今年の夏も暑かった。家庭でも移動中も職場でも、エアコンの冷気に触れて生き返った思いをした人も多かっただろう。
銅の価格高騰は、そんな身近な場所にも変化をもたらそうとしている。
「脱炭素社会の実現のために今後も銅の需要は増加すると予想され、やがてまかなえない状況が来る。どうしても銅を使わなければならない部分以外には、他の選択肢が必要になる」
一般社団法人アルミ配管設備工業会(APEA)の込山治良・代表理事は言う。
APEAは空調機器の室内機と室外機をつなぎ、冷媒を循環させるアルミ配管の仕様や施工方法の規格化などを進めている。空調機器メーカーや建設会社、設備施工会社などが2018年に設立した。
現在、冷媒配管はほぼ100%が銅製。これをアルミに置き換えようという試みが始まったのは、10年ほど前からだ。
金属としてアルミが使われるようになったのは約130年前で、歴史は浅い。しかし、原料のボーキサイトは豊富にあり、価格も銅の約3分の1と安い。
APEAによれば、強度などで銅に劣るが、材料費を削減できるほか、軽量化によって施工の省力化につなげられる。また、アルミ自体の生産には多くのエネルギーが必要だが、リサイクルしやすいメリットもあるという。
歴史と実績があり、圧倒的シェアを誇る銅製に対し、アルミ製の冷媒配管システムの導入実績は2022年7月時点で二十数件。施工業者の裾野が広い家庭用空調機器への対応はこれからだ。
ただ、転機になりそうな動きはある。APEAの会員でもあるパナソニックは2022年9月から、業界で初めて、同社の業務用電気空調機器をアルミ冷媒配管で施工した場合も、メーカー保証の対象に含めた。銅製の冷媒配管と劣化速度を比較したり、耐久試験をしたりした結果、問題ないと判断した。同社は自社工場の新棟にもアルミ冷媒配管を採用したという。
この影響もあり、APEAの会員は1年で10社以上増えたという。込山代表理事は、エアコン本体でも銅の使用量を減らす動きが起きていることを踏まえ、「業界内でアルミ冷媒配管は、次世代の確実な選択肢として認知されてきている。他のメーカーの保証や公共建築工事での導入を目指していきたい」と話す。