フランス中部クレルモンフェランのフランス料理店「スモールブロ」。インタビューをした6月後半、大きなガラス窓に囲まれた店内は、初夏の日差しが入り込んで明るく、解放的だった。そして北欧風のテーブルや椅子が、店に現代的な印象を与えていた。
この店では、「モンベント・プロ」を持ち帰りやデリバリーに使っている。シェフのジェローム・ブリュさんは使い始めた経緯をこう説明する。
「新型コロナの感染拡大で街がロックダウンになったとき、『プロ』のリユース(再使用)を始めた。それまで持ち帰りはしていなかったが、店を続けるためには始めざるを得なかったんだ」
当初は使い捨て容器を大量に購入して食事を入れていた。だが、「紙製の入れ物だと味が変わってしまう問題があり、経済、エコの側面からも考えて、モンベントの弁当箱に統合することにした」。
「プロ」の素材には医療器具にも使われる合成樹脂素材のトライタンが使われている。レストラン用の食器洗浄機や電子レンジ、冷凍にも対応。300回は使用でき、リサイクルもできるとされる。
ブリュさんはこの弁当箱に詰める食事について、「レストランで食べるときの体験を、弁当箱の中でも味わうことができるようにしている」とし、調理にも工夫を凝らす。
電子レンジで温めて、弁当箱のふたについているバルブを閉めれば、30分~1時間ほど料理を熱いまま保てるといい、レンジで早く温まるように食材を薄く切ることがある。また、弁当箱のふたを開けたときの美しさを考え、食材をより細かく切ることもしていると言う。
新型コロナが落ち着いたいまも、企業から弁当箱に詰めたランチの注文を1日に10~15個受けている。「食事に一定の質を求めるお客様がいて、私の店のランチをオフィスに持ち帰ったり、デリバリーにしたりすることを希望している」。
そんな客はエコへの意識も高いという。空の弁当箱を持ってレストランに来て、再び食事を持って帰るという「顧客ロイヤルティー」が高まる効果もあったという。
弁当箱は客が食事を購入したレストランに返却する。しかし、パリやリヨンといった大きな都市ではデポジット制を採り入れ、客は食事を購入したレストラン以外に、自宅近くにある弁当箱のリユースに参加している別のレストランに返却することもできるという。
弁当箱の値段は使い捨て容器より高いが、リユースを続ければ「コストパフォーマンス」は上がり、財布にも地球にもやさしいことになる。ブリュさんは言う。
「私たちはエコロジーや、地球にとって何が良いことなのかということについてよく話している。ようやく人びとが意識するようになり、少しずつだが、行動し始めている」