票用紙を海外に送る作業が間に合わない」と主張していた。

竹永さんは「現状では、投票できるのは先進国の都市部に住んでいる人だけ。国民審査もネットならできる。在外投票こそ、早くネット投票を取り入れて欲しい」と話す。