需要が高まる銅を無駄なく使う技術を開発し、波に乗ろうとする企業もある。電子基板の製造を手がけるスタートアップ企業のエレファンテック(東京都)は、2021年から従来より銅の使用量が7割少ない製法で生産を開始した。
従来の製法は、基板の土台となる基材の一面に薄く銅箔(どうはく)をつけ、回路になる部分を残して削る「引き算」方式。一方、エレファンテックはインクジェットプリンターと同じ技術を使い、基材の上に必要な回路だけを銅インクで印刷する「足し算」方式だ。削りかすが出ない分、無駄が出にくいという。
同社によると、銅だけでなく、製造工程での二酸化炭素排出量は75%、水の使用量も95%少なくできているという。起業から6年かけて製品化にこぎつけた。
世界の銅関連企業が参加する国際銅協会(本部・米ワシントン)によると現在、世界で使用されている銅は毎年2500万トンほど。それが2050年には5000万トン必要になるという。さらに脱炭素社会の実現に向けた需要を合わせると、計5700万トンにまで増えるという。風力発電など、再生可能エネルギーの設備には大量の銅が使われ、大容量のバッテリーやモーターを使うEVにはエンジン車の4倍の銅が必要とされるためだ。
それに伴い、銅の価格も高騰している。1980~2000年代前半までは1トンあたり1500~2500ドル程度を行き来していた。その後、中国の急速な経済発展とIT化による需要の高まりなどで上昇。2020年以降、6000~9000ドルほどにまで上がった背景にあるのが、脱炭素社会を実現するための需要の増大だ。
清水信哉社長は、今の脱炭素に向けた流れを「追い風が来ている」と話す。使う銅が少ないため、価格高騰の影響も受けにくいうえ、企業は環境負荷がより低い製品を選ぶようになってきているためだ。現在は名古屋市の工場で年間数万台の電子基板を製造しているが、2025年には年間1000万台を目指す。
課題は製品への信頼を確立することだ。電気自動車やスマートフォン、家電など様々な場所に活用される電子基板は、製品を動かす根幹の部品でもある。「電子基板に不備があった場合の影響は非常に大きい。信頼がなければ使ってもらえない」
「今後はあらゆるものが電化する。使う銅を最小減にした電子部品は欠かせないものになるだろう」