私たちの身の回りには、銅などの金属を使った製品があふれている。廃棄された大量の家電や電子機器、スクラップなどは「都市鉱山」と呼ばれ、金属資源の供給源として重要性が増している。
日本を代表する銅製錬企業のJX金属(東京都港区)も、銅山での採掘だけでなく、銅のリサイクルに力を入れている。
「脱炭素社会に向けて増えていく需要に備えることが使命だ」と金属・リサイクル事業部長の安田豊さんは語る。
顧客からは「将来も需要に合わせて供給できるのか」と問われることが増えたといい、「我々が銅を供給しなければならないという思いがある。足りない部分の供給をリサイクルで補っていく」と力を込めた。
国際銅協会によると、2020年に世界で生産されたシートやケーブルといった銅の半製品は約2800万トン。その28%にリサイクルされた原料が含まれるという。一方、製品として社会にたまっている銅は約4億7000万トンあるとされ、これらのリサイクルを進めることで高まる銅需要に応えられると期待されている。
こうした背景を受け、JXは銅のすべての原料に占めるリサイクル原料の割合を現在の14%から、2040年に50%まで高める目標を掲げた。「リサイクル率50%」は、世界全体で達成すれば2050年時点で予測されている供給不足分をまかなうことができるといい、同社は10年前倒して実現しようという計画だ。
ただ、実現には課題がある。
現在使われているスクラップ原料はリサイクルしやすい高純度の銅が多い。しかし、さらにリサイクル率を上げるためには、純度の低い銅も含めて幅広いスクラップ原料を扱う必要がある。また、銅を溶かして製錬する過程では、炉の中で銅鉱石とスクラップ原料を混ぜ、酸素を送り込んで反応させる酸化熱で溶かす。スクラップ原料の割合が増えれば反応が悪くなり、溶けにくくなる。これらを補う技術も必要だ。
リサイクルのためにより多くのスクラップを回収する仕組みも整備が必要だ。JXは昨年8月、カナダ最大手の家電・電子機器リサイクル業者「イーサイクル・ソリューションズ」を買収。海外でも回収を進める方針だ。