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北朝鮮の核実験、中国が「反対」伝えたか それでも強行? 今後注目すべき「日付」は

北朝鮮インテリジェンス
平壌国際空港で2019年6月20日、子どもたちの歓迎に応える中国の習近平国家主席(中央)と金正恩朝鮮労働党委員長
平壌国際空港で2019年6月20日、子どもたちの歓迎に応える中国の習近平国家主席(中央)と金正恩朝鮮労働党委員長。朝鮮中央通信が配信した=朝鮮通信

複数の関係政府筋によれば、中国は最近、関係が深い第三国に対し、北朝鮮に核実験に反対する考えを伝えたと説明した。北朝鮮が実験に踏み切れば、中国は米国が主導する新たな国連制裁決議に賛成せざるを得なくなるという見通しも北朝鮮に伝えたという。日米韓は第三国から、この情報を得ているが、中国が直接認めたかどうかは明らかになっていない。
また、米政府内では、ロシアも新たな制裁決議に賛成する可能性があるとの見方が出ている。

中国は5月26日、北朝鮮のミサイル発射を受けた新たな国連制裁決議案に対し、ロシアとともに拒否権を行使していた。中国が北朝鮮に核実験に反対する考えや新たな制裁決議に賛成する考えを伝えたのが事実であれば、背景には、朝鮮半島の平和と安定や非核化を求めてきた従来の中国の政策を踏襲する意図がありそうだ。

ロイター通信によれば、米国のサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)が13日、ルクセンブルクで中国の外交担当トップの楊潔篪共産党政治局員と会談し、中国による拒否権行使への懸念を伝え、北朝鮮核問題について協議した。関係政府筋の1人は、中国が実験反対の考えを示したという情報を受けて「北朝鮮が核実験を行う確率が6割、やらない確率が4割くらいだろう」と語った。

北朝鮮が実験する可能性が6割とみる背景には、すでに実験の準備が完了した状況がある。北朝鮮は第3坑道への実験用核爆弾の配置を終え、観測ケーブルも引き込んだ。すでに起爆装置の実験も行った際に起きる震動も観測された。関係筋の1人は「金正恩(朝鮮労働党総書記)が決断すれば、いつでも実験できる状態だ」と語る。

2006年10月20日、「核実験成功」歓迎の軍民大会
2006年10月20日、北朝鮮初の「核実験成功」を歓迎する軍民大会。朝鮮中央通信が伝えた=朝鮮通信

ここまで準備したのに、実験を中止すれば、軍や原子力総局など、核開発の関係者から不満が出る可能性もある。朝鮮中央通信は11日、金正恩氏が党中央委員会総会で「党の強対強、正面勝負の闘争原則」を再び明らかにしたと伝えた。正恩氏は自らの権威を維持するため、実験を強行する可能性が高い。

一方、北朝鮮は最近、新型コロナウイルスの流行に苦しんでいる。北朝鮮の国営メディアは、事態が好転していると報道。5月半ばには1日あたり39万人余だった発熱者が、6月20日時点で同2万人を下回ったとしている。ただ、異常に低い致死率など、「北朝鮮が数値を都合良く改ざんしている可能性が高い」(関係政府筋の1人)という。ロックダウンを実施したため、田植え作業にも遅れが出ている。秋の収穫にも影響が出そうだ。

2022年6月14日、北朝鮮黄海北道開豊郡ではまだ田植えが行われていた。
2022年6月14日、北朝鮮黄海北道開豊郡ではまだ田植えが行われていた。北朝鮮では通常、6月10日までに田植えを終える必要があるとされている=北朝鮮関係筋提供

また、同通信は16日、西部の海州市で急性腸内性感染症が発生した事態を受け、金正恩氏が15日、自身の家庭薬を同市に送ったと伝えた。いくら最高指導者が使う高級な薬品とはいえ、地域の伝染病対策に使うには量が少なすぎる。滑稽に見える行為を宣伝するほど、北朝鮮には余裕がないのかもしれない。6月の党中央委総会では軍・治安部門のトップ5人のうち、4人まで入れ替えた。

こうした苦境にあって、北朝鮮は、総貿易額の9割を占める中国との関係悪化は避けたいだろう。関係政府筋の1人によれば、北朝鮮はすでに新型コロナの中国製ワクチンや検査キット、治療薬などを中国から緊急輸入した。秋に食糧不足が深刻になれば、更に中国の支援が必要になる。

もし、北朝鮮が核実験に踏み切れば、米国は北朝鮮への原油輸入制限の大幅な強化など、更に厳しい国連制裁決議を主導するのは間違いない。中国が制裁決議に賛成すれば、北朝鮮は中国から支援を得るどころか、更に苦境に陥ることになる。

北朝鮮で制作された新型コロナウイルスの防疫対策を呼び掛けるポスター
北朝鮮で制作された新型コロナウイルスの防疫対策を呼び掛けるポスター。「最大非常防疫態勢を堅持して生産と建設、穀物増産を最大限推し進めよう!」と書かれている。2022年5月23日に朝鮮中央通信が配信した=朝鮮通信

北朝鮮としては中国を納得させる措置が必要だ。中国は米国との協議で、北朝鮮核問題の対話による平和的解決を訴えている。核実験を行う代わり、「無条件での対話」を求めている米国に譲歩する必要がある。

金与正党副部長は20年7月の談話で、「米国による敵視政策の撤回」を対話の条件に掲げた。北朝鮮は米朝協議を事実上の核軍縮交渉に持ち込み、核保有国としての地位を得たい。「敵視政策の撤回」要求は、北朝鮮が米朝協議の主導権を握るための戦術の一つだろう。

だが、米韓は6月の外相会談などで大規模な米韓合同軍事演習の再開などについて話し合った。北朝鮮が条件を取り下げない限り、米朝対話は始まらない可能性が極めて高い。

米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)は16日、商業衛星画像に基づく分析結果として、北朝鮮がすでに核実験の準備を終えた第3坑道に加え、第4坑道の修復工事を始めたと指摘した。この動きは、中国を説得する間、緊張を維持するための「時間稼ぎ」なのかもしれない。

北朝鮮は今月29、30両日にマドリードである北大西洋条約機構(NATO)首脳会議の機会に開かれる見通しの日米韓首脳会議、あるいは7月4日の米独立記念日に核実験に踏み切る可能性が高いとみられてきた。核実験が米国に対するメッセージだということを明確にするためだ。

ただ、中国が実際に実験に反対し、北朝鮮の中国に対する説得作業が難航すれば、核実験の時期は少し先に延びるかもしれない。9月9日の北朝鮮建国記念日や10月10日の朝鮮労働党創建記念日などまで、核実験を巡る緊張が長期化する可能性がある。