銅と聞いて最初に思い浮かぶのは10円玉だ。色もイメージにぴったりくる。
ただ、銅を使っている硬貨はほかにもある。5円、50円、100円、そして500円もそう。造幣局によれば、10円は銅95%、亜鉛3~4%、すず1~2%の青銅。5円は銅60~70%、亜鉛30~40%の黄銅といった具合だ。
銅に優れた抗菌効果があるため硬貨に使われている、と説明する書籍もあるが、造幣局広報によると、はっきりとした理由は分からない。大量製造を可能にするため、安定して供給できる金属で、加工しやすいといった銅の特性は不可欠だろう。加えて担当者は「銅は古くから身近な金属で、和同開珎などの古銭にも青銅のものが多い。受け入れられやすさもあったのかも知れません」という。
銅価格の高騰は製造に影響しないのだろうか。重さがはっきりしていて、銅の成分量も公表されている。それらをもとに計算し、「材料時価が額面に迫る」といったニュースも見かける。
気になる人も多いのか、造幣局はホームページの「よくあるご質問」に「貨幣の製造原価を教えてください」という項目を掲載している。その答えは「国民の貨幣に対する信任を維持するためや、貨幣の偽造を助長するおそれがあると考えられることから、公表していません」だ。
ただ、取材ではこんなエピソードを教えてくれた。今はアルミニウムで作られている1円だが、1948年から1950年にかけては黄銅の1円が発行されていた。戦時中、軍が使用した薬莢(やっきょう)などの黄銅スクラップが大量にあったからだという。
しかし、その後、銅の価格が上がり、1円玉を鋳つぶして使われる可能性が出てきたため、廃止された経緯があるという。また、かつては100円に銀が使われていたが、世界的な銀不足を受けて白銅に変わったという。
銅の貴重さについても、改めて考えるべき時代に入っていくのだろうか。
極端に変色したり、変形したりしていて再使用不可能な貨幣は造幣局に戻される。造幣局で鋳つぶした後、再び材料として使っているという。